【ねこまたぎ通信】

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子供たちの戦場:ウガンダ北部内戦/下 襲撃激化、命懸けの眠り

 ◇毎晩、親元離れテントへ

 午後6時。熱帯の太陽が地平線に消えるころ、ウガンダ北部の都市グルでは子供たちの大移動が始まる。5000人は下らないと思われる子供が鉄条網に囲まれた施設へ吸い込まれていく様子は異様というほかない。行き先は、地元ボランティアが運営している「ナイト・コミューター」と呼ばれる宿泊所だった。

 目的は一つ、「安心して寝ること」。子供たちは「神の抵抗軍」による拉致から身を守るために毎晩、親元を離れ、敷地内に立ち並ぶテントで冷たい地べたに身を横たえていた。消灯時間の9時を過ぎると笑い声は途絶え、政府軍兵士の靴音だけが響く。命懸けの眠りだ。「オープンは昨年2月。抵抗軍がスーダンからウガンダへ南下し、襲撃を激化させたからです。家では怖くて寝られないのです」。ボランティアのオネムさん(24)の表情は暗い。

 抵抗軍の南下には、北隣のスーダン政府と同国南部の反政府勢力の内戦が今年5月に終わったことが関係していた。ウガンダ政府がスーダンの反政府勢力を支援してきたことへの「仕返し」として、スーダン政府は長年、抵抗軍を支援してきた。だが、内戦は02年以降、終息に向かい、スーダンが抵抗軍を支援する理由が消えた。活動拠点を失った抵抗軍は、古巣のウガンダに戻る以外の道を断たれた。皮肉にも、ここでは一つの戦いの終息が、他の戦いを激化させることになった。

 北部の人々の間では、国際社会の反応の鈍さへの怒りと「自分たちは忘れられている」との思いが強まっている。

 「ここでは人間は動物と同じ。イラクに注意を向ける国際社会も、ウガンダで何人殺されても何もしない。メディアはニュースにもしない。忘れられた戦争です。国際社会はすぐに介入して下さい」。6月下旬、北部を訪れた日本の伊東喜昭・駐ウガンダ大使に、地元の宗教指導者が語気強く迫る一幕があった。

 ナイト・コミューターに泊まりに来ていた少女オローマちゃん(10)は、はにかみながら言った。「私、戦争は終わらないと思う。だって、ずっと人が殺され続けているもの」【ウガンダ北部グルで白戸圭一、写真も】

毎日新聞 2004年8月5日 東京朝刊