【ねこまたぎ通信】

Σ(゜◇゜;)  たちぶく~~ Σ(゜◇゜;)

 幻想のバイオ燃料

人間のすることですから.
ル・モンド・ディプロマティークから.

アグリ燃料にまつわる5つの幻想

この提案を支持する人々の主張によれば、代替燃料を利用することで、地球上の貴重な天然資源の枯渇を回避できる。生産国はエネルギー自立を高めることができ、農民にも明るい展望が開かれる。とりわけ開発途上国の農民にとってはそうだ。ヨーロッパでも、共通農業政策によって「凍結」された農地(EUは食糧作物以外の農地を休耕地にすることを受け入れている)を活用できるようになる。
反対派のうち、「栄養不足の南の大衆」の名のもとに、真っ先に異論を唱えた国家首脳がカストロ議長である。彼は3月9日にこう述べた。「二者択一が眼前の事実となっている。土地を食糧の生産に充てるのか、それともバイオ燃料の製造に充てるのか」。先進諸国には、その消費水準からして、バイオ燃料向けに転換するほど農地の余裕がない。そこで、南の国々に安価なエネルギーを供給してもらおうという発想が生まれている。だが、それらの国々はいかなる代償を払うことになるのか。
5月9日、エネルギー分野を担当する国連の機関とプログラムからなる組織「国連エネルギー」が、「代替可能エネルギー:政策決定者のための枠組み」と題した文書を発表した。この文書では、バイオエネルギーのシステムが、貧困の削減、エネルギーへのアクセス、農村の開発やインフラといった面で、多くの利点をもたらすことが強調されている。しかし、その一方で、「この分野の開発に関する決定を下し、いかなる技術、政策、投資戦略を採用するかを決定する前に、細心の注意を払って、バイオエネルギーの経済的、社会的影響を評価する必要がある」との危惧も示されているのだ。

5つの幻想

  1. アグリ燃料はクリーンで環境保護につながる
  2. アグリ燃料は森林伐採を招くものではない
  3. アグリ燃料は農村の発展をもたらす
  4. アグリ燃料は飢餓問題を引き起こすものではない
  5. 「第2世代」のアグリ燃料が実現間近である

しかし,

  1. ライフサイクル・アセスメント、つまり開墾から走行時の燃焼に至るまでの環境影響評価をしてみると、森林伐採や焼却、水はけの悪い土地からの排水措置、農作業、土壌炭素損失による温室効果ガスの排出量のほうがはるかに大きいため、わずかな削減分は増加分によって相殺されてしまう。
  2. すでにブラジルのアグリ燃料の40%は、大豆から作られているのだ。米国航空宇宙局(NASA)によると、大豆相場が上昇すればするほど、アマゾン川流域の熱帯雨林の破壊が進行する。破壊は現在、年間32万5000ヘクタールのペースで進んでいる。
  3. アグリ燃料に関連する一連の産業部門では、石油大手や穀物大手、そして遺伝子組み換え作物の生産者が、存在感を強めている。世界の穀物市場の65%は、カーギルとADMの2社に支配されている。遺伝子組み換え作物の市場は、モンサントシンジェンタが取り仕切っている。アグリ燃料用作物を作る農民は、種苗や投入財、サービスの入手、また生産物の加工と販売といった面で、強固な大企業同盟への依存をますます強めることになるだろう。
  4. 世界的に見ると、最も貧しい人たちは、家計収入の50%から80%を食糧に費やしており、燃料用作物の高騰で食品価格が押し上げられれば、それに苦しめられる。ワシントンの国際食糧政策研究所(IFPRI)の試算によると、主食の価格は2010年に20- 33%、2020年には26-135%上昇する。しかし、食品の値段が1%上昇するごとに、1600万人が必要な食品を買えなくなる。現在の傾向が続くなら、2025年には12億人が慢性的な飢餓状態に置かれることになる(12)。このシナリオのもとで、国際的な食糧援助が大きな助けになる可能性は低い。その場合、我々の余剰農産物は燃料タンクのほうに回されることになるからだ。
  5. 国際エネルギー機関(IEA)は、今後23年のうちに世界で1億4700万トンのアグリ燃料が生産されると予測している(14)。これほどの規模の生産になれば、大量の二酸化炭素と亜酸化窒素が排出され、土壌浸食が進み、20億トン以上の廃水が出ることになる。意外に思えるかもしれないが、これだけの生産があったとしても、世界の石油需要の年増分(現時点で推定1億3600万トン)を補う程度にしかならないのだ。それで割に合うものだろうか。


残念ながら、アグリ燃料への移行には、事の始めから欠点が存在する。土地、水、資源を、燃料と食糧が奪い合うことになるのだ。さらにアグリ燃料は、究極的にはアグリ燃料自体の生産に用いられるようになるだろう。この命題は、熱力学の観点からすれば悲劇的である。アグリ燃料はまた、分限を超えた生活へと我々を駆り立てる。「再生可能」とは、「無限」という意味ではない。作物を再び植えることは可能でも、土地、水、栄養素はあくまで有限である。
バイオ燃料の真のアピールポイントは、石油を基盤とする経済モデルを引き延ばすことにある。あと1兆バレルほどとされる石油の世界埋蔵量からして、石油相場が1バレル100ドルに達する日も遠くない(15)。石油相場の上昇につれて、エタノールは原価が上がるが、それでもなお競争力は維持される。ここにこそ、第2世代アグリ燃料の矛盾がある。石油相場の上昇につれて、第1世代のアグリ燃料の利益率が上がるため、第2世代に向けた開発投資の意欲がそがれるからだ。石油相場が1バレル80ドルになれば、エタノール生産者は1ブッシェルのトウモロコシに5ドル以上でも出すだろう。そうなればトウモロコシはサトウキビとさえ張り合えるようになる。世界的なエネルギー危機は、食品企業とエネルギー企業のふところに、80兆から100兆ドルもの大金をもたらす可能性を秘めている。「過消費」の習慣を改めようという掛け声が聞かれなくても、何も驚くことはない。

経済学も熱力学も同じよ.地球上にいる限りエネルギー保存則は厳然としてカキーンっと私たちの前に立ちはだかっているのだ.


参照
バイオ燃料,って? - 【ねこまたぎ通信】
本当に真剣に考えないと貧困は拡大するばかり - 【ねこまたぎ通信】