【ねこまたぎ通信】

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日本 いまだ“占領国” 米軍 譲れぬ既得権

 普天間飛行場沖縄県宜野湾市)の米海兵隊所属の大型輸送ヘリ墜落事故は、日米地位協定のあり方を含め、「世界一危険な基地」普天間の早期返還の動きへと波及している。沖縄県民の怒りは強いが、事態をより深刻にしたのが、事故機に対する米軍の現場検証の拒否だ。なぜ米軍は事故原因究明で、日本側の関与を拒むのか。

 「私自身も現場には入れてもらえなかった」「日本はイラクではない。日本の領土であり、米軍が主権を持っているような状況はおかしい」。十四日、外務省沖縄事務所で会見した荒井正吾外務政務官はこう話し、不快感を表した。

 県警は十九日、沖縄国際大の墜落地点の現場検証を始めたが、機体は既になく、事故機以外の痕跡を調べるという異例のものだ。いまだに乗員の氏名すら分からない状態が続いている。

 墜落したCH53D大型ヘリは五月、岩国基地山口県)から普天間飛行場に移駐した機体だった。

 米軍によると、事故機はハワイのカネオヘベイ基地の第二六五海兵中型ヘリ中隊所属。同中隊の三ヘリ部隊のうち一部隊のCH53D八機と兵員約百八十人が二〇〇二年二月、岩国基地に移駐したという。

 米軍基地を抱える都市の市議ネットワーク「追跡!在日米軍・リムピース」のメンバー、田村順玄・岩国市議がその経緯を話す。

 「9・11同時多発テロの二カ月後、防衛施設庁が同ヘリの配備を岩国市に通告してきた。テロ即応対策として緊急輸送体制の確保が、その理由だった」

 普天間移駐を事故で初めて知ったという田村氏は、背景をこう推測する。

 「普天間基地には改良型のCH53E部隊が配備されてきたが、アフガンやイラクなど軍事情勢の変化を受けて太平洋上の訓練に出動。その穴埋めに普天間に移駐した可能性が高い」

 CH53Dは製造後三十年以上経過した老朽機だ。同ヘリ部隊はかつて「空飛ぶコンボイ(トラック集団)」と呼ばれ、戦闘部隊が必要とする物資すべてを輸送してきたが「すでに戦地で使える代物ではない」(軍事評論家の神浦元彰氏)。

■沈黙状態にさまざまな噂

 常識的には、軍事機密の部分があるとも思えない同ヘリの検証を拒む理由とは何だろうか。

 田村氏は「米軍は日米地位協定で確保された既得権を守ることが第一だ。今回、日本の警察権を認めてしまうと、日本国内で自由に行動できるオールマイティーの権利が侵される。米軍が安易な妥協ができないのは当然だが、日本はいまだに事実上の占領国ということだ」と解説する。

 一方、神浦氏は「米軍基地がある地域の土壌はダイオキシン類で汚染される場合が多い。現地では『(汚染土を)海上投棄するために事故機で運搬していたので、米軍が隠ぺいを図った』という見方や、現場検証などで米兵がガイガーカウンターを持っていたという話から、『劣化ウラン弾を海中投棄目的で搭載していたのでは』との推測まで出ている」と打ち明ける。

 これに対し、地元関係者は「何か危険物を運んでいたのではないかという声は県議会でも出たが、根拠はない。米軍が何も言わないからいろいろな噂(うわさ)も出るのだろうが」と話す。

 米軍は事故の翌々日から訓練を再開している。

 田村氏は「日米体制は過去にないほど緊密で、米国の軍事戦略の枠組みに日本は組み込まれている。日本政府が弱腰なのは当然だ」と切り捨て、こう続ける。

 「小泉政権公共事業締め付け政策を進めるが、在日米軍基地整備など“思いやり予算”は聖域扱いで、ゼネコンが絡んだ利権の温床になっている。例えば岩国基地拡張工事では、約三千億円の予算投入が見込まれる。普天間から移設が予定される名護市辺野古事業でも同額の予算が必要だ。米軍の陰でうまい汁を吸う政治家は何も言えない」

 では、一体、今回の墜落原因は何なのか。

 元「航空ジャーナル」編集長で評論家の青木謙知氏は「機体の姿勢を保つための尾部の垂直安定板が折れているが、これは非常に丈夫でミサイルを撃ち込まれない限り壊れない」と指摘し、「この板と一緒に機体のかじ取りの役割を果たすテールローターが失われ、コントロール不能に陥ったのでは」と推測する。

■熟練整備士は争で前線?

 「CH53D機はベトナム戦争にも投入された輸送用ヘリだが、古くなっても規定の整備手順で点検が行われていれば航行に差し支えがない。状況から、テールローターの不安定な回転の振動で垂直安定板に亀裂ができたり、腐食が発生していた可能性があるが、整備時の見落としや、変な傷を付けてしまったからかもしれない」との見方だ。

 同じく航空評論家の関川栄一郎さんは、一九七七年九月、厚木基地を飛び立った米軍のファントム偵察機横浜市内に墜落し、親子三人が死亡した事故を引き合いに出し、「これもエンジンをオーバーホールした際、めちゃくちゃな組み立て方をして飛行中に出火したのが原因だった。今回の墜落は(1)整備不良(2)鳥の衝突(3)電線への接触−などが考えられるが、イラク戦争で一線級の整備士が前線に出向き、普天間に熟練者が少ないという可能性も要因として考えられる」と、米軍の機体チェック態勢に疑問を投げかける。

■同様事故でも独は現場検証

 米軍側は現段階での原因について「機械的な不具合」とだけ発表、機体の検証は拒否したが、各国事情はどうなのだろうか。

 青木氏は「欧州では北大西洋条約機構NATO)軍のつながりもあり、ドイツでは同様の事故で警察が現場検証できる。しかし、韓国は日本と同様に制限される。日米地位協定が不平等のまま放置されてきたことこそ問題」と強調。関川氏も「横浜の墜落事故でもパイロットの事情聴取はまったくできなかった。三十年近くたっても事態は変わっていない」と嘆く。

 普天間飛行場を抱える宜野湾市は市の25%が基地で占められている。

 事故対応に追われる同市基地渉外課の担当者は「基地所属のヘリ五十六機中二十機がイラク戦争に配備されていると米軍の外交政策部から教えてもらったが、今回の事故機はローテーションで各基地をまわっており、もともと、どんなヘリが何機ここにあるのかさえ分からない」と説明しながら、「事故の原因」である基地の早期返還の願いを込め、こう訴える。

 「復帰前の五九年六月、石川市の小学校に米軍ジェット戦闘機が墜落、児童十一人を含む十七人が死亡した。基地を抱え込むように住宅があるこの街では、パイロットと目が合うくらいヘリとの距離は近い。事故後は、飛行機の爆音を聞くだけで胸が締め付けられると訴えてくる市民もいるんです」

東京