【ねこまたぎ通信】

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和平協定崩壊の危機 インドネシア・アチェ

 インドネシアアチェ特別州(スマトラ島北部)の独立紛争をめぐり、政府と独立派武装組織「自由アチェ運動」(GAM)の間で昨年12月に合意した和平協定が崩壊の危機に直面している。武装解除に応じないGAMに対し、政府は新たな軍事作戦も辞さない構えだ。【ジャカルタ中坪央暁】

 州都バンダアチェから車で3時間のピーディー県ティロ村。治安部隊とGAMの衝突で多数の住民が犠牲になった。しかし和平協定で8カ所の「非武装・和平地域」の一つに指定され、住民が農作業に励む平和な光景が広がる。農民のアリ・バシャさん(65)は「GAMの略奪や誘拐、国軍の掃討作戦が繰り返されてきたが、今は落ち着いている。しかしいつまで続くのか不安だ」と心配顔で話した。

 非政府組織アンリ・デュナン・センター(本部スイス)が仲介した和平協定では初期の信頼醸成期間を経て、2〜7月は最も重要な武装解除の段階にあたる。GAMはこの間に武器を中立の保管場所に移し、国軍・警察部隊は掃討活動を停止することになっている。
 しかし協定違反を監視する合同治安委員会の国軍側委員、シャフジェン・ヌルディン准将は「GAMは自動小銃など推計1万丁の火器をひとつも手放さず、武装解除は全く履行されていない」と非難する。これに対しGAM強硬派のソフィアン・ダウト幹部は「国軍は部隊を撤収せず、自衛のために武器を所持せざるを得ない」と反論し「我々の政治目標はあくまで独立だ」との姿勢を崩さない。

 現地では合同治安委への襲撃や抗議デモが多発し、要員が撤収するなど情勢は悪化した。ユドヨノ調整相は「GAMが和平協定に盛り込んだ特別自治を拒み、武装解除に応じないなら、最後の選択肢として軍事的解決もあり得る」と警告。国会も政府の強硬方針を承認した。国軍はすでに2万6000人を展開し、「命令を待っていつでも掃討できる態勢」(現地司令官)だ。

 政府は合同会議の25日開催を提案し、外遊中のメガワティ大統領は19日、「すぐに軍事作戦を開始するとは限らない」と協議重視を強調した。しかし「信頼醸成は完全に失敗し、和平崩壊は確実」(国軍関係者)との見方が既に広がっている。
毎日新聞