【ねこまたぎ通信】

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そして,時代の流れは逆行していく

家族法を後退させる動きに、女性閣僚まで反対

権利を抑制する決定をイラク女性が非難
統治評議会イスラム家族法へ逆行

ワシントン・ポスト 1月16日 
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A21321-2004Jan15.html

 バグダッド、15日発/過去40年間、児童保護と遺産相続問題においては、男性の偏愛と勝手な離婚、18歳以下での結婚を禁止するという市民法公民権)のもとで、イラクの女性はイスラム世界では最も近代的な法の保護を享受してきた。サダム・フセイン政権はそれらの権利に抵触することはなかった。

 しかしアメリカに後押しされるイラク統治評議会は昨年12月後半、その家族法を「無効」とし、その種の問題はシャリアと呼ばれる厳格なイスラム法の教義にもとづいて裁かれるようにすべきだと指示し、これまでの女性の権利を一掃するよう票決した。
 これは女性の法的地位を何世紀も後退させ、結婚と離婚その他の家族問題に対してさまざまに規則が異なるイスラムの緊張関係のなかでは、感情的な衝突を誘発させることになると主張し、今週、裁判官から閣僚メンバーにいたるまで怒ったイラク女性たちが街頭での抗議や会議の場でこの決定を非難した。

 15日の抗議集会で発言したクルド人弁護士アミラ・ハッサン・アブドラーは、「これは私たちを家庭に閉じこめるものであり、まさしくアフガニスタンの女性たちが置かれた状況のようになる」と指摘した。一部のイスラム法は男性にその場で妻たちを離婚することを許している、と彼女は言及した。「これまでの法律が完全とは言わないが、今度の法律はイラクを未開社会のようにする」と彼女は批判した。

 12月29日の秘密協議の場で25人の統治評議会がかろうじて承認したこの指示は、伝えられるとことによると、保守的なシーア派メンバーが発起人となった。統治評議会で高位に就いている女性だけでなく、数人の進歩的なメンバーもこの指示に今も反対している。

 統治評議会の決定はアメリカ人行政官のトップであるポール・ブレマーによって承認されなければならないが、側近たちはこの変更に対するブレマーの許可は可能性が低いと非公式に語った。

 しかしイラク現地の専門家は、アメリカの行政当局が6月末にいったん政治権力をイラク人に移譲するなら、保守的な勢力はシャリア(イスラム法)を最高法規にする彼らの計画を推進することができるだろう、と説明した。

 ブレマーの広報担当者は15日、コメントを求められて応じなかった。

 社会福祉公共サービスを担当するイラクの女性閣僚ナスリーン・バラウィは、「これが秘密主義的におこなわれたのはショック」と語った。「イラクは多くの異なる宗教学校をもった他民族社会です。このような重大な決定は時間をかけて、公開された議論の場をもうけて決められるべきです」。

 この決定がただちに法律となる差し迫った恐れはないが、「しかし6月30日以後には、何が起こるか誰に判るというの?」とバラウィは指摘した。

 いくつかの会合や抗議でのインタビューのなかで、女性たちが注意を喚起した点は、政治的抑圧のあったフセイン時代においてさえ、女性は他の多くのイスラム諸国におけるよりははるかに近代的な役割を担うことが許され、男性が支配する保守的なイスラム勢力が唱える実に不公正なイスラム教の解釈から守られてきたことである。

 数人の女性が表情を歪めながら、フセインが倒れたあとには、新しい政権はさらに家族法の制約を解くことこそ期待されている、と指摘した。それなのに、これまでの法律を一掃する過程で、統治評議会のなかの保守的なイスラム勢力が混乱した戦後社会につけいって、女性への時代遅れの見解を押しつけようとしている−−と、彼女たちは語った。

 家族問題を市民法からイスラム法へと転換する案を統治評議会内の誰が推進してきたは不明なままだが、今回の決定はイラクイスラム革命最高評議会を率いるアブドル・アジズ・ハキム(シーア派)が統治評議会で輪番制の議長職に就いている時期になされ、形式を整えられた。

 今週、数人の穏健な統治評議会メンバーが公開討論の場でこの決定に強い反対論を唱え、国の一体性と文化的な進歩の両方を脅かすものだと非難した。

 国民民主党を率いる統治評議会メンバーで法律家でもあるナセル・チャデルチは、15日に開かれた職業につく女性の集まりで今回の統治評議会の行為を批判した。彼は「われわれは近代的な発展から孤立することを望んでおらず、最も困った問題は、サダムのもとでの法律の法が今回の新しい法律よりも近代的だという点だ」と述べた。彼は今度の指示が撤回されるまで女性たちが抗議を続けることを望むと表明した。

 統治評議会の新しい政策法令は短く漠然としたもので、現行の市民法と置き換えられるはずのイスラム法の項目にも特定の家族法にも具体的に言及しなかった。しかしイラクの女性団体に所属する弁護士や他の専門家たちは、国内で競い合うイスラムの宗派が女性の法的権利、婚姻の権利をめぐって異なる方針を主張することになるので、決定の曖昧さこそが特に悩みの種なのだと説明した。

 一部の批評家のなかには、提案された法律はスンニ派とシーア派間の緊張関係を悪化させるかもしれず、二つの宗派を越えて結婚した家族を壊しかねないものだと指摘する者もいる。フセインのもとでは、公民権にもとづく家族法を普遍的に適用することによって、この種の問題が宗派間の争いとなることを避けてきたという。

 今度の新しい指示に公然と反対を唱える元女性判事のザキア・イスマイル・ハッキは15日、1959年以後に公民権にもとづく家族法が発展してきて、非宗教的な世俗政権が続いたもとで、どの宗教・宗派を信仰するかにかかわらず、女性に「社会的な平等」と個人としての社会進出の機会を認めるよう改められてきた、と語った。ハッキは「今度の法律はイラクの家族制度を中世へと逆行させることになる」と批判した。

 「それは男たちに4人も5人も、あるいは6人もの妻を持つことを許すことになる。子どもたちを母親から奪いとることになる。自分を聖職者だと称する者には誰であれイスラム法廷を開き、誰が結婚・離婚してよいか決定することを認めることになる。私たちはそうなることを止めなければいけない」と。