【ねこまたぎ通信】

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 文明は衝突しない

いやいや,お見事です.たまたまハッサンさんの論文を読んでいたら,出てきた.^^
http://www1.doshisha.ac.jp/~knakata/

イラク戦争国民国家システム − イラク国民に援助ではなく賠償を」

2003年6月20日:京都新聞「論考」ハッサン・中田

http://www1.doshisha.ac.jp/~knakata/lecture4.html
     
イラク戦争は西欧文明の「近代国民国家システム」の内部の問題であり、イスラームと西欧の衝突ではない。「人類、地球は一つ」と考えるイスラームは、地球を国境で寸断し、人類を諸「国民」に差別化する「国民国家」のような制度をそもそも認めない。ヨーロッパ列強による世界の植民地化の歴史の中でイスラーム世界も徐々に蚕食、分割、植民地化されたが、それらの植民地の国境がそのまま固定化されたのが現行の国民国家システムであり、イラクもまたそうした西欧の植民地遺制である「国民国家」の一つであり、イスラーム国家であるわけではない。イギリスによってオスマン帝国から切り取られ委任統治領化される以前には、「イラク国民」なるものは存在しなかった。イラクとはオスマン帝国内の異なる地方文化を持つ3つの地域モスル州(現クルド地区)、バグダード州(現スンナ派アラブ地区)、バスラ州(現シーア派アラブ地区)の寄せ集めに付けられた名前に過ぎなかった。オスマン帝国においてはクルド人問題のような民族問題は存在しなかった。イスラームのコスモポリタニズムの長い伝統に立脚するオスマン帝国は、いかなる民族、言語、宗教集団に対しても、均質な「国民文化」を強制することはなかったからである。

 西欧における「国民国家」なるものは、社会の内部の多様性、多元性を抹殺し均質な「国民」を創出する「全体主義」的思考、そして自「国民」にだけ「人権」ならぬ「特権」を与える(なぜアメリカの大統領の選挙権は全人類ではなくアメリカ国民にしか与えられないのか)「反ヒューマニズム」をその本質とするにもかかわらず、自らは「自由」と「平等」の体現者を僭称するという偽善的虚構性をその本質とする。サダム・フセインの独裁は西欧の全体主義思想の生み出した怪物リヴァイアサン国民国家」の戯画であり、それを陰画として西欧の偽善的虚構性が炙り出されたのが今回の対イラク戦争であった。
 
 アメリカは国際司法裁判所から「国際テロ」で有罪判決を下された世界で唯一の国である(1986年にニカラグアでの破壊工作によって)。今回の対イラク戦争も「国家テロ」であったことも、「テロ国家」アメリカの過去の歴史を見れば驚くには値しない。米国防情報局の内部告発により、大量破壊兵器が存在する証拠がないとの同局の報告を握りつぶしてブッシュ大統領が開戦に踏み切ったことは報道によっても既に明らかにされている。そもそも大量破壊兵器の存在を理由にイラクを攻撃すること自体、サダムによって引き起こされ100万人に及ぶ犠牲者を出したイラン・イラク戦争において、イラク化学兵器を実際に使用し数万人の犠牲者が出ていたまさにその時に、アメリカがそれを黙認しイラクに軍事援助を与え続けていたことを知る者には到底受け入れられるものではない。

 アメリカは「イラクの石油をイラク復興援助のために使う」と述べることで、石油利権獲得のために戦争を起こした、との疑惑を払拭できると信じているが、そこにも力への驕りによる良識の麻痺が看て取られる。イラクの復興は、イラクを破壊したアメリカとその同盟国の財政的責任によって行われねばならない。アメリカ、そして日本に求められるのは援助ではなく先ず賠償であり、それは当然ながらイラクの石油によってではなく我々一人一人が支払うべきものなのである。(了)

文明の衝突」などというすり替えは,基地外の発想である.イスラムに対するちゃんとした理解と認識を持っていれば,私たちの周りを取り巻く様々な虚妄を見抜くことが出来るはずである.
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