【ねこまたぎ通信】

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活用されない比のODAプロジェクト

潤うのは外国人コンサルタントだけ?

援助国側への高まる厳しい目

援助する側の国が、プロジェクトの進行具合など援助を受ける側の仕事ぶりを監督するのが政府開発援助(ODA)の常識とされてきたが、援助を受ける側が援助国に不信を抱いた時、それを問いただす権利があってもいいのではないか。そのような問題提起が最近のODAをめぐる会議では出るようになった。ODAによる公共施設が完成しても、活用されていないものが多いとされるフィリピンで、ODAをめぐる最近の議論を紹介する。
【マニラIPS(マリテス・シソン記者)】ODA資金を外国から受けている側が、資金の使われ方を援助国側にただす。2001年7月、フィリピンのアキリノ・ピメテル上院議員が従来の慣習にはなかった問題提起をし、政府アドバイザーなどとしてODAプロジェクトに従事している外国人コンサルタントの給与を公開するよう迫った際に、援助国側は不意打ちをくらったような驚きを感じたようだ。
ピメンテル議員の要求は、援助国側にかなりの不快感を与えたと思われるが、このほどマニラで開催された援助の質に関する会議における討論では、同議員の問題提起と同様の要求が多く上がり、中心議題の一つに浮上した。
野党のベテラン政治家であるピメンテル上院議員が、この問題を取り上げたのは、政府開発援助(ODA)額の中のかなりの割合が外国人コンサルタントの給与に割り当てられており、その給与がフィリピン側からみると「大変な高額」と映るためだ。貧困削減をめざすプロジェクトなど、本来、貧困層に行き渡るべきODA予算の相当部分が、コンサルタントという肩書きの外国人に還元されてしまっているのではないかという告発だった。
ピメンテル議員は、地方自治長官などと務めたベテラン議員。ODAプロジェクトが失敗した実例を実際にいくつも見てきた体験を踏まえて、このような問題提起をしたようだ。
ODAをめぐっては、むしろ援助国側が、プロジェクトの透明性を求めるようになってきているのがここ数年の傾向だ。
国連開発計画(UNDP)のステフェン・ブラウン氏は、マニラで開催された能力開発に関するシンポジウムにおいて、「私たちは援助する側として謙虚にならなければならないし、私たちが供与してきた援助のうち生産的でないものが少なからずあったということを認めなければなら
ない」と語っている。
シンポジウムでは、援助の効率や援助からもっとも恩恵を被っているのは誰かという問題に関して、援助する側と受ける側からそれぞれの率直な意見が表明された。
フィリピン予算省のエミリア・ボンコディン長官は「開発の名前においておこなわれている痛みをともなう大失敗」の例をいくつか挙げた後、融資のいくつかは「差し迫った必要性を無視したもので、非生産的な結果しかもたらさなかった」と指摘した。またボンコディン長官は、開発プロジェクトの「所有権」の問題について言及し、外国人コンサルタントがやってきてプロジェクトを「監督(支配)する」と、地元の状況にあわない解答を出してくることがしばしばあると指摘した。その一例として同長官は、外国人コンサルタントが「公共サービスの費用を引き上げる一因ともなる新しい技術を導入しようとする傾向がある」ことをあげた。
途上国政府側は、外国人コンサルタントはもっと途上国側の実情を理解するよう努めるべきであると主張する。
国家経済開発庁(NEDA)によれば、2000年以降、米国や日本など援助国がフィリピンに対して実施したODAのうち、無償援助および技術援助として供与されたのはわずか8%にすぎない。また融資や無償援助は往々にして、外国人コンサルタントの採用や援助国から物資やサービスを購入するといった条件が援助国からつけられた「ひもつき」援助である。
しかし、会議で援助国側は、ODAの受益者に一定の「行動倫理規準」を採択するよう求めるなど、援助を受ける側への不満を示し、「与える側」と「与えられる側」の認識は対立したままだった。
NEDAの公共投資部門の専門家の一人ジョナサン・ウィー氏は、自らの報告書の中で「援助を受ける側が自らの必要性を特定する十分な能力を持っていないため、援助をする側やコンサルタントが、もっぱらプログラムを立案、実施を管理する進行スケジュールを作っていること」が問題と指摘している。
フィリピンでは援助する側が主導権を握った結果、「惨憺たる援助の遺産」として知られているものに、1970年代に着工されたバタアン原子力発電所(その後、建設計画は中止)の例がある。
非政府組織の「モードInc」は、2001年に出版した本「ODAの理論と実践における教訓」の中で、バタアン原子力発電所について、原発をフィリピンに作るという計画の背後には、米国内で低迷していた原子力産業を蘇生させる目的があったと指摘している。
マルコス独裁政権下で着工されたこの原子力発電所は、安全性が保証できないという理由でお蔵入りとなったが、フィリピンはその負債をいまなお支払い続けている。
UNDPのブラウン氏は、「融通性をはたらかせることが重要であり、外国の専門知識よりも地元の知識を重視する手法が大切である」とのボンコディン予算庁長官の意見に同意を示したうえで、「法的、財政的に好ましい環境が存在しなければ、援助は単なる浪費になってしまう」と述べている。
ODAによるフィリピンでのプロジェクトは、援助内容を消化するためのフィリピン側の地元予算不足や汚職、さまざまに発生する法的問題、治安・秩序の揺らぎなどによって立ち往生し、少なからず中止においこまれてきた。このため援助国側からは「援助のしがいがない」とフィリピン側を非難する声も聞かれる。しかし、地元英字紙「マニラ・タイムズ」は、フィリピンがこれまで受けてきたODAで建設された公共施設などのうち「実際に活用されているのははわずかにすぎない」と指摘している。さらに「認可済でありながら、プロジェクトが進行しないため、ODA資金はいくつかの銀行口座の中で眠ったままの状態にあり、悲しいことに、フィリピン政府はその進行しないプロジェクトのために、毎年、何らかの予算支出を強いられているのだ」と報じている。

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