働かない若者,働けない若者?
若年層の失業、世界で8500万人 ILO報告
http://www.business-i.jp/news/world-page/news/200610310030a.nwc
■4億人分の雇用が必要国際労働機関(ILO)が30日に公表した若年層(15〜24歳)の雇用情勢に関する報告書で、労働意欲の低下などを反映し、昨年の若年層失業者数が過去最高の8500万人に達したことが明らかになった。日米欧などの先進国で学校にも行かず就職もしない「ニート」の割合が増えていることもわかり、ILOは治安面にも悪影響を与えかねないと警告している。
報告書によると、2005年の世界の若年層の失業率は13・5%と、成人層(25歳以上)の失業率(4・6%)の3倍近い高水準で推移している。失業者数は、過去10年間で14・8%増加した計算になる。
地域別の失業率では、25・7%の「中東・北アフリカ」や欧州連合(EU)加盟国を除く「中・東欧、旧ソ連諸国」が19・9%と高水準だった。
また、ニートは世界で約2000万人と推計。中でも、日本や欧米などの先進国24カ国での割合は13・4%に達し、ニートの増加が日本だけでなく、世界的傾向であることが裏付けられた。
こうした若年層失業者の増加の理由は、日本国内の事情と大きな違いはなく、報告書では、労働を嫌う無気力な若年層が増えているためと指摘。
この上で、(1)成人層が以前の雇い主や同僚からの紹介など、さまざまな手段を駆使して仕事を見つけるのに比べ、若年層は求職のノウハウが不足している(2)親の経済的支援を受けている若年層の間に、目の前に求職があってもえり好みする「ショップ・アラウンド(商品を見ているだけで購入しないという意味)」傾向がある(3)若年層は自宅から離れた場所に引っ越して生活する経済的余裕がなく、就職機会をみすみす逃してしまう−などと分析した。
さらに、雇用者側の事情として、仕事経験の浅い若年層より、まず経験を積んだ成年層を選ぶ一方、解雇の際には一時雇用契約が多い若年層が真っ先に切られるという「ラストイン・ファーストアウト」現象を挙げ、これらの複合的要因によって若年層の失業者数が増加しているとの見方を示した。
ILOは若年層の失業増加が犯罪を増やす危険性を指摘。1日2ドル以下で暮らす若年労働者3億人を含め、若年層には世界中で4億人分の雇用創出が必要と試算している。AFP通信によると、ILOのソマビア事務局長は「この傾向は、世界屈指の資産の一つである若い男女の将来に大きな損害を与える恐れがある」と述べた。(坂本一之)