【ねこまたぎ通信】

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「華氏911」25日全米封切り…賛否両派過熱

 【ニューヨーク=河野博子】ブッシュ大統領対テロ戦争を批判した米映画「華氏911」(マイケル・ムーア監督)が25日、全米で封切られる。制作親会社ディズニーによる配給拒否、カンヌ映画祭での最高賞「パルムドール」受賞――と反響が反響を呼び、大統領選の時期とも相まって、賛否両派の動きは過熱する一方だ。

 映画は23日、ニューヨークの一部の映画館で先行上映され、ワシントンでは民主党の議員らを招待しての試写会が開かれた。ニューヨークで映画を見たグラフィック・デザイナーのグリン・アトキンソンさん(60)は「政府にだまされていたことがわかり、頭に来た。私は民主党支持者ではないが、ブッシュ大統領には投票しないよ」と興奮気味に話した。

 ムーア監督はABCテレビに対し、「この映画は、4年間のブッシュ政権に対する意見だ。公正でバランスの取れたジャーナリズムとか客観的な記録映画だ、というつもりは毛頭ない」ときっぱり。さらに「目的? ホワイトハウスからブッシュを追い出すことさ」と、ブッシュ政権打倒の意図まで宣言した。

 2時間4分の映像は確かにメッセージにあふれる。

 イラク戦争で死んだ兵士の母親の嘆き。世界貿易センターへの旅客機突入の第1報後、7分間にわたってフロリダの小学校で子供たちに本を読んできかせる大統領。サウジアラビアのビンラーディン一族とブッシュ政権のつながり。見る者の心に、疑問が膨らむよう、映像が構成される。

 こうした内容に、保守系団体「ムーブ・アメリカ・フォーワード(米国を前進させよ)」は「真実をゆがめ、反米をあおる」として、映画館や劇場への手紙や電子メール作戦を呼びかけている。映画批評もまっぷたつで、賛否どちらの陣営も感情むき出しだ。

 ホワイトハウスは、「とんでもなく事実に反している」とするほか、大統領の父ブッシュ元大統領は、「息子に対する悪意に満ちた攻撃だ」と、デイリー・ニューズ紙に語った。だが、過剰反応は映画の宣伝になるとの判断からか、政府の反論は比較的おとなしい。

 ムーア監督は最近、弁護士や政治コンサルタント数人を雇って、「作戦部」を始動させた。その1人で、クリントン前大統領の顧問や前回の大統領選で民主党陣営幹部を務めたマーク・ファビアーニ氏(47)は、本紙に「上映妨害やあらゆる攻撃に備え、24時間体制で新聞、テレビ、インターネットで誰が何を言っているかチェックしている。法的手段も含め反撃を準備中」と話した。

 上映は、カナダの配給会社など3社により、こぎつけた。映画館数は全米で約700と、通常のハリウッド映画の約3000に比べ少ないが、各地の映画館は、「毎日数千の電子メールのほか、手紙も来るし電話は鳴りっぱなし」(オハイオ州の映画館主)の状態という。この映画館主は「賛否両方あるので、結局上映を決めた」という。

(2004/6/25/02:36 読売新聞 無断転載禁止)