【ねこまたぎ通信】

Σ(゜◇゜;)  たちぶく~~ Σ(゜◇゜;)

 それは秘密です.

秘密漏洩捜査 『知る権利』に聖域なし

http://www.tokyo-np.co.jp/sha/


軍事にかかわる情報は安易に秘密扱いされやすい。主権者が政府の行動をきちんとチェックするために、たとえ機密として扱われていても、国民に知らせるべき情報は報道しなければならない。
防衛庁(現防衛省)情報本部の元幹部に対する自衛隊警務隊による捜査は、新聞記者に対する情報提供が自衛隊法違反(秘密漏洩(ろうえい))に当たるという容疑である。昨今、自衛隊や米軍の実態が国民から見えにくくなっているだけに、重大な関心を持たざるを得ない。
警務隊が問題にしているのは、二〇〇五年五月三十一日の読売新聞朝刊で「日米両国の防衛筋が確認した」として報道された中国の潜水艦事故に関する情報である。秘密を厳重に守らせるため、自衛隊内部の締め付けを目的とした捜査とみられ、記者は対象にしていないもようだ。
だからといって報道機関としては座視できない。この際国民の「知る権利」に聖域はないことをあらためて確認したい。政府が隠している情報であっても、国民に知らせるべきだと自主的に判断した情報は報道するのがジャーナリズム倫理だ。
むろん、報道によって国民の安全に脅威を与えたり、無用な社会不安を引き起こしたりする恐れがあるなど、慎重に扱うべき情報はある。
だが、安全、脅威、不安などの可能性については政治家、役人など政府・公権力の側の恣意(しい)的な判断がまかり通りやすい。特に軍事情報は、秘密にする理由がなくても、軍事というだけで非公開が当たり前のような雰囲気さえある。
現に今度の潜水艦事故の情報は格別秘密にするほどの内容ではなく、いずれは明らかになったはず、との見方が強い。
日米間の軍事協力、情報の共有化が進むにつれ、米側から秘密保全強化の要求が強まっている。〇一年十月には自衛隊法が改正され、法制度としても秘密主義が拡大した。
防衛相が指定する「防衛秘密」という秘密類型が新設され漏洩は処罰されることになった。従来の秘密漏洩の罰則も強化され、防衛省の業務に関係ある出入り業者も新たに適用対象とされた。報道記者は秘密漏洩教唆で最高懲役三年の刑を覚悟しなければならなくなった。
だが、「知る権利」に奉仕する立場ではひるんではいられない。最高裁判例では、取材行為が形式的に秘密漏洩教唆に当たっても、一般の刑罰法令に触れるなど特別の場合以外は違法とはならない。節度を守るのは当然だが、秘密の壁へのあくなき挑戦こそ報道機関の使命だ。

米国絡めば 『機密』に昇格 秘密漏えい 防衛省なぜ躍起

http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20070217/mng_____tokuho__000.shtml


南シナ海で中国海軍の潜水艦が事故を起こしているという読売新聞のスクープが、防衛庁(現防衛省)幹部のリークだったとして同省が幹部宅などを家宅捜索していたことが明らかになった。当局からの内々の情報提供はいろいろあるが、防衛省にとっての“不都合な秘密”って何?
防衛省幹部が新聞記者へのリークが原因で捜索されるというショッキングなニュースが朝刊各紙に載った十六日朝、閣議後に記者団に囲まれた久間章生防衛相は複雑な表情でこう明かした。
「非常に大事なこと、機微に触れることは漏らしてはいけないという一般論としてきちんとしようということだ。そうでないと日本に機微に触れる資材を提供できないとか、情報は漏らせないとなったら国益に反する」
「資材を提供できない」「情報は漏らせない」という“相手国”はもちろん米国。今回の強制捜査も米国から提供された情報の保全と密接に関連しているようだ。
問題になったのは、読売新聞が二〇〇五年五月三十一日朝刊に掲載した記事。中国の潜水艦が同月二十六日ごろ、南シナ海を潜航中に火災とみられる事故で航行不能になり中国・海南島に向けえい航されていることを「日米両国の防衛筋が確認した」と報じた。記事には米軍から提供された衛星情報も含まれているとみられている。


■識者懸念『重要な情報こそ開示を』

記事の情報源と疑われているのは、防衛省情報本部所属の課長級職員だった一等空佐(49)。自衛隊の警務隊が同一佐の自宅などを家宅捜索し書類送検する方針で捜査を進めている。読売新聞記者の事情聴取は行っていないという。
自衛隊法は「隊員は職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない」と規定。違反した場合には、一年以下の懲役または三万円以下の罰金に処すると定めている。警務隊は自衛隊内部の刑事事件を担当する捜査機関で、警察と同様の捜査権限を持っている。
自衛隊員の守秘義務については、〇一年の自衛隊法改正で防衛庁長官(現・防衛相)が指定する「防衛秘密」が新設され、漏えいした場合には懲役五年以下という厳しい罰則が規定された。直接のきっかけは、二〇〇〇年に海上自衛隊三佐が駐日ロシア武官に秘密を漏えいした事件だった。
当時の中谷元防衛庁長官は国会審議で「機密」「極秘」「秘」が計約十三万五千件あると明かし、「この中から防衛上特に秘匿することが必要なものを選び、防衛秘密に指定する」と説明した。今回の事案が防衛秘密なのかどうかについては、防衛省広報課は「捜査段階なのでコメントできない」と話している。
防衛秘密をめぐっては、自衛隊と取引関係のある民間企業も処罰対象になりうることや、報道関係者が漏えい教唆の疑いを持たれる可能性のあることが、国会で議論になった。
防衛秘密の新設を審議した参院外交防衛委員会公聴会で意見陳述した吉田健一弁護士は「取材・報道の自由を制約し、国民の知る権利を侵害する恐れがあると反対した」と強調する。その上で今回の強制捜査についてこう懸念する。
「当時の心配が現実のものになった。重要な情報であるならば国民に知らせオープンに議論することが大事。それとまったく逆行してしまっている」
では、今回の秘密漏えい事件の舞台となっている中国潜水艦事故には、防衛省が躍起になって捜査するほどの“秘密”が含まれていたのか。
「今回の件は、秘密そのものより、非常に政治的なにおいがする。『米側が危惧(きぐ)している』の表現が出た時は要注意で、背景には外務省と防衛省との情報をめぐるつばぜりあいがあるのではないか」とみるのは元自衛隊員で軍事評論家の神浦元彰氏。
防衛庁が省に昇格したことで、米国防総省の直接の相手は防衛省に。対米関係を一手に仕切っていた外務省は活躍の場が減り、ひいては影響力が低下する可能性はある。その勢力争いが影響している−という説だ。
神浦氏は「情報衛星にしても、実際に運用しているのは防衛省。海外の日本大使館から入ってくる防衛関連情報も直接、防衛省に入るようになった。日米安保政策も防衛省がやることになる。当然、外務省はおもしろくない」と解説する。
軍事評論家の稲垣治氏も重大な「秘密」が漏れたとされる点については懐疑的で、「マスコミも含め、外部の人間は軍事情報には近づくな、自衛隊内部に対しては、微罪でもやるぞ、との意思表示」とみる。
事故は二年も前に起き、火災を起こした潜水艦も一九七〇年代建造のディーゼル型で、原子力潜水艦のようなデリケートな問題には発展しにくい。
確かに、事故のあった南シナ海周辺は緊張が高まることが多い海域で、その状況を日米が衛星や電波傍受を通じて監視していたことは未公開情報。それが漏れたことが、問題といえなくもない。
稲垣氏は「大切なのは、その秘密がだれにとって重要なのかだ。中国にとっては国の威信にかかわることでもあり、事故が明るみに出た後、中国海軍の幹部が解任された。しかし、日本や米国にとっては、事故が表に出て痛手を被ったと言えるのかは疑問だ」と指摘する。その上で「戦前には軍港の近くで泳いだだけでも罰せられたが、その状況に近づいているのではないか」と防衛省を取り巻く雰囲気がきな臭くなっていることを懸念する。
一方、元航空ジャーナル編集長の青木謙知(よしとも)氏は「家宅捜索するからには、潜水艦事故のほかにも(漏えいしたものが)もっとあるはず。それを説明してしまうと、秘密が秘密でなくなるから説明できないだけ」と、防衛省の対応に一定の理解を示す。


■『米追従の現実映した』

青木氏は八三年に大韓航空機が旧ソ連の戦闘機に撃墜された事件を引き合いに「この時も機密の扱いが論議を呼んだ。戦闘機と陸上基地の通信を自衛隊が傍受しており、米国は撃墜を認めないソ連に証拠として突きつけた。機密というのは国が指定するもので、その解除も国の基準で行うものだ」と解説する。
七二年の外務省機密漏えい事件で毎日新聞記者として当事者だった西山太吉氏は「潜水艦の火災は、報道した方は知らせるべしと書き、情報を出した方も重大な国家機密を漏らした感覚はないだろう。かつて政府高官からの情報で、米原潜の日本初入港をスクープした。機密度はずっと上だが、罰せられた記憶はないね」。
その上で、今回の事件をこう皮肉る。
「大した秘密でもないのに、米国とともに潜水艦の事故を察知したというだけで、日本はがらっと対応が変わる。米軍にびくびくしてそうせざるを得ないような状況に日米の軍事同盟はある。図らずも、今回の件は日米関係の現実を映し出したね」


<デスクメモ> ハワイで米原潜とえひめ丸の事故を取材して感じたのは米メディアのペンタゴンへの食い込みのすさまじさ。原潜に民間人が乗っていたことや操舵(そうだ)状況まで抜かれ日本メディアは完敗だった。そこに「真実を伝える」意思を感じた。“国益”を守るため、われわれも秘密に立ち向かわねばならない。(蒲)

潜水艦事故報道 これが防衛秘密の漏えいか

http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/news/20070217k0000m070147000c.html


防衛省情報本部所属の航空自衛隊1佐が読売新聞記者に内部情報を漏らしたとして、自衛隊法違反(秘密漏えい)容疑で、自衛隊警務隊の家宅捜索を受けたことが明らかになった。
読売新聞は中国海軍所属の「明」級のディーゼル式潜水艦が南シナ海で火災事故を起こし、航行不能になったことを05年5月31日付朝刊で報道した。記事には米軍からの情報が含まれており、1佐が米軍情報を流出させた疑いが持たれている。
報道機関への情報提供で自衛隊関係者が強制捜査を受けるのは極めて異例である。「報道の自由」の制約につながりかねず、「国民の知る権利」を損なうという点からも看過できない問題である。
自衛隊法には職務上知り得た秘密を漏らしてはいけないという守秘義務が規定されている。違反すれば懲役1年以下または3万円以下の罰金が科せられる。
01年には防衛相が指定した「防衛秘密」を漏らした場合、5年以下の懲役となる、それまでより重い罪も新設された。情報漏えいを教唆した者にも処罰対象が広げられ、記者も含まれる。
当時国会では、何が防衛秘密に当たるのか明確ではない上に、取材活動の制限につながるのではないかという議論になった。
国家の安全保障上、守るべき秘密はあるだろう。しかし、軍事に関する情報はともすると秘密主義に陥りがちで、国民が政策を判断するための情報が制約されるケースが多い。
例えばテロ特措法やイラク特措法による海外での自衛隊活動も実態が分かりにくく、私たちは情報を積極的に公開すべきだと要求してきた。
当局が公表しない事実を、取材活動によって明らかにしていくのは報道機関の責務であり、「知る権利」に応える道だと思う。
中国の潜水艦事故に関する読売新聞の報道が米国と日本の安全保障に対して、どれだけの実害を及ぼし、双方の国益を損なったことになるのだろうか。
日本近海での中国潜水艦の火災事故は、国民にとって必要な情報であることは明白だ。むしろ、防衛省自らが積極的に公表すべきものだ。
日米間の軍事情報の共有化は進み、防衛省は米国から情報管理の強化を再三、求められてきた。そのため、情報内容よりも省内の引き締めのために強制捜査に踏み切ったという見方もできる。読売の報道が一罰百戒の手段として使われたなら、全く理解に苦しむ。積極的に情報を公開し、国民の理解を得るという流れにも逆行する。
久間章生防衛相は「情報をもらったから罪になるわけではない。通常の取材を罰する法律ではない」と述べた。しかし、情報提供する側を萎縮(いしゅく)させ、国民に必要な情報が届かなくなることを危惧(きぐ)する。
防衛省は捜査の事実は認めたものの、事実関係については詳しく説明していない。まず何が問題なのかをはっきりさせるべきだ。

毎日新聞 2007年2月17日 1時11分

防衛省・秘密漏えい 識者「公表妥当な情報」

http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/closeup/


読売新聞記者に軍事情報を伝えたとして、防衛省情報本部所属の航空自衛隊1等空佐(49)が自衛隊法違反(秘密漏えい)容疑で強制捜査を受けた問題は16日、メディア関係者や政府内に波紋を広げた。01年の米同時多発テロ事件をきっかけに改正された自衛隊法には秘密漏えい罪への罰則強化などが含まれており、当時から「取材の自由を侵害する恐れがある」との指摘が出ていた。法の運用を巡り今後も議論を呼ぶとみられる。
今回の事件は、国民の「知る権利」や「報道の自由」を制約するという点で大きな課題を残した。さらに、中国潜水艦の火災事故という日本国民の安全に密接に関連する情報を、読売新聞が報道するまで明らかにしなかった防衛庁(当時)の秘密体質への批判も識者から相次いだ。
「潜水艦が事故を起こした周辺海域で日本の漁船が航行していたら被害に巻き込まれる恐れがあり、生命にかかわる問題だった。本来であれば防衛庁自身が一刻も早く公開すべき情報だった」。大石泰彦・青山学院大教授(メディア倫理法制)はそう指摘。大石教授は「1等空佐が読売記者に教えた行為は情報漏えいではなく、公益性のある情報提供だと言える」と話す。
また大石教授は「改正案が提出された時の懸念が現実になったといえ、こういう防衛省の情報開示の姿勢では、拡大解釈されたのかさえウオッチできない」と述べた。
服部孝章・立教大教授(メディア法)も「生命にかかわる緊急情報さえ開示されないのでは何が秘密に当たるのかの議論もできない」と厳しく批判する。その上で「このような事案が秘密漏えいとして処罰の対象となるのでは記者への情報提供についての萎縮(いしゅく)効果は計り知れない。内部告発者を保護する公益通報者保護法があるが、防衛省内ではうまく機能しないだろう」と述べる。
一方、軍事評論家の小川和久氏は、今回の強制捜査について「防衛省ファイル交換ソフトを介した情報流出があったため、秘密保全に対する危機感が高まっていた」と背景を解説した。さらに「米軍再編などで同盟国との関係が一層緊密化する中で、米国に対しても情報管理を徹底するという意思を示す象徴的なことであり、一罰百戒の要素が強いのではないか。報道機関はその中でもいろいろな角度から情報収集を続け、国民に伝えていくべきだ」と話した。【横井信洋、臺宏士】


◇政府・自民党、統制強める動き

政府は昨年12月にカウンターインテリジェンス推進会議(議長・的場順三官房副長官)を設置し、秘密保全を強化するための政府全体の仕組み作りに着手している。報道機関への情報提供のあり方も検討対象となる見通し。菅義偉総務相放送法などの関連法を見直す考えを示すなど、政府・自民党内で情報統制を強める動きが出ている。
塩崎恭久官房長官は16日の会見で、今回の問題に関連し、推進会議について「当然、情報の管理ということで幅広い議論をしないといけない」と述べ、報道機関への情報漏えい問題も検討対象との認識を示唆した。
推進会議は、省庁ごとに設けられている秘密保全の規則について、来年度中に政府内で統一基準を設けることを検討中。背景には在上海総領事館の男性職員が04年5月に中国当局から機密情報の提供を強要されて自殺したとされる問題などがあり、外国の秘密情報活動などを念頭に、報道機関との接し方も含めた職員の行動基準を策定する意向だ。基準策定後に罰則強化などの法改正の必要性を唱える声もある。
メディアへの国の関与を強める動きも目立つ。関西テレビ大阪市)のねつ造問題を受け、菅総務相は「報道の自由は当然だが、事実と異なったことを報道する自由はない」と、再発防止のための条項を盛り込んだ放送法など関連法改正案を今国会に提出する意向を主張した。
一方、自民党橋本龍太郎首相が退陣に追い込まれた98年の参院選後、党員約2000人を「報道モニター」に委嘱し、党に不利な報道をチェックする体制を構築するなど選挙に敗れるたびにメディア規制の動きを強めてきた。
中川秀直幹事長は16日の会見で「一部に知る権利との関係の指摘があるが、公務員が機密を漏えいすることはあってはならない」と強調した。【宮下正己】

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 ■ことば

 ◇自衛隊法改正

防衛秘密を新たに定めて秘密漏えいの罰則を強化し、報道関係者を含む民間人も処罰対象に加えた改正自衛隊法は01年10月、わずか1カ月足らずの審議で成立。秘密漏えいは5年以下の懲役で、教唆・共謀は3年以下の懲役と規定された。同年9月の米同時多発テロを受けたテロ対策特別措置法とのセットだった。
当時の法案審議でも、秘密漏えいを教唆、扇動するなどした民間人の処罰規定について、「報道・取材の自由」「表現の自由」を侵す恐れがあるとの指摘が専門家から出ていた。防衛庁側は記者の取材が教唆に当たる例として、贈賄や脅迫などの犯罪行為のほか「(男女の)情を通じる」といった社会通念上許されない行為を挙げていた。
防衛秘密の10項目は、防衛に関して収集した電波情報・画像情報▽防衛用施設の設計など抽象的で幅広い。
また改正法は、民間人を処罰対象とした点などで「表現の自由を侵す」などと批判され、85年に廃案になった国家秘密法案(スパイ防止法案)との類似性も指摘されていた。

毎日新聞 2007年2月17日 東京朝刊


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