【ねこまたぎ通信】

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ブルンジ和平 アフリカ連合、国連へ権限移譲 度重なる停戦破棄、継続する内戦

 内戦で混乱が続く中部アフリカのブルンジで、これまで和平プロセスを主導していたアフリカ連合(AU)が一日、権限を国連に移譲した。近隣諸国による度重なる仲介にもかかわらず紛争は継続し、アフリカで最も解決困難な民族紛争とされるブルンジ内戦。国連主導による新たな和平プロセスの展開で政情安定化への期待が集まる中、現実は先行き不透明な状態が続いている。
ヨハネスブルク・長野康彦)
10月に総選挙実施も暫定政府は延期の意向
 ブルンジは、周辺をコンゴ(旧ザイール)、ルワンダタンザニアに囲まれた内陸国。実権を握る少数派ツチ族と多数派フツ族の対立で、一九九三年から内戦状態にあり、これまでに三十万人が犠牲になったとされている。六二年、ベルギーから独立を果たすが、それ以来続くフツ族ツチ族の対立は、アフリカで最も解決困難な民族紛争として今日に至っている。
 紛争が激化したのはブルンジ初の民主選挙が行われた九三年。それまでツチ出身のブヨヤ大統領に代わり、フツ系のヌダダイエ氏が大統領に選出されると、軍のツチ系将兵による同大統領の暗殺事件が発生、それをきっかけに本格的な内戦へ突入した。ツチ系は全人口の14%と少数派だが、軍部をツチ系が占めるなど、政権構造は不安定な状態。さらに翌年、隣国ルワンダで大量虐殺の引き金となった、大統領機撃墜事件が発生。同機には前年殺害されたブヨヤ大統領の後任ヌタリャミラ大統領(フツ系)がルワンダのハビャリマナ大統領とともに同乗しており、この事件も火に油を注ぐ結果となった。

 九六年にはブヨヤ元大統領が無血クーデターで政権を掌握し、ツチ系が再び権力を握るが、周辺諸国はこれを承認せず、経済制裁を断行。そのため経済は低迷し、現在でも食糧は外国からの援助に頼るしかない状況が続いている。

 九七年、隣国タンザニアのニエレレ元大統領(九九年死去)がイニシアチブをとり、ブルンジの和平交渉が進められ、当事者間における敵対行為の停止および和平交渉の再開などを取り決めたアルーシャ合意が成立。以後和平プロセスが開始され、〇一年には南アフリカマンデラ前大統領の仲介で、各勢力が権限を分担して参加する暫定政府設置が決まった。大小七から十の各勢力が和平協定に調印し、期限を三年と決めた暫定政権が十一月に発足。前半の十八カ月はツチ系のブヨヤ氏が、後半はフツ系のヌダイゼイエ氏がそれぞれ大統領を務めることで合意した。

 暫定政府の期限が切れる今年十月には総選挙が実施される予定になっているが、ヌダイゼイエ大統領は最近、治安維持への不安から選挙を行う環境がまだ整っていないとして、延期する意向を明らかにした。選挙を公正で安全なものとするためには各勢力の武装解除が先決と呼び掛けるが、予定通りの選挙実施を求める声も強く、今後、新たな混乱も予想される。

 事態を複雑にしているのは、フツとツチ両部族間の抗争という単純な構図ではなく、人口の八割を占めるフツ系内にもいくつもの武装勢力が存在し、それらが政権把握の野望を捨てずにいるためだ。また、少数派のツチ族が軍に固執するのは、隣国ルワンダで多数派フツ族が少数派ツチ族の抹殺を図った大量虐殺の二の舞いを恐れているためでもある。長年続く民族間の軋轢(あつれき)で、停戦協定を結んでも簡単に破られる国では、身を守るためには軍事力に頼るしかないのが現状だ。

 ブルンジには現在、二千七百人規模の平和維持部隊が南アフリカモザンビーク、エチオピアから派遣されている。今後、国連の指揮の下、武装解除、動員解除、再統合、総選挙に向けての支援活動、そして数十万人とも言われる国外避難民の帰国援助などを行う。隣国コンゴやルワンダなど中部アフリカ地域の政情安定化のためにも、ブルンジの和平プロセス前進が願われているが、先行きはいまだ不透明な状況にある。


ブルンジ略史
1890年    ドイツ保護領
1922年    ベルギー委任統治
1946年    ベルギー信託統治
1962年7月  ベルギーよりブルンジ王国として独立
1966年    ミコンベロ首相によるクーデター、王政廃止
1976年    バガザ大佐による無血クーデター
1984年    大統領選挙(バガザ選出)
1987年9月  無血クーデターでブヨヤ大佐が政権掌握
1992年3月  複数政党制を含む新憲法採択
1993年6月  複数政党制下初の大統領選挙(ヌダダイエ大統領選出)
1993年10月  ヌダダイエ大統領暗殺
1994年1月  ヌタリャミラ新大統領選出
   4月  ヌタリャミラ大統領、飛行機撃墜で死亡
   10月  ヌティバンツンガニャ大統領選出
1996年7月  ブヨヤ元大統領によるクーデター
1998年6月  ブヨヤ大統領就任
2000年8月  アルーシャ和平合意
2001年11月  暫定政府の成立(ブヨヤ前期大統領就任)
2003年5月  ヌダイゼイエ暫定政権後期大統領就任
2004年6月  和平プロセス、国連へ権限移譲
   10月  総選挙実施予定