【ねこまたぎ通信】

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TUP速報

無法状態。多発する誘拐。死の蔓延化。フセイン時代のほうがまだましだった!?
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 4月、米軍包囲下のファルージャに、人道救援活動のために入り、その帰路、地元のレジスタンスによる拘束を経験したオーストラリア人女性ドナ・マルハーンが、11月24日に再びバグダッド入りし、そこから送っている現地報告をお送りしています。無法状態となったイラク、疫病のように蔓延化する誘拐、そこに生きるイラク人たちは何を思うか。
                          (翻訳:福永克紀/TUP)
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ドナ・マルハーン 混乱の中の暮らし 誘拐

2004年12月9日

お友達の皆さんへ

レイスの家の近所には、自宅を売りに出している家庭がある。彼が言うには、広い庭つきの大きな美しい家で、その通り沿いでも一級ものだそうだ。
その家族が家を売ろうとしているのは、もっと高級な住宅街に移るためなどではない。
これは、誘拐された10歳の息子の身代金として要求されている5万ドルを支払うお金を作るための、窮余の家売りなのだ。
彼らだけが、そうなのではない。先月は、この界隈で一週間の間に5人の子どもが誘拐された。その前は、この近所で2人の子どもが誘拐されるなど、イラクではいまや誘拐が風土病のように広がっている。
国際社会と同じように、イラク人もイラクで多発している外国人誘拐事件では、それを非難し、論議し、分析し、嘆き悲しんでいる。でも、イラクの人たちにとって誘拐は他人事じゃない。
彼らは誘拐がどんなものかを体で知っている。違いはただ、彼らの誘拐の話はほとんどニュースにならないことだ。
外国軍によるイラク侵略のあと、法と秩序が破壊されてしまって以来、誘拐は犯罪集団の最も一般的で儲かる活動となってしまっている。
警察の推定では、バグダッドだけでも、いろいろな年齢層にわたって千人以上の子どもや大人が誘拐されているという。
私のイラク人の友人たちで、誘拐にあったことのある家族をまったく知らないものは一人もいないようだ。
犯人たちはずうずうしい。レイスのいる地区では、犯人たちが大通りにある店や会社に押し入り、一万ドルを要求し、支払わなければ子どもを誘拐すると脅したという。
もし、全額支払えなければ、犯人たちは目印にと店の入口の上に赤い十字を描く。店主の多くは一万ドルも用立てすることができず、やむを得ず店を閉め家族と一緒に逃げ出さなければならなかった。
私は、ショックと悲しみで呆然としたまま座って、この話を聞いている。
「どうやったら、そんなことが…?」
「こんなことは、侵略以降、当たり前になった」と、ハーディーがこともなげに言う。
「ここでは、もう法もなくなった。イラクは、だれもがやりたい放題できるところになった。
「犯罪集団の中には、自分たちの身を守るために警察と取引しているものまでいる」
レイスが言うには、たいがいの誘拐された子どもたちは、身代金の支払いで無事戻ってきたものの、その家庭が中産階級といえども生涯の貯えを手渡してしまって、今や貧困生活を送っているという。レイスはまた、期限までに身代金を払えなくて、10代の子どもが殺されたのを、何件か聞いているという。
「どこのだれがそんなことを…?」
法と秩序が破壊された結果、気の毒なことに、イラク人の親たちは子どもを一人で外に出すことは心配で仕方がない。ある親たちは、毎日子どもの登下校時に車で送り迎えができるようにと、仕事をやめてしまった。そうでなければ、子どもたちを全く学校に行かせない。
「これを止めるにはどうしたらいいの?」と、私はほとんど答えを期待もせず大声をあげた。
ハーディーは間髪をいれずに答えた。
サダム・フセイン
「なんですって?」と、この高学歴のシーア派青年が口にすることかと驚きながら聞きかえした。
フセインのころには、身の安全の心配なんかなしで一晩中外出していて、夜中の3時に歩いて家に帰ったりしたものだ。
「イグニッションにキーを差したまま、どこにでも自分の車をほったらかしにできた。今じゃ、おもちゃの車でさえ道にほっとけない、そんなことをすればなくなってしまう!
「私たちが、こんな暮らしをしたいと思うかね、監獄のような暮らしを?
「いいや、以前のほうがよっぽどいいね。
「サダム政権時代は、どうやれば家族を守れるか分かっていた、ルールははっきりしていたのだ。
「しかし今じゃ、愛する者が一歩家を出れば、いつその人を失うかびくびくしながら毎日を過ごさないといけない」
レイスとハーディーの気の滅入るようなこんな会話は、今現在彼らが生き抜いている誘拐や、法と秩序の壊滅や、常態化した暴力と混乱について、私が日常的にイラク人たちと話す多くの会話のひとつだ。
彼らに、誘拐される外国人についてはどう思うかと聞けば、いつでも悲しみと同情を伴った返答が返ってくる。
「誘拐された外国人やその家族には、たいへん同情します、彼らだって誘拐されて当然なわけではないのだから」と、レイスは言う。
「誘拐がどんなものか私たちは知っているし、誰もこの種の苦しみを味わうべきではないのです。
「私たちだって誘拐されるいわれはないのです。」

あなたの巡礼者

ドナより

追伸:ここでの誘拐の状況は、とても入り乱れて、暗くて恐ろしいもので、事態をうまくのみ込めるものではありません。ですから、私は分析したり解決策を提示したりしてみようともしません。今私にできると思えることは、イラク人の日常生活での一般的な会話を、ただ単に詳しくお知らせすることです。私には、彼らの意見をあなた方と共有することしかできませんが、あなた方自身で分析してみてください――そして、何か思いついたら私に教えてください。

追追伸:イラク人は、外国人誘拐がイラク抵抗勢力の手によるものとは信じていません、むしろお金目当ての犯罪集団がやっているだけだと信じています。マーガレット・ハッサンの事件もそうだと彼らは信じています。これには証拠の裏づけもありますが、また別の説を唱えるものもあります。ザルカウィイラク抵抗勢力の一部ではなく、イラク人には小さな影響力しかないのに、米軍占領下のイラクに引き寄せられた、他の主題を持った別の勢力だとイラク人は考えています。

追追追伸:ようこそ、最近メーリングリストに加入された皆さん! 心配しないで:時折、いいニュースもお送りします。過去のお話は www.groups.yahoo.com/group/thepilgrim (英語)でどうぞ。

追追追追伸:この数日間、メールを出せなく静かにしていてごめんなさい。しっかりと考えたり書いたりできないほどの悪い体験に打ちのめされていたのです。その体験は、イラクの誰とも何事とも関係はありません。むしろ、国外からのものです。私が強さと明晰さを取り戻せるように、祈ってくださればありがたく思います。

追追追追追伸:「愛こそが答え。きみもちゃんとそのことを知っているはず」――ジョン・レノン

                (翻訳 福永克紀/TUP)
原文:Lives in chaos - kidnappings
URL: http://groups.yahoo.com/group/ThePilgrim/message/132