【ねこまたぎ通信】

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スーダン危機――見過ごしは許されない

 イラクに世界の目が奪われている間に、アフリカ大陸でとんでもないことが起きていた。

 スーダン西部ダルフール地方の民族紛争で約100万人が避難民や国外への難民となり、多くが餓死のふちにある。放置すればさらに悲惨な事態になる。

 大陸最大の国土を持つスーダンの人々は、イスラム教徒が支配する中央政府キリスト教徒が多い南部の反政府勢力との間の長い内戦に苦しんできた。

 その両者の間で、今月はじめに和平合意ができた。イスラム教徒とキリスト教徒が互いを尊重しながら、緩やかな連邦制を組んでいこうという内容だ。

 ところが、ダルフール地方で起きているのはイスラム教徒同士の流血だ。この地方には黒人のイスラム教徒が多く、アラブ人と対立してきた。

 政府軍に支援されたアラブ人民兵が「黒人は出て行け」と叫びながら、数万人の村人たちに暴行を加え、多数を殺したという報道が続く。

 国連のアナン事務総長は「国際人道法に違反する行為が大規模に起きている」と述べ、みずからスーダン入りする意向を表明した。

 アフリカには国際社会の目が向きにくい。50万人以上が虐殺された94年のルワンダ紛争では、国際的な対処の遅れが大問題となった。スーダンの人道危機を食い止めるために、先進国やアフリカ諸国は一刻も早く動き出す必要がある。

 政治や社会の混迷はテロリストの温床ともなる。スーダンビンラディン一派をはじめとするイスラム過激派組織の拠点となってきたことを思い起こそう。

 バシル現政権は、反テロの姿勢を打ち出すとともに、豊かな石油資源を生かして外国から投資を呼び込み、国づくりを進めようとしてきた。そのためにも、国内の融和は欠かせないはずだ。肌の色の違う人たちに暴力を振るう民兵らへの支援をやめさせ、秩序の回復に全力をあげるべきだ。

 アフリカの危機は、スーダンにとどまらない。とりわけサハラ砂漠以南には政治的に不安定な国が多い。その背景に貧困がある。経済のグローバル化に伴って世界が享受している経済の成長や貿易の拡大から取り残され、自律的な発展の手がかりがつかめないのだ。

 主要8カ国首脳会議は毎年「アフリカ支援」をうたう。だが、問題の深刻さを考えれば、経済から社会の基盤整備にいたるまでの多様な分野で、長期にわたる支援を続ける覚悟が要る。

 日本の支援に対するアフリカ諸国の評価は高い。国際協力機構緒方貞子理事長はアフリカ重視の姿勢を強めている。教育、福祉、農村開発などを通じた平和構築に向けて、現地に派遣する職員を大幅に増やそうとしている。

 紛争を止める国際的な関与と、紛争の芽を摘む地道な努力がかみあってこそ、事態は改善に向かう。日本政府はまずスーダン問題で積極的に動いてほしい。

朝日