【ねこまたぎ通信】

Σ(゜◇゜;)  たちぶく~~ Σ(゜◇゜;)

バグダッドから友へ

バクダッドのアメリカ人記者が友人に宛てたメール
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 ウォールストリート・ジャーナルといえば、米国を代表するメジャー新聞の一つです。そのバグダッド特派員が、友人にあてて書いた手紙が、チェーンメールとして世界中のネットをかけめぐっています。
 この個人メールには、記者本人の生々しい本音が書かれており、想像以上にすさまじいイラクの混乱が伝わってくるようです。

              パンタ笛吹・TUPメンバー
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バグダッドから友へ☆

                  ファルナーツ・ファッシーヒ
                  バグダッドにて 9月29日

 このごろ、外国人特派員としてバグダッドに駐在するということは、ホテルの一室に自宅軟禁されているようなものだ。私がジャーナリストになりたかった理由は、「世界をめぐり、異国の人々と交わり、特ダネを報じて社会に貢献したかった・・・」なんてことなんだが、今はもうそんなことはどうでもいい。

 ここの状況は、日に日にひどくなっていくばかりだ。ホテルの外は危なすぎて歩けない。友人の家をたずねて行けないどころか、コンビニで買い物も、レストランで食事もできやしないんだ。取材にも行けないし、人とも話せないし、英語もご法度だし、ダメダメダメ、できないことだらけだ。

 バグダッドに来て以来、危機一髪で命びろいをしたことが、もう何度もある。この前などは、車両爆弾がホテルのすぐそばで爆発して、私の部屋の窓がすべて割れたくらいだ。
だから、いまの私の望みといえば、あっと驚く特ダネをゲットすることではなく、ただただじっとしていて、自分とイラク人の助手が生き延びることなんだ。命があってのものだねだ、記事なんて二の次だ。

バグダッド市内だけで、この4日間に110人が殺され、300人が負傷した。イラク厚生省はそのガラス張りの公正さを印象づけるために、今まで暴力による死傷者数を発表してきたが、近ごろはその数がショックを受けるくらいに多いので、公表を止めたくらいだ。武装勢力による米軍への攻撃は、一日に87回にものぼるのだ。

 友人がサドル・シティーをドライブしてきたのだが、そこでは、若者たちが我が物顔で、自家製爆弾を道に埋めていたという。彼らはアスファルトを掘り起こし、爆弾を隠したあとに土をかけ、その上に古タイヤなどを置いて、そこに罠が仕掛けられていることを隣人に報せているそうだ。

また、サドル・シティーの大通りには10メートルごとに10個以上の地雷が仕掛けられており、友人はそれら地雷を避けながらヘビのようにくねくねと運転しなくてはならなかったという。

大通りに面した壁の裏側では、怒ったイラク人たちが、米軍車両が近づいてきたら地雷を爆発させてやろうと手ぐすねをひいて待っている。その辺はシーア派住民が住む地域だ。シーア派の人々は、イラクを開放してくれた米軍に感謝しているはずだったのに・・・。
われわれジャーナリストにとって、連続して起こる誘拐事件はもはや人事ではなくなっている。特に誘拐された米技術者が二人とも首を切られて殺されたのには参った。

彼らは高級住宅地に住んでいて、イラク人たちの好感を買うために、自分の家の動力発電機で起こした電気を無料で近所の人々に流していたという。その日も朝6時、米国人の一人が発電機のスイッチをいれようと外に出たところ誘拐犯に連れ去られた。
そして数日後、彼らのばらばら死体は、その家の近所に投げ捨てられていたのだ。私は米国大使館と米軍と外国人特派員とが誘拐について話しあうミーティングに参加した。そこでは、背筋が寒くなるような「誘拐の3ステップ」という話を聞かされた。

ステップ(1) 犯罪者があなたを誘拐する。

ステップ(2) 犯罪者があなたをファルージャにいる元バース党員に売る。

ステップ(3) 元バース党員はあなたをアル・カイダに売る。

・・・そのかわりに、アル・カイダから大量の武器とお金が元バース党員に渡り、またその一部が犯罪者たちに渡るという。

友人のフランス人ジャーナリスト、ジョージは一ヶ月前に、ナジャフに行く途中で誘拐されたが、いまだにその生死も分からない。

米軍が手際よくこの国から撤退できるとしたら、イラク国防軍や警察がその切り札になるって? そう、米政府は何百億円というお金を彼らの訓練に費やしたものね。

しかし毎週、イラク人警察官が数十人単位で襲われ傷ついていて、すでに700人が殺されてしまっているのだ。さらに、武装勢力側のスパイが、軍や警察の内部に深く浸透している。味方だと思って雇った人間の多くが、実はゲリラ側の兵士だったという問題は非常に深刻だ。米軍は訓練したばかりの三万人のイラク人警官たちに、六億円を分配して密かに解雇していたくらいだからだ。

こんな戦争、誰の得になっているというのだろう? 戦う価値なんてあったのだろうか? イラクでは、サダムは逮捕されたけど、アル・カイダが暴れまわるようになった。そんな状況で、アメリカがより安全になったなんて言えるのだろうか?

今日、教養のあるイラク人が私にこう言った。

「もしサダム・フセインが次の選挙に出馬することが許されたなら、彼は大多数の票を得るだろうね」・・・これは、本当に悲しいことではなかろうか?

「アメリカはすでに救いようがないほどこの戦争に負けている・・・」と言う人がいる。この奈落の底に落ちていく暴力の連鎖から、何かを救い出そうとするのは、もうとうてい無理のような気がする。

米国による間違った侵略が、混乱と重罪とテロの大魔神を揺り起こしてしまった。そしてその大魔神はもう、元のビンの中へは戻せないのだ。

28歳のイラク人技術者に、「この国で初めての選挙が来年あるけど、君は投票するのかい?」と聞いてみた。そして彼のこの答えが、イラクの現状のすべてを物語っているように思えた。

「選挙に行きたいやつがいるなら行くがいいさ。投票所に仕掛けられた爆弾に吹き飛ばされるか、さもなきゃあ、武装勢力に追いかけられて、米軍支援者だとののしられて殺されるのがおちだ。そんなリスクなんてとれないよ。えっ、何のためにだって?

 民主主義のため? 冗談がきついよ」

               ・・・友へ、ファルナーツより

           (抄訳・パンタ笛吹、TUPメンバー)

http://wsrblood.typepad.com/wiserblog/2004/09/iraq.html

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