【ねこまたぎ通信】

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より転載です.


【メディア・オフノート】

ペシャワール会のwebサイトは、こまめに更新されており、インターネットの利点を十二分に引き出していると思う。アフガニスタンの医療状況を、ほぼオンタイムで知ることができるこの状況は、ふつうのようになっているが、冷静に考えれば、つい5年前には考えられないことだったに違いない。

http://www1m.mesh.ne.jp/~peshawar/okin.html
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中村 哲医師 寄稿記事

アフガン復興の虚像
〔2002年6月2日、沖縄タイムス掲載〕


支援組織増え物価が高騰、悲惨さ増す貧困層の生活
カブール市内に立ち並ぶNGOのオフィスの前を、ブルカをかぶった女性や子供がたむろし、物ごいする。多国籍軍の兵士たちが、ライフルを構えてパトロールしている。メディアは盛んに明るい復興を印象づけるかのように、「解放された」知識人女性や再開された映画館などのニュースを流す。しかし、ブルカを脱ぐ女性はほとんどいない。
現地で長く活動する者から見ると、日本に伝えられるのは首都の、ごく限られた出来事でしかない。地方に至っては取材を試みる報道関係者もまだ少ない。


賃上げ要求
ひと月ぶりのカブールだったが、私たちPMS(ペシャワール会医療サービス)の事務所は、家賃の高騰で引っ越していた。月二百五十ドルだった家賃が三千ドルにはねあがり、家賃五百ドルの所に移ったばかりだった。そこも翌月から月千五百ドルを要求されていた。新しくオープンしたNGOの中には八千ドルの家賃を払っているところもある。
「復興支援」の国際団体の殺到は、皮肉なことに異常な家賃高騰と物価高を招き、海外在住の家主など富裕層が肥え太る一方で、貧困層の庶民の生活はさらに悲惨を極めている。
最近、私たちの朝礼でも医療関係の現地職員から異例の賃上げ要求が出された。「他のNGOはもっと給料が高いので、少し考慮していただければ…」私は答えた。「本末転倒である。PMSは君たちの生活のために活動しているのではない。仕事は患者たちのためにあるのだ」


虚構の演出
押し寄せた諸外国団体が相場の四-五倍の給与で人材確保に走り、地元の資金バランスを崩し、私たちのスタッフの中にも動揺が生じている。おまけに数年を経ずして彼らが撤退してゆくのは目に見えている。
これでは素直に「アフガン復興」を喜べるものではない。タリバン時代よりも治安は乱れ、貧しい人々の生活はいっそう悪化しているからだ。
いわゆる「難民帰還プログラム」で戻った多くのアフガン人は、干ばつで砂漠化した故郷へ帰れず、カブールの貧民街にとどまっている。世界が多くのメディアを通して見た「圧制からの解放」は、虚構に満ちた演出としか思えない。
山村部にある私たちの三診療所の活動は、休みなく続いていた。アフガン人の九割以上が農民であり、誇り高いアフガン気質は農村に生きている。そんな中で、医療活動とともに井戸掘りなど、水源確保による農村復興こそかなめだという方針で、さらに作業地を拡大、飲料水とかんがい用水の確保に尽くしている。


頑固な無関心さ
もの言わぬ民の声は世界に届きにくい。
住民と共に汗を流してきた私たちに見える光景は、一般的な「アフガン像」とはずいぶん異なる。大地に張りついて生きる者には、空爆も、政権交代も、自由とデモクラシーも遠いかなた
に感じられる。
「アフガン解放? 復興支援? 冗談だろう。アングレーズ(英米)になびくものか。わしらの生活は少しも変わっちゃいない」と言う農民の頑固な無関心さには、確固たる一つの意思表示がある。彼らの生活を武力で破壊したよそ者が、それと同じ論理で「復興」を掲げ、装い新たに登場したというだけだ。
一連の「アフガニスタン」を振り返るとき、人為の世界の終末と同時に、自然と一体に生きる者の頑固さに希望を見る気がしてならない。