【ねこまたぎ通信】

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 パレスチナ問題とは誰の問題か?

最近ある会の会報に書かせてもらった。先月に行ったパレスチナ問題勉強会についての報告です。

パレスチナ問題とは誰の問題か? ――パレスチナ問題勉強会から――

「理不尽」が疫病のように世界に蔓延しつつある。「民主主義」や「平和」を大義名分にして、争い、憎み合うというパラドックスが、あたかも自明のことのように強者によって押しつけられ、人と人を結ぶはずの「言葉」は歪曲され、本来的な意味を失って無価値なものへと変質していく。世界のあちらこちらで、そして、今パレスチナで起こっている事も、まさに「理不尽」に満ちている。イスラエルの建国から今日に至るまで「圧倒的な暴力」がパレスチナの人々を支配してきた。「和平交渉」といいながら、パレスチナの人々は土地と水を奪われ、壁に囲まれ、銃口を眼前に突きつけられ、インフラを破壊されてきたのである。最近の話題を取り上げてみれば、国際機関監視のもとで実施された「民主的」な選挙において選出されたハマス政権に対して、私たち日本を含む欧米社会は真っ先に「話し合う事」を拒否し、パレスチナの人々の意思を踏みにじった。その上でイスラエルを訪問した私たちの指導者は,実に軽々しく「共存」を謳ったのだ。圧倒的な強者が弱者を抑え込む事を「共存」とは呼ばない。
5年以上にわたってパレスチナイスラエルを集中的に取材してこられたジャーナリストの小田切拓さんを迎えて6月に勉強会を行った。勉強会で小田切さんが私たちに語った事は、パレスチナの現状は私たちが普段新聞やテレビなどのメディアを通して知る事とは大きく異なっていること、そして、そのメディアというフィルターを通して、パレスチナを巡る問題について多くの誤解と偏見を私たちが持っていることを教えてくれた。
田切さんは一時期家族を連れてヨルダンに居を定めて取材を続けてこられた。その場に暮らすことで、生の「人」と「日常」を通し「自分のこと」として見ることで、対極にある「国際社会」のあり方が浮き彫りになる仕掛けがあった。昨年、小田切さんが自費でパレスチナの農民ファエズさん*1を招いて全国を講演して廻ったのは、私たち日本人にまさしく「自分のこと」として見ることの大切さを伝えるためだった。
今の欧米を中心とした世界は、「利潤追求」をイデオロギー化した「民主化」を非「先進国」に押しつけることで動いている。そのために、多くの「事実」と「言葉」が恣意的に歪められて私たちの茶の間に届けられている。「話し合う事」を拒否し、残る選択肢は叩き潰すことだけ、そんな状況へ私たちの社会はどんどん追い込まれているような気がする。日本の安全保障問題や憲法改正問題などを議論する時にも、発言者が「正論」を主張するのであれば、「事実」や「言葉」を歪曲することなく、本質を見失わない議論を行わなければならないだろう。パレスチナ問題も対テロ戦争も核問題も貧困問題も全てがそこに集約されて行くように思う。何よりも、誰の問題でもなく、自分の問題であると受け止めながら。
勉強会で語られた細かな内容は、小田切さんが岩波書店発行の『世界』8月号*2に「<現地からの報告>ハマス政権の6ヶ月〜<民主主義>は瓦解するのか」と題してまとめられているので是非参照されたい。


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