【ねこまたぎ通信】

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緊迫情勢続く民族紛争−スーダン西部のダルフール地方

国連「世界最悪の人道危機」

 アラブ系民兵による黒人住民への残虐行為が問題となっているスーダン西部ダルフール地方の民族紛争は、虐殺やレイプ、略奪、放火などが横行し、依然、緊迫した情勢が続いている。国連や米欧等、国際社会から紛争終結を求める声が高まる一方で、スーダン政府の対応は鈍く、事態好転の兆しは見えていない。
ヨハネスブルク・長野康彦)

米欧が制裁発動警告、軍事介入も視野に

アフリカ連合の限界露呈

 スーダン政府の後押しを受け活動しているアラブ民兵ジャンジャウィード」による黒人住民への虐殺行為が表面化したのは昨年初め。南部の黒人住民が「政府は南部を無視し、黒人系国民を抑圧している」として不満を募らせるとともに、国内で二十年以上続いた南部の非アラブ・キリスト教徒と政府イスラム勢力との紛争が、一昨年の和平合意で終息に向かっていることに不公平感と焦りを感じた西ダルフールの非アラブ・イスラム反政府勢力が武装蜂起したことが発端とされる。政府はアラブ民兵を組織して鎮圧に向かわせ、空軍機で村々を空爆したり、農村を焼き払うなどの焦土作戦を展開、鎮圧のみならず、南部の黒人系国民の抹殺に乗り出した。
 国連の発表によると、これまでおよそ三万人から五万人が死亡、百万人以上が現在も避難民生活を余儀なくされている。

 今月初め、パウエル米国務長官やアナン国連事務総長が相次いでスーダンを訪問し、政府に圧力を掛けた結果、スーダン政府はアラブ系民兵武装解除を約束した。しかしその後も残虐行為は続き、人道被害は拡大しており、実際、スーダン政府による適切な対応は取られていない状況だ。

 事態を憂慮した米欧は、スーダン政府に民兵武装解除など、紛争終結への努力が見られなければ、制裁を発動すると強く警告。軍事介入も視野に入れた対応を検討しているが、これにスーダン政府が強く反発し、「武力には武力で対応する」と態度を硬化し始めている。

 国連や米欧が同問題解決に積極姿勢を見せているのは、九四年、同じくアフリカで起きたルワンダ大虐殺の苦い教訓があるからだ。今回、英国のブレア首相はいち早く、軍事介入も視野に入れた制裁発動を表明した。米国はスーダンを「テロ支援国家」に指定しており、スーダンへの制裁は決して新しいものではない。スーダンは以前、ウサマ・ビンラディンが滞在していたことなどからテロ組織との関係も深い。九八年に起きたケニア・タンザニアの米大使館同時爆発テロ事件の報復措置として、クリントン政権スーダン国内のテロの拠点とされる地域に巡航ミサイルによる軍事攻撃を行ったことも記憶に新しい。

 スーダンは北部を中心にアラブ人が総人口の75%を占めるイスラム国家で、南部にはキリスト教を信奉する黒人住民が多い。アラブ遊牧民と黒人農耕民との間では、何年にもわたって衝突が繰り返されており、両民族間の対立は積年の問題。国連や米欧の介入は人道危機回避を目的としているが、イスラム軍事政権国家であるスーダン国内では、スーダン政府に圧力を強める欧米キリスト教諸国に対し、宗教的反発も出始めており、「欧米が軍事介入すればイラクと同じになる」(政府筋)と、警戒心を強めている。

 一方、アフリカ諸国の対応は鈍い。アフリカ連合(AU)は今月初め、エチオピアで行われた首脳会議で、ダルフール紛争への対応策として、AUとしては初めてとなる平和維持部隊の派遣を決定した。派兵に名乗りを上げたのはナイジェリアとルワンダ。しかし規模が三百人程度と少なく、フランスほどの大きさもあるダルフール地方をカバーするには小規模過ぎるため、その効果を疑問視する向きも多い。

 AUはスーダン政府や民兵、反政府勢力など利害関係者を話し合いの場に引き出す努力を続けているが、成功しておらず、「アフリカの問題はアフリカ諸国で解決する」(ムベキ南ア大統領)との掛け声も、もはや絵に描いた餅(もち)になりつつある。

 ダルフール紛争はある意味、AUの紛争解決能力をはかる試金石とも言えるが、早くもAUの限界が露呈した形で、結局は欧米の介入は避けられない状況だ。

 国連安全保障理事会では、制裁発動を盛り込んだ決議案の採択に向けた努力が米国を中心に続けられたが、イスラム諸国や中国などの反対で、「制裁」の文字は削られた。三十日には採択される見通しだが、ダルフール地方では依然として治安好転の兆しは見えず、人道危機回避に向けた国際社会の一致した行動が緊急に願われている。