ため息
新聞記者というのは、もっと頭が良いと思っていた。タイトルに期待して読んだ私が馬鹿だった。
記者の目：第２期ブッシュ政権と付き合う方法
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20050202k0000m070133000c.html
「世界の圧政終結」「自由と民主主義の全世界への拡大」を掲げて第２期ブッシュ米政権が始動した。イラク戦争開戦を支えた思想を全世界に押し付けかねないブッシュ大統領の宣言に、各国は「米国とあと４年どう付き合っていけばいいのか」と思いをめぐらせたに違いない。日本はどうすればいいのか考えた。
「日本はあと５０年間は米国と組むしか選択肢がないよ」。もう２年以上前になるが、ホワイトハウス近くの事務所に元米政府高官を訪ねた時のことだ。元高官は「ここに地図があったらなあ」と言って立ち上がり、真っ白な壁を世界地図に見立てながら、日本の長期戦略の選択肢を懇切丁寧に説明し、最後にこう結論づけたのだ。
その理屈を要約すればこうなる。日本は核戦争に耐えるだけの広い国土に恵まれていないから、仮に核武装したところで生き残れない。だから潜在的なパートナーを考えざるを得ない。米国、ロシア、インド、中国のいずれかだ。中国については日本が望まないし、ロシアも用意ができていない。インドはいい考えかもしれないが、５０年間は準備が整わない。だから少なくともその間は米国しかない。
米国が同盟関係を、冷徹な国際情勢分析と不断の再検討のもとに運営していることを思い知らされた気がした。感情に任せて日本の政治家からたまに飛び出す核武装論など笑止千万。生半可な理屈と覚悟で米国を批判しても、彼らを動かすことは困難なのだと、「対等な日米同盟関係」を築く難しさを改めて思った。
さてその上での「ブッシュのアメリカ」との付き合い方である。それにはイラク戦争への評価を避けて通れない。イラク戦争は開戦の理由も方法も間違った戦争だったと私は思う。では「日本はイラク戦争を支持すべきでなかったのでは」と問われると、そう答えたいところだが、ことはそう単純ではない。
小泉純一郎首相は当時、イラク戦争支持の理由を「イラクの大量破壊兵器の差し迫った脅威」と説明した。だが本音は違うだろう。０２年夏以降、イラク戦争準備を始めたブッシュ政権に日本は水面下で「先制攻撃だけはやめてくれ。やるなら（大量破壊兵器を巡る）国連決議違反でやってくれ」と言い続けた。先制攻撃は国際秩序の破壊につながりかねないからだ。つまりは戦争支持ありき。「せめて体裁を整えてくれ」と、米側に「意見」したというのが取材を通じての私の解釈だ。
日本の外交官たちはよく言う。「日本は安全保障を米国に依存している。中東の石油に依存し、北朝鮮の核問題を抱えてもいる」「太平洋戦争のような失敗を再び繰り返してはならない。あと数十年間は日米同盟を活用するしかない」。だから、少なくともイラク開戦前夜に至って「支持しない」という選択肢はなかったと言うのだ。私も日本政府の総合力から見て「あの時にイラク戦争になぜ反対できなかったのか」と迫るのは、残念ながら「ない物ねだり」のように思う。
むしろ日本の対応でより問いたいのは、イラク開戦というギリギリの段階にいたる前の数カ月の準備期間でさえ、すでに「戦争支持ありき」と対米追随を決め込み、ブッシュ政権に対し満足に意見できなかったことだ。
では言うべきことを言える関係を築くには、何が必要なのか。「日米同盟しかない」という思考停止状態のなかで、ものを言えば迫力は半減する。まして米側はそれを見抜いている。国際情勢を、政治地図の横軸と時間の縦軸の中で分析しつつ「日米同盟がなぜ必要なのか」「どう維持・運営すべきなのか」という不断の検証が必要だし、外交の選択肢を広げる努力が必要だ。つまり日本外交の３本柱だった日米同盟、国連中心主義、アジア重視のうち、傷ついた後者二つの立て直しが急務だ。とりわけ中国との関係改善が急がれるのは言うまでもない。
先日、ズビグニュー・ブレジンスキー元米大統領補佐官に話を聞く機会があった。同氏は、私が質問するより前に、欧州と日本が２期目のブッシュ政権とどう付き合うべきかを自ら語り出した。「批判するだけで政策に影響を与えられると考えているなら間違いだし、批判せずに手助けするだけでそうなると考えるのも間違い。共通の目的のもと、共同で政策決定を行い、負担を共有するという戦略的対話に建設的に関与すれば、影響を及ぼせる」。真の意味での戦略的対話ができる関係に向け、道のりは遠くとも、努力を続けるしかないのだと思う。【北米総局・佐藤千矢子】
毎日新聞 2005年2月2日 0時13分
一応大手メディアにも目を通しているけど、レトリックだけで中身のない文章を読むのはホントしんどい。ずーっとそういう訓練ばかりやってきたんだろうな。
