【ねこまたぎ通信】

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緊急発言―参院選挙をどうみるか 天木直人

 今度の選挙結果をめぐってこの数日の間さまざまな解説が飛び交うであろう。しかし私は今度の選挙は、ズバリ言って「公明党の一人勝ち、民主の期待はずれ、賞味期限の切れた小泉の予想通りの居直り、社民・共産の臨終」であると考えている。そしてそれはとりもなおさず国民のための政治を願う有権者の敗北である。どういうことか。それを詳しく述べてみたい。
1.  小泉が居直ることは当初から明らかであった。三年も総理をやって何も成果を挙げられなかった小泉が最後に固執するのが日朝国交正常化である。従って小泉は何があっても辞めない。この事業を成し遂げなければ文字通り何も残らない。その意味で獲得議席が40代の前半であっても辞めなかったであろう(もっともそのような惨敗の中でそれでも辞めないとなると批判もでてくるであろうから少なくとも民主党はそのような事態になるようもっと議席を伸ばさねばならなかったのであるが)。これはもう政治の常識ではめちゃくちゃな話である。しかしこの期に及んでもそれを許すのが今の自民党である。小泉を引きずりおろせるエネルギーがないのである。それほど自民党はパワーを失っているのである。
それにしても小泉という男は浅ましく往生際の悪い男である。政権を維持するために今後もなりふり構わず北朝鮮問題をもてあそんでいくであろう。金正日と小泉が裏で手を繋いでノーベル平和賞を目指して協力していくのである。そのお膳立てに外務官僚が走り回る。それが終わったら皆大使栄転して送別会で祝うのである。切り捨てられるのは行方不明の拉致された人々でありその家族である。こんなことが許されてよいのか。

2.  このような中途半端な選挙結果に終わった責任の大半は民主党に大きい。考えてもみるが良い。民主党はまたもや千載一遇のチャンスを生かせなかったのである。年金問題といい、イラク戦争といい、国民の不満は絶頂に達していた。普通であれば民主が圧勝して当たり前のところである。年金問題といい、イラク戦争といい、国民の不満は絶頂に達していた。この状況であるならば民主が圧勝して当然である。それが昨年の衆院選挙と同様に民主圧勝とはならなかったのである。消去法によって祈る思いで民主党に投票した国民はどんなにか落胆したであろう。
 今回の参院選挙出馬をめぐって私は民主党の内情を知り愕然とした。政権交代は私の願いでありその観点から野党第一党の民主党を応援しようと一時は考えた。しかし今後の民主党の政策・国会運営如何では今の自民党よりも悪くなるのではないかと危惧している。何より「選挙互助会」と揶揄される民主党自体のバブル状態は、かつての「山が動いた」社会党と全く似通ったものだからである。今度の選挙で民主党に投票した国民はしっかり監視していかなければならない。

3.  それにしても公明党のこの国の選挙に及ぼす影響力はますます強くなっていっていることは由々しい事態である。今度の選挙でも終盤の戦いにおいては公明党自民党を必死で支えた。党幹部は「やるだけのことはやった」と豪語していた。それで負けるようなことになればすべて自民党の責任であるという意味だ。公明党の協力がなければ一人区で自民党は完全に惨敗していたであろう。その意味で前回の衆院選挙同様、自民党公明党の助けなくしてはとっくに政権を手放さざるを得ない政党になってしまっているのである。
    公明党にこの国の選挙を牛耳られてよいものであろうか。私は公明党のアキレス腱は「平和」と「憲法」にあると思っている。イラク戦争に賛同し、憲法改悪に賛成するような政党が信者の支持を受ける宗教者の集団なのか。命の尊さと弱者への思いやりをもっとも大切にしなければならないといわれる創価学会の会員たちは、自民党と連立を組んでイラク自衛隊を送り続けてアラブを敵に回したり、戦争の惨禍を二度と繰り返してはならないと願う国民の気持ちを無視する公明党を認められるのか。この点声を大きくして叫んでいけば信者はその矛盾に嫌でも気付かざるを得ないであろう。

4.  さて社民、共産党である。私は社民党は村山元首相の裏切りや長年の自民党との国対癒着政治の実態から見ても、社民党は一刻もはやく解党すべきだと思ってきた。しかし今度もまた最低限の議席を維持している。どうころんでも今後社民党が今の形で議席を増やす事は考えられない。福島党首が選挙後「今後の復活のために最低限の成果を収めた」というような事を口走っていたが、党存続を目的にする限り残念ながら政界再編の足をひっぱっているだけなのである。
共産党は大敗した。私は「共産主義」というイデオロギーを別にするならば政策的には共産党に一番の好感を持っている一人である。既存の政党の中では一番庶民の立場に立った政策を訴えていると考える。年金問題イラク戦争憲法堅持どれをとってみても正しいことを言っている。それにもかかわらず今度の選挙で国民の支持を得られなかったのは何故か。共産党幹部はこのことを深刻に受け止めなければならない。イデオロギーに縛られた硬直性と党幹部の強い締めつけから解放されない限り国民はついていかないであろう。私は、政策的にもっとも共産党が正しいことを言っていると評価している元保守官僚である。私と同様の見解を持つ国民も少なからず居るであろう。「脱イデオロギー」の要請に共産党は耳を傾けるべきである。

5.  以上要するに今の日本には心から支持できる政党が存在しないということである。私は選挙のたびに棄権する人々は単なる怠慢で、何が起こっても選挙に行かない無責任な人々であると思っていた。しかし中には選ぶ政党がないからやむにやまれず無党派になっているという政治意識の高い国民もいるのではないだろうか。そういう人々にとっては日本の今の政治状況は耐え切れない事であると思う。

私は今回の参議院選挙に打って出ようかと真剣に考えて既存の政党、政治家と接触した時、大いに失望した。要するに国民の為を考えて政治家になろうとしている連中にはまずお目にかからなかった。仮にそのような真っ正直な人間が居たとしても、そのような人は当選するための図々しさを持ち合わせていないし、たとえ当選してたとしても既存の政党では潰されてしまう。立候補者たちにとっては「政治家になること」が目的となっている。真面目に政策を論じようと勉強する候補者や政治家はまず見当たらない。政治家になって権力と金を手にしたいと思う者と、その政治家にぶら下がって飯を食おうと考える連中がうようよしているのである。その意味で選挙なんか関係ないと割り切って一度も選挙に行かない人々の気持ちが良くわかる。選挙なんか、政治家なんか勝手にやってろと突き放したほうが正直なのかもしれない。

6.  しかしここで立ち止まって考えなければならないのは、このままだと政治家たちが我々の税金を勝手に使ってやりたい放題な法律をつくって我々国民を支配してしまうという事である。結局この支配の憂き目にあうのは国民である。そう考えると政治に関心を持たない国民というのは悪徳政治家のいけにえになる愚かな羊であり、抑圧・搾取されても我慢せざるを得ない人々という事になる。どうすりゃあいいのか。

自民党民主党公明党によるこの国の支配を許さない!という観点にたって、国民の真の味方になれる政党はこれだ!という政党をつくることは必要だと思う。そのあたらしい勢力の最大のマニフェストは「平和憲法を守る」ということであろう。この点については社民党共産党のみが既存の政党では首尾一貫している。

これらの政党が、今のままでは何度選挙を重ねても、いくら正しい事を訴えても、国民にはイデオロギーアレルギーによって浸透できない、そして結果として自民、民主、公明を利するだけであるということを自覚し、解党的な再出発をして第三勢力に結集する、その時こそはじめて「平和新党」なり「無党派新党」なりの成立する余地がある、いいかえればそのような動きが出てこない限り、日本の政治構造を根本的にかえていく道はないのではないかと思う。一般の国民を巻き込んだ政治改革運動でなければ、本当の風をおこす事は出来ない。今度の参議院選挙の結果と、小泉首相の居直り発言をみてつくづく思うのである。