サルバドル方式
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2005年1月22日 土曜日 Saturday, 22 January 2005[飛耳長目録 today's news list]
☆サルバドル方式
アルジャジーラ 1月20日 英字報道から訳☆★サルバドル方式 The Salvador option
Scott Ritter (スコット・リッター 元国連兵器査察官)
アルジャジーラ 1月20日
http://english.aljazeera.net/NR/exeres/ADCA48CC-9307-466B-BA18-82724CAA7484.htmどんな基準に照らしても、アメリカの進めているイラク占領は惨事である。
アメリカが自慢する軍事機構は、2003年3月から4月にかけてこそ歴史的なバグダッド進軍を褒め称えられたものの、今日では、部分的に占領はしているだろうが統治はできていない国で守勢にまわった敗軍だと気づいている。
ファルージャでレジスタンスに大打撃を与えようとした全面攻勢は、アメリカ軍の火力によって市を破壊したものの、まだひじょうに多くの部分が反米戦士の手に掌握されている。
米軍がレジスタンス戦士に対して「断固たる」作戦を展開したモスルやサマッラ、あるいはその他の地方においても、これと同じ状況が現実のものとなっており、戦闘がこれまで以上の激しさで再開されることを数日のうちに目にするしかない。
それなのに、イラクの戦士に攻勢をかけようと懸命になっているアメリカ合衆国の姿は、まるで、過去のイラクでの間違いのうえに新たな作戦を重ねる準備をしているかのようにみえる。新たな作戦とは、アメリカ近代史において最も腹黒く、最も厄介な時期から導き出したものである。
記者発表によると、ペンタゴン=米国防総省はイラク人暗殺者のチーム、いわゆる暗殺部隊を編成し、訓練・育成しようと考えている。それはイラクのレジスタンス指導部に浸透し、彼らを抹殺するために使われることになる。
サルバドル方式と呼ばれるものは、米国の後押しを受けて、1980年代にエルサルバドルでテロをおこなった暗殺部隊に関連する。画策されている計画は、実際にベトナム戦争時に実行されたフェニックス暗殺計画を起源とするもので、この作戦ではアメリカ軍の指揮する暗殺部隊が、ベトコン協力者として知られていた者、あるいは疑われた者を、何千人も殺害した。
それは、おそらく、ペンタゴン内部で漂いはじめた絶望感の現れであるか、今日の解決不能な問題を解決しようとして、過去に失敗した作戦を引っ張り出そうとする、よこしまな発想を際(きわ)だたせるものといえる。
アメリカがイラクで実行してきた占領の一手段としては、暗殺が採用されるのはサルバドル方式が初めてというのではない。
2003年6月にポール・ブレマーが合同軍暫定当局(CPA)を引き継いだあとの数ヶ月、バグダッドの大通りは暗殺部隊が暗躍した痕跡がいくつもあった。
この部隊による効果的かつ残忍な手口として、イラク・イスラム革命最高評議会(SCIRI)というシーア派政党の武装民兵組織であるバドル旅団からの引き抜きがある。
おおやけには知られていないが、サダム前政権の支配政党だったバース党の残った勢力に対抗するために、反サダムのさまざまな民兵の演じた役割は脱バース党に関する米国の秘密政策に垣間見られ、それはイラク人を汚い仕事に就かせた。
サダム・フセインに忠実なバース党員や、SCIRIまたはその同調者に対立する「罪」を犯したと告発された者を抹殺するSCIRIの仕業(しわざ)は、CPAが指揮する脱バース党政策の「ヤミ」の側面として注目を引いた。それは合衆国軍隊の特殊作戦部隊およびCIAによって組織された秘密作戦であった。
この殺人ゲームに登場するさまざまな役者すべてのなかでも、バドル旅団の民兵は抵抗するバース党員と戦ううえで最大の能力と意欲を発揮した。
CPAの秘密工作員から内部情報を入手し、バドル旅団の暗殺部隊がバグダッド市内および周辺で何十人ものバース党員を殺害した。
しかし、旧バース党員の暗殺は、平和なイラクを作るために何の効果もあげなかった。
アメリカのイラク占領に対する現在のレジスタンスは、バース党の公式の組織に創設されたのではなく、むしろ部族的および宗教的な動機が複雑に入り混じっていた。それは1995年以降、バース党の秘密の細胞組織に取り入れられた。
アメリカとその同盟者たるSCIRIが旧バース党員を服従させることに集中しているあいだに、レジスタンスは本当に草の根的な民族解放運動を形成し、大きな戦略プランはもっぱら旧バース党員が作っても、日々の戦術は部族長および地方の聖職者によって決定されているようである。
レジスタンスが成果を上げているのは、一つには、CPAの命令した脱バース党政策が失敗だったことによる。
その流れを変えようとして、ブレマーは脱バース党計画を撤回し、バドル暗殺部隊の降板を指示した。
しかしながら、この方針転換はイラク現地における現実の局面を変えることはできなかった。
バドル暗殺部隊から標的にされてきたスンニ派のレジスタンスは、激しい反撃に出た。自動車爆弾と待ち伏せによる暗殺を狙った作戦では、レジスタンスはアメリカ人占領者への協力者と見られるシーア(訳註:バドル旅団のことか)に対する作戦を遂行した。
政治的に動機づけられた殺人ゲームが始まったことで、米国はイラク内の勢力にしてやられたと気づいたが、それは理解できておらず、打ち負かすこともできないであろう。
サルバドル方式は数々の点で失敗である。まず第一にあげられるのは、そして最も重要なことだが、道徳的かつ倫理的な失敗である。
イラク・レジスタンスが採用している戦術を知り理解することは難しいけれども、直接的な暗殺ではなく離れたところからの待ち伏せ攻撃は、つねに、圧倒的に優位な軍事力を持つ外国占領者に対して、自由の戦士が採用する作戦であることを歴史が教えている。
そのようにして歴史は、第二次大戦でドイツに占領されたソ連とフランスのレジスタンスを祝福し、同時期に日本に占領された中国のレジスタンスを祝福し、何十年におよんだベトナムの民族解放運動を祝福した。ベトナムでは、フランスとアメリカが敗北しただけでなく、両占領国が南ベトナム人民に押しつけようとした正統性のない政府をも打ち負かしたのだった。
その一方では、被占領地の国民を征服するためにテロの手段に訴える占領国に対して、歴史は厳しい扱いをする。
フランスのレジスタンス戦士がドイツ軍の列車を吹き飛ばすことは素晴らしいことであるが、ドイツ軍が報復としてフランスの村を焼き払うことは受け入れられないのである。
歴史は結局、アメリカ占領軍と彼らが押しつけたイラクの傀儡政府を動揺させ打ち負かすイラクのレジスタンス活動を、正当なものとして叙述することになるだろう。
そして歴史はアメリカの占領を正義に反すると避難するだろう。それは拷問とレイプ、殺人を違法な侵略戦争を進める手段として認めることによって、アメリカ国民の理念と価値観を貶(おとし)めることになった。
倫理的な側面を脇においても、サルバドル方式は受け入れられずに、あっさり失敗するだろう。スンニ派を基盤とするレジスタンスに対抗するために、ペンタゴンは特別殺人部隊をクルドとシーアの「忠臣」のなかから募集すると提案している。
サダムが統治した30年間、バース党政府とその治安組織は、クルドとシーアの反対運動の内部にひじょうにうまく浸透していた。他方、シーアとクルドは、同様にスンニのなかに浸透することができた歴史を持っていないのである。
もしイラク侵攻後に議論の余地のない真実があるとするなら、それはイラクについてはアメリカ占領軍よりもはるかにイラクのレジスタンスの方が知悉(ちしつ)しているという事実である。
サルバドル方式は、もし実行されるならば、全面的な内戦の起動力となるであろう。CPAの後押ししたバース党員暗殺がスンニ派のレジスタンスを再構築し増強することを促したのと同じように、スンニ・レジスタンスの指導者を狙って米国の後押しするクルドとシーアの暗殺部隊の活動は、イラクにおける民族・宗教戦争の全面展開をあけて通すことになるだろう。
一人のアメリカ人として、アメリカの軍事作戦がイラクで失敗するのを支持することは難しい。失敗すれば多くのアメリカ兵に、そしてさらに多くのイラク人に、死傷者が生じることになる。
私は、一人のアメリカ人として、アメリカがイラクにおいて勝利を収め、完全な名誉と自国の安全を手に入れ、そしてイラクがわれわれの「解放」よりも良い国になる方法を期待してきた。
しかし、そんな期待はもはや手遅れである。
わが国は口実を偽ってイラクに侵略したばかりでなく、サダムとその仲間を宮殿から追放しアメリカ人占領者がとって替わることによって解放されるという考えを悪用した。アメリカ人占領者は悪名高かったサダムの監獄を使い続けたばかりか、廃止すべきだった虐待とレイプ、拷問を実行しつづけた。
この1年、急速に成長した大衆的な基盤のレジスタンスを掌握できない事態に直面して、アメリカの政策立案者にできる最善策が、テロをみずからの方式に採用することなのだ。それはさらに多くのイラク人を虐殺することによって、わが国民の道徳的な基盤をいっそう低下させるだけのことであり、制御できない暗殺部隊を支援することになる。
私は一人のアメリカ人として、良識と道徳心がワシントンで勝利し、サルバドル方式が始動する前に終了させられることを希望し、祈る。それができないなら、アメリカの後押しする暗殺部隊の計画が敗北することを期待する。それが現在の与えられた状況のなかで、私が抱くことのできる、最も親米的な感情である。
(スコット・リッターは、1991年から1998年までイラクに派遣された上級国連兵器査察官だった。現在は独立したコンサルタント。)
(ここに表明された見解は筆者自身のものであり、必ずしも編集者の立場を反映するものではなく、またアルジャジーラが承認したということでもない。)□□□□□ □■ □□□□□ □■ □□□□□ □■ □
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