【ねこまたぎ通信】

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緊急医薬品の運搬さまたげる軍の「官僚主義」 クリスチャン・エイドのイラク報告

 【TUP速報=ベリタ通信】イラククウェート国境に拠点を置き、イラクへの援助活動を続けている「クリスチャン・エイド」救急隊の幹部であるドミニク・ナットさんは、イラク南部で続く深刻な水不足の状況とともに、援助物資搬入の妨げとなっているアメリカ、イギリス軍の「官僚主義」を嘆いている。
 ナットさんがクリスチャン・エイドの本部などに寄せた4月17日付の現地報告の内容は以下の通り。

 私たちは、イラク南部バスラの数マイル南にあるいくつかの町の給水事情を調査してきた。イラクよりは物資の豊富なクウェートで、デスクに向ってこの報告を書きながら、失望を抑えきれない。

 クリスチャン・エイドは、今日、イラク側の仲間の団体、イラク難民援助評議会とともに、インシュリン、酸素マスク、麻酔剤など、救命に必要な医薬品を、バスラ市中心部に運ぶ予定だった。
ぜひとも必要な物資だ。電力はストップし、要冷蔵のインシュリンが暑さで腐っているのだ。今週は麻酔なしで切断手術を受けた子どもがいた。

 米英軍幹部やクウェートの役所と何日も口論したあげく、医薬品持ち込みの許可証を持っていないからだめだと言われた。我々は危険があってもバスラに行くつもりだし、市民は医薬品を必要とするのに。

 意図的妨害ではない。米軍も英軍も援助に最善を尽くしている。彼らも、市民が楽に医薬品や水を得られるようになれば治安が改善されるということは理解しているはずだ。それなのに、我々はいくつもの書類を手に入れ、スタンプを捺させるのに悪戦苦闘させられる。こうしている間もバスラとその周辺の緊急を要する状況は続いているのに。

 でも昨日は成功だったと言っていいと思う。ノルウェー・チャーチエイドとともに、以前水袋を設置したことのあるズバイルという街に行った。水袋とは、水を入れる大きな袋で、地域で利用する給水塔につないで使用する。

 我々は水袋を市民に自由に使わせると、盗まれり壊されたりするとの警告を受けたが、市民は水を大事に使い、略奪から守っていた。やはり、適切に配分すれば救援物資は治安を良くするのに役立つようだ。

 私には、ピカピカのクウェートから荒れはてたイラクに入った時が一番ショックだった。国境線を越えたとたん、破壊された建物、すりきれた服を着た子供たち、全体的衰弱に遭遇する。

 海外援助隊員は、子どもたちに取り囲まれることには慣れている。勇気のある子が食べ物や金をくれと言う。いつものことだ。

 イラク南部でも、そうだった。だが、彼らが求めたものは、お金や食べ物ではなく、水だった。

 南部の水道設備は何十年も前に寿命が来ており、多くは略奪者たちによって破壊されている。かろうじて動いている設備は負荷がかかりすぎて、今にも壊れそうだ。

 例えばバスラには4基の給水施設があり、60マイル離れた港町のウムカスルに水を送っている。1箇所は数ヶ月前、1箇所は1週間ほど前に壊れた。残るのは2箇所だが、電力供給がなく、代替発電機が1基しかないので、1箇所しか動いていない。

 我々は明日は、治安状況を把握できていないが、バスラに行くつもりだ。医薬品の輸送団を迎え入れついでに、バスラの主任水道技術者と落ち合い、水質浄化プラントの図面をもらい、クウェート国連の技術者に返却できるようにする。

 うまくいけば援助できると知るのは嬉しいが、同時に、待ち受けている膨大な課題を思うと気持がめげそうにもなる。
(翻訳 中西仁美 萩谷良)

*クリスチャン・エイド イギリスの代表的な援助団体のひとつで、アフガニスタンでの人道活動やアフリカのエイズ孤児援助など、幅広く援助活動を展開している。