【ねこまたぎ通信】

Σ(゜◇゜;)  たちぶく~~ Σ(゜◇゜;)

解放待ちわびる家族に長い1日 情報が二転三転

 一刻も早く無事な姿を見たい。イラク人質事件は、11日未明に「24時間以内に解放へ」のニュースが飛び込んできた後、情報が二転三転し、3人の元気な姿を待ちわびる家族を翻弄(ほんろう)した。「ぬか喜びはいけないと思い、こらえています」。犯人グループが当初、期限とした3日間が過ぎた。疲労の中、家族はまんじりともせずに次の朗報を待ちつづけた。
 11日午後8時半すぎ。犯行グループが期限に指定した午後9時を前に、家族たちは東京・永田町の北海道東京事務所玄関で報道陣に訴えた。
 「あと20分です」
 高遠菜穂子さん(34)の弟修一さん(33)は、かすれそうな声で「助けてください。お願いします」と繰り返した。疲れ切った表情だった。
 午後5時過ぎ、家族は首相官邸へ向かった。全国から集まった約15万人分の署名を届け、早期救出を訴えるためだった。
 官邸には入れず、道路を隔てた内閣府の玄関ロビーで内閣官房の担当者が応対した。今井紀明さん(18)の父隆志さん(54)は「何とか私たちの声を首相に聞いてほしい。これだけの署名があるんです」。
 犯行グループが指定した「期限の日」の午前3時に突然飛び込んだ「朗報」。だが、3人の姿を確認できないまま時間が過ぎた。喜びもつかの間、家族たちは不安といら立ちを募らせた。
 「状況は何も進展していない。一刻も早く家族の無事な姿を見せてください」。高遠修一さんは、午後2時に開いた記者会見で泣き崩れ、頭を深く下げた。
 今井さんの母直子さん(51)は「ぬか喜びはいけないと思って、こらえて待ってます。でも、どこからも確実な情報は入ってこない。本当に戻ってくるのでしょうか」と声を震わせた。父隆志さんがその背を支えた。
 郡山総一郎さん(32)の母きみ子さん(55)は「正午までには元気な姿を見られるのかな、と楽しみにしていた。頑張らなきゃと思うんですけど、自分がくじけていく」と泣きながら話した。
 「解放された」「無事を確認」といった未確認情報も錯綜(さくそう)した。
 「あまりに情報が多すぎて混乱している」と高遠さんの妹の井上綾子さん(30)。郡山きみ子さんも「これって本当かな、本当なのかな、とずっと裏切られている」といら立ちをのぞかせた。家族たちは「外務省の公的な見解や(解放された)映像が流れるなど確実な情報が入るまでは……」と自分たちに言い聞かせるように話した。
 深夜には「未明の朗報」をもたらしたカタールの衛星テレビ局アルジャジーラが、犯行グループに接触したと主張する人物が人質の殺害予告ともとれる内容に言及した、とのニュースを流した。家族は12日未明、改めて会見し「日本政府には、改めて自衛隊の即時撤退を求めたい」と厳しい表情で語った。
 「3日間」という期限が迫るなかで、事態が急変したのは11日午前3時前だった。
 カタールの衛星テレビ局アルジャジーラの「解放へ」の報道を受け、同事務所で眠らずに待機していた家族たちから一斉に歓声が上がった。互いに抱き合い、涙を流したという。何人かは窓際まで出てきて、外にいた報道陣に向かって手を振り、「ありがとう」と笑顔を見せた。
 外務省からは午前4時すぎ、アルジャジーラの報道内容などを知らせるファクスが届いた。
 記者会見は午前5時。家族らは「世界中の人々に混迷、困惑をもたらしてしまったことを心からおわびします」と頭を下げ、「劇的に状況が良くなったことに心より感謝します」と再度、深く頭を下げた。
 安堵(あんど)の気分が広がる中、高遠修一さんは、アルジャジーラの報道以外の情報がないことに触れ「事件は解決していない。今後も首相への面会を求め続ける」と話した。言葉が暗示したとおり、解放の確報は「期限の日」には届かなかった。
 北海道千歳市高遠菜穂子さんの自宅では明け方から、両親がテレビに見入った。未明には「ひとまず安心」とほっとした様子で語ったが、その後は取材を断り、外務省などからの連絡を待ち続けた。夜が明け、昼が過ぎ、夕方には親族の一人が、報道陣に「はっきりするまでそっとしておいてほしい」と伝えた。
 札幌市西区今井紀明さんの自宅前に集まった報道陣には、夜9時すぎ、祖母の花田千鶴恵さん(83)に付き添う知人女性が「チャンネルをかえながらテレビに見入り、『無事解放』の知らせを心待ちにしている」と千鶴恵さんの様子を説明した。
 宮崎県佐土原町郡山総一郎さんの弟、洋介さん(28)は11日午前3時40分、上京中の母きみ子さんから「解放へ」の連絡を受け、「早く帰国して、母と祖母を安心させてほしい」と語った。確報はなかなか届かず、同日夕、家族を気遣う関係者は「新たな情報がなく、家族はいらだっているようだ」と話した。 (04/12 01:19)

●イマジネーションのない連中に情報収集能力などあるはずがない。