【ねこまたぎ通信】

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「サダムの方がましだ」 混乱と無秩序のモスル

16日、イラク北部のモスルで「クルド人や米軍よりサダムの方がまし」と力説するイスマイル・ハリルさん(共同)
 「クルド人や米軍よりサダム(フセイン大統領)の方がましだ」。イラク北部、第三の都市モスル。この街の多数派、イスラム教スンニ派のアラブ系住民は、クルド人部隊と米軍の進攻に猛反発、米軍に対する発砲事件も起きるなど、戦争終結とは程遠い混乱と無秩序が街を支配している。

 大半の商店は略奪を恐れてシャッターを閉め、車の往来や人通りも少ない。時折、米軍のヘリコプターが空を飛び交う。

 「サダムは自分の利益を守ることで頭がいっぱいだっただけだが、クルド人部隊は市民の財産を奪いに来た。米国も『イラクの解放』ではなく石油が目的だ。モスルはわれわれが守る」。建設資材工場で所長を務めるイスマイル・ハリルさん(41)は、クルド人と米軍への敵意をあらわにする。

 フセイン政権下で優遇された少数派のスンニ派アラブ系住民が、モスルでは多数派であることが問題を複雑にしている。行政や経済を握ってきたアラブ系住民の間には、クルド人の進攻により自分たちの権利が奪われるという不安がうずまく。

 地元住民によると、十一日のイラク軍撤退後、北側のクルド人自治区からクルド人武装部隊が進攻、市中心部でアラブ系住民と銃撃戦になった。このため、同部隊はクルド人が多く住む市内地域にとどまり、にらみ合いが続いている。

 十五日には、米軍主導で新市長が任命されたことに反発したアラブ系住民が米軍に投石。これに米軍が発砲し、米軍の発表では市民七人が死亡、多数が負傷する惨事となった。

 イラク軍兵士が撤退する際、住民に武器を格安で売り払ったため、住民の間に多くの銃が出回り、混乱に拍車を掛けたともいわれる。

 武装部隊を自治区からモスルに送り込んだクルド民主党(KDP)の幹部ハッサン・マジド氏(45)は「モスルではサダムを支持してきたアラブ系住民は多い。米軍が兵力を大幅に増強するまでは治安回復は難しいかもしれない」と悲観的な見通しを示した。(モスル共同=折坂浩史)