【ねこまたぎ通信】

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南アで激減する看護師

有利な労働条件求め海外へ流出

 南アフリカで、海外流出などによる看護師の不足が深刻な国内問題となっている。医療関係者は、今後十数年で国の保健医療に「悲劇的な結果をもたらす」と警告しており、各州当局も対応に頭を痛めている。
ヨハネスブルク・長野康彦)

保健医療に深刻な影響

 南アフリカ国内で正式に登録されている女性看護師の数は、一昨年の統計によると約九万四千人。そのうち集中治療や緊急医療に従事できる資格を持つのは三千八百人と、全体のわずか4%にすぎない。看護師らが所属する南アフリカ看護協会の調べでは、一九九九年には三千三百人の女性看護師がより良い労働条件を求め海外へ渡ったといい、現在でも海外就労を希望する女性看護師はひと月に二百人ほどにもなるという。
 看護師流出の主な理由について医療関係者は、①病院・診療所の過酷な労働条件②人員不足による残存看護師へのさらなる職務負担③割に合わない低賃金――といった内容を挙げている。国を去る女性看護師の数は、看護学校を卒業する女性看護師候補者の数を上回っており、絶対数は年々減少するばかりだ。
 南アでは看護師職が「尊敬・認知されにくい」という現状も女性看護師の海外流出に拍車を掛けていると関係者は話す。関係団体に寄せられた苦情では、医者から怒鳴り付けられ、まるで「ゴミ」「下僕」のように扱われ精神的ダメージを受けた女性看護師が全体の60%にも及ぶという。さらに世界保健機関(WHO)や国際労働機関(ILO)などの共同調査で、南アの女性看護師の17%が医師や患者などから身体的暴力を受けたことがあるという事実が判明。関係者はこうした精神的・肉体的圧力が看護師減少の主要因とみている。
 三十年のキャリアを持ち、サウジアラビアの病院へ寮母として転職していったベテラン看護師を一例にとってみると、彼女の場合、転職先の月給は日本円にすると五十万円ほど。南アの私立病院における同ポストの給料は半分以下、公立病院に至ってはわずか四分の一ほどの額だ。これが公立病院の一般看護師になると平均月給は六万円前後しかもらえない。海外の病院での待遇は南アと比べて「考えられないくらい良い」(同看護師)ことなど、海外勤務には魅力的な要素が多い。
 低賃金や過酷な労働条件による看護師らの「モラルの低下」も問題になっている。ヨハネスブルク中央病院・産婦人科で出産のため帝王切開手術を受けたある女性は、出産後、担当の医師・看護師らがちょうど勤務交代時間に差し掛かったため、そのまま現場を立ち去り、傷口を縫合されぬまま次のシフトの看護師が来るまで放置されていたという信じられない事件も起きている。人命救助が最優先されるべき医療現場でのこうしたモラルの低下が、国民の看護師、さらには医療関係者全体への印象を悪くし、自らの地位をおとしめめる結果になっていることは否めない。
 看護師不足に対処するため、州保健当局は、看護学校入学に際しての基準緩和や、中途退学者でも准看護師として就労可能とするなどの措置を実施。看護師の大幅増員を図ろうとしているものの、女性看護師の海外流出は続いており、依然として慢性的な看護師不足は解消されない状態。さらには今後十年間で看護学校生徒の40%、女性看護師の21%がHIV/AIDSに感染するという予測が南ア看護協会によってなされており、エイズを含むさまざまな要因で死亡する女性看護師は毎年二百人以上と、看護師不足による保健医療への深刻な影響が懸念されている。