【ねこまたぎ通信】

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 メディアの現実

真摯な言葉も態度も編集されていく。

男たちの大和〈YAMATO〉」と「俺は、君のためにこそ死ににいく

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8月17日午後、帝国ホテルの大宴会場で「男たちの大和〈YAMATO〉」(東映、監督佐藤純彌)のクランクアップ記者会見が行われた。太平洋戦争末期、3000名余の乗員とともに沖縄への海上特攻に散った戦艦大和。その最後を描く“戦後60年記念”の戦争映画大作だが、それをどう描くのか?ずっと気がかっていたので、記者会見に参加した。
出演した男優たちに、記者たちから質問が飛んだ。「映画の若者たちは愛する人のため、故郷のため、死んでいったとされているけれど、あなたたちは愛する人のために死ねますか」。若い男優たちはちょっと口ごもりながら「死ねます」と答えた。ひとりの年配の司令官役を演じたスターは、「そういうときになれば、私は愛する人のため、国のために戦場にいきます」と力を込めて言い切った。最後に佐藤監督がマイクをにぎった。「違います。本当に愛するものや国を守りたかったら、戦争をしないこと。そのためにいま何をすべきか考えてください」と。
私は佐藤監督の処女作「陸軍残虐物語」(1963年)を思い出した。それは日本軍隊の醜悪さを満身の怒りを込めて糾弾した力作。この「男たちの大和」にその初心が生きていることを願わずにはおれなかった。しかし、この記者会見を報じたテレビやスポーツ紙などは、「愛するもののために戦場へ」の発言だけで、佐藤監督のこの真摯な声は一切排除されていた。ここにも「戦後60年」の現実があった。映画は12月7日全国公開される。
そして越えて8月22日、今度は赤坂プリンスホテルの大広間で、石原慎太郎総指揮・シナリオの特攻隊映画「俺は、君のためにこそ死ににいく」(東映、監督新城卓)の企画発表会が開かれた。こちらは来春撮影をはじめ、来夏公開をめざす。戦争末期、多くの陸軍特攻隊が飛び立った九州・知覧の町を舞台に、若き隊員たちの最後の日々を見とった食堂の女主人・鳥浜トメを中心に描く。降旗康男監督の秀作「ホタル」が描いたものと同じ場所、同じ人びとだが、石原ははっきりと「あの映画のトメさんは実際と違う」と語り、死んでいった若き特攻隊員たちは神様そのものであり、トメさんはその心をいやした菩薩のような人、と強調した。
石原と新城監督が並んだ壇の背景には、桜の花満開の向こうに靖国神社が見える大型カラー・パネルが立ち、そこに「俺は、君のためにこそ死ににいく」のタイトル・ロゴが下がっていた。これ以上、この映画の意図をつけ加える必要がないぐらい。あの痛切な民族的反省を込めた反戦の譜「ホタル」と正反対の特攻賛美の映画が、同じ東映から作り出されようとしている不可解もあわせて、私は心にきざみつけた。


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