【ねこまたぎ通信】

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アジアで広がるイラク戦争反対運動

国情の違いで運動規模などに温度差も

今後の課題は市民ネットワークの構築

11/04/2003

 国連安全保障理事会の決議なしに突入した米英軍などによるイラク戦争に対し、世界各地で様々な反戦行動が繰り広げられている。そうした中で特徴的だったのが、アジア地域での反戦運動が、欧州主要諸国でのそれに比べ、規模が小さく、アジアの反戦活動家たちが運動を盛り上げるのに苦労する場面が見られたことだ。その背景にはアジア諸国の多くがこうした運動に不慣れであることに加え、自国が抱える難しい政治・文化的要因がある。
 【マレーシア西部ペナン島IPS(アニル・ネットー記者)】欧州諸国で盛り上がるイラク戦争への反対運動を横目に、アジア諸国の反戦活動家たちは、自分たちの運動の規模が小さく、今ひとつ大きな盛り上がりに欠けることに焦りを感じている。

 反戦活動家集会がこのほど、マレーシア西部ペナン島で開かれ、参加したアジアの活動家たちの多くがその焦りを口にした。様々な意見が出される中、共通して指摘された要因は「アジア地域はまだ反戦行動・運動に慣れておらず、その上、各国が難しい政治、文化的状況を国内に抱えているため」だった。

 韓国からパレスチナイラク、そしてアフガニスタンからインドネシアまで。中東も含めた広い意味のアジア地域を眺めて見ると、そこでは実際に紛争が起き、長年の間、緊張が続いている状況がある。それだけにアジアの活動家たちは今回、米軍主導の軍隊がイラクに攻め入った状況の中、「米軍の対テロ戦争」「米軍の覇権主義」に対し危険なにおいを嗅ぎ取っている。

▽次は北朝鮮の核問題

 そうした中、韓国ほど緊迫した状況に置かれている国はないだろう。イラク戦争が終われば、次に世界の関心を集めるのは北朝鮮の核開発問題との見方が広がっているからだ。

 「つい最近まで、韓国での社会運動は在韓米軍の基地問題やグローバリゼーション(地球規模化)、南北朝鮮統一問題に目が向けられていた。つまり、米国による干渉や米軍絡みの問題が取り上げられてきたのだ」と指摘するのは、1万3000人の会員を抱える非政府組織「民主政治参加に向けた国民団結」で事務次長を務めるフランシス・リーさんだ。

 リーさんは「韓国での社会運動のほとんどは南北統一問題、北朝鮮との軍事衝突回避に関係している。多くの者たちが、米国の干渉を南北平和統一の阻害要因の一つともとらえている」と続ける。

▽韓国では「構造的制約」が足かせに

 韓国国民の約85%がイラク戦争に反対しているとした上で、リーさんは「韓国政府はこの戦争で米国を完全支持しているわけではない。問題なのは支持せざるを得ない構造的制約なのだ」と分析する。

 「構造的制約」とは米国との相互防衛条約などを指し、米国は侵略戦争を禁止している韓国憲法を無視しているという。

 リーさんによると、イラク戦争への反対運動を行ったのは、活動家たちだけでなく、若者たちもコンピューターのインターネットを通じて反戦の輪を広げたという。

▽日本では「ねじれ現象」

 隣国の日本では「ねじれ現象」が起きた。国民の70%以上がイラク戦争に反対しているが、同時に、戦争を開始した米国を支持する小泉政権への支持率が50%に達したからだ。日本の政治評論家の1人は「若者たちが街頭に出て反戦を叫ぶなど、反戦運動に質的変化が見られる。こうした運動は過去20年間、全く見られなかったものだ」と指摘している。事実、何千人という高校生が自らの考えで、反戦の街頭行動に初めて参加したのだ。

 香港のケースを見てみよう。ここでは通常、安保問題は運動の対象にはならないが、イラク問題に関しては今年2月15日の国際反戦行動に合わせ、1000人の市民がデモ行進した。これに鼓舞されたのが反戦活動家たちだった。

 香港では現在、ナゾの肺炎「重症急性呼吸器症候群」(SARS)の流行が重大問題となっているが、イラク戦争反対の声は消えることなく、依然として高まっている。その中心となっているのが労働者、教師、学生ら多様な者たちで構成する「戦争反対連合」だ。活動家の1人は「SARS問題で厳しい状況でも、戦争に反対する人々は怒りを表している」と強調する。

 インドでも7000人の市民が参加した反戦デモが、ニューデリー市内にあるアメリカンセンター前で、無許可のまま行われた。

反戦意識の中に残る「迷い」

 アジア地域でのこうした一連の反戦行動・運動について、集会に参加した反戦活動家たちは「どこの国でも戦争に反対する人は多いのに、デモ参加者は予想より少なかった」と驚きを隠さない。

 これに関して、学者と活動家が組織する「アジア地域意見交換会議」のセティ議長は「アジアでも戦争肯定派は極めて少ないが、国によって反戦への表現に温度差があるためだ」と説明する。

 その要因のひとつが、反戦感情があっても、デモで状況を変えることが可能なのかという迷いであり、もうひとつが、反戦運動が独裁者フセインイラク大統領)を利するのではとの躊躇だという。

▽ 「挑戦は始まったばかり」

 内戦が未終結のスリランカでも、イラク戦争に反対する声は強い。農園労働者たちを支援するグループに参加する僧侶のひとりは、「スリランカの政治家たちは二枚舌を使っている。イラク戦争には反対を表明しながら、気持ちの中では対抗するタミル勢力との内戦が続いてほしいと思っているからだ」と批判する。政府は同勢力へ自治権付与を遅らせたいため、内戦が続いていたほうが都合がいいのだという。

 それでもスリランカでは主要都市コロンボの市民2000人が街頭に出て、イラク戦争反対を叫んだほか、他の地方でも独自の方法で反戦を訴えた。

 アジアの場合で最大の問題は、個々の国で見られる市民の間の反戦運動を、言葉の違いや、政治情勢の違いを乗り越えて、どう連携させるかだ。集会参加者のひとりは「アジア市民の反戦運動をひとつにする挑戦は始まったばかりだ。アジア市民のネットワークを構築し、イラク戦争反対の動きをさらに活発化させる必要がある」と話している。