【ねこまたぎ通信】

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アフリカ歴訪:日本人の思考、内向き 「国益」目先だけでない−−緒方貞子氏に聞く

 4月末から5月中旬にかけてアフリカ4カ国(ケニア、エチオピア、セネガル南アフリカ)を訪問した国際協力機構(JICA)の緒方貞子理事長=前国連難民高等弁務官、写真=が、訪問先の南アで毎日新聞などとの会見に応じた。緒方氏は「日本は驚くほど内向きな国になり、その象徴的な例がアフリカへの関心の低さ」と指摘。イラクで人質となった人々を非難した日本社会の反応や「国益」を強調する風潮を批判し、長期的視野に立った国際協力の重要性を訴えた。一問一答は次の通り。【ヨハネスブルク白戸圭一、写真も】
 −−昨年行われた政府開発援助大綱の改定では、日本の「国益」につながる援助をすべきだとの意見が強まりました。

 ◆JICA理事長就任のため13年ぶりに日本に戻り、人々の思考が内向きになっていることに驚いた。50年前に米国で議論されていた古い国益論が、まことしやかに論じられているのは驚きとしか言いようがない。これを変えるにはどうすればよいかを考えるために今回アフリカを歴訪した。

 −−内向きな思考を変えるために、なぜアフリカなのですか。

 ◆紛争、エイズなどアフリカで起きていることは世界の平和にかかわるのに、日本人はそのことを理解していないからアフリカへの関心が低い。鳥インフルエンザウイルスや新型肺炎SARSを見れば分かるが、自国の利益ばかり追いかけて国を守れる時代ではない。日本は目先のことを追っている。アフリカの国が日本に大きな期待を寄せていることを、どうすれば日本の人々に分かってもらえるか考えている。

 −−JICAとしてアフリカで具体的に何に取り組みますか。

 ◆遠隔地教育の支援。それから内戦下にある国に和平が見え始めた段階で、すぐに援助に取り掛かれるよう準備することなどだ。

 −−その援助には危険も伴います。イラクで人質となった日本人へは「危険地域に行った」として非難が集まりました。

 ◆私も責任者として本当に危険な地域に人を出すことはできない。しかし、多様な人々が存在して、はじめて良い社会となる。危険地域に行かない人もいて当然だし、行く人もいてよい。どんな状況下でも国には救出義務がある。人質となった人々を村八分のように扱って非難した日本人の反応は、国際社会の評価をかなり落としたと思う。

毎日新聞 2004年5月25日 東京朝刊