【ねこまたぎ通信】

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子供たちの戦場:ウガンダ北部内戦/中 少女も拉致し関係強要

 ◇抵抗軍に11年間、出産も

 茶色の門が開き、トラックが到着した。荷台には若者ばかり8人。1人は女の子を抱いている。周囲の人々の素性を確かめるような視線は何かにおびえているように見えた。ウガンダ北部の都市グル。「神の抵抗軍」の活動地域のただ中にあるこの街で、非政府組織「ワールド・ビジョン」が運営する社会復帰支援施設には、政府軍に救出された拉致被害者が毎日のように到着する。

 女の子を抱いていた女性はアチャヨさん(23)といった。拉致された日付を尋ねると、彼女は小声で言った。「私の人生が変わった日。忘れません」。次に彼女の口から出た日付に、しばし言葉を失った。「93年2月10日」。被害当時12歳だった少女は母となって帰ってきた。スーダン南部の抵抗軍基地で幹部の男との関係を強要された末に生まれたのが、目の前の2歳8カ月の女の子だった。母の壮絶な11年を知る由もない娘は腕の中で静かに眠り続けた。

 拉致された少女が性のはけ口とされる一方、少年は住民襲撃の最前線に立たされていた。施設で社会復帰を待つキラム君(14)は02年11月4日、自宅で拉致された。12歳の彼を軍事訓練と住民襲撃が待っていた。キラム君は伏し目がちに言った。「村を襲い、男の人を木につるして火をつけました。言うことを聞かないと殺されるから、みんな従いました」

 「子供たちの心の傷は計り知れません」。キラム君が立ち去った後、女性職員が、子供たちが描いた数百枚の絵を机上に広げた。好きなものを描くように言われた子供たちの9割以上が、虐殺現場や政府軍との戦闘場面を描いていた。

 政府軍は戦闘ヘリコプターを中心にした掃討作戦を展開。記者が施設を訪ねる前日には、グルの東方50キロ付近の森林など2カ所を空爆し、抵抗軍兵士36人を殺害していた。だが、施設のオルニ代表はため息をつく。「作戦で救出される子供もいますが、ヘリの猛攻に倒れていくのは拉致されて戦うことを強要された少年たちです。『兵士』じゃないんです」

 この日も近くの基地では、巨大なヘリが爆音と共に発着を繰り返していた。【ウガンダ北部グルで白戸圭一、写真も】

毎日新聞 2004年8月4日 東京朝刊