【ねこまたぎ通信】

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独善的な世界戦略を推し進めるアメリカにアジア諸国が一石を投じました.^^

インタープレス
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人口政策で米政府に痛い黒星 アジア諸国が団結し影響力排除

背景に単独行動主義への懸念 バンコクで開催の域内人口会議

米ブッシュ政権の単独行動主義は人口問題でも大きな波紋を広げている。国内の中絶反対派を強く意識し、人口問題の中心にリプロダクティブ・ヘルス/ライツを据える世界的な流れに立ちはだかっているからだ。だが今回バンコクで開かれたアジア太平洋人口会議では、参加各国の一致した反対に遭い、米国の主張は通らなかった。域内各国が見せた今回の団結は、米国の強引なやり方に押される他の地域を勇気付けることになるのか。それとも米国の勢いを押しとどめるには不十分なのか。会議の動きを報告する。

バンコクIPS(マーワーン・マカン・マーカー記者)】
12月11日から17日までバンコクで開催された「第5回アジア太平洋人口会議」(APPC)に出席した30以上のアジア太平洋地域諸国は、20001年9月11日の「米中枢同時多発テロ事件」以降の国際政治情勢の中で困難さを増す作業をやり遂げた。米国の政策が現実離れしていることを明らかにしたのである。

▽団結したアジア諸国

米国代表団は、アジア太平洋地域の行動計画を盛り込んだ20ページの最終文書中に記された2項目に会議の最後まで反対し続けた。
参加国の決意がより固くなったのはこの2点について、米国が異例とも言える採決を求めた時だった。
国連筋によれば、採決の実施は前代未聞だという。こうした会議の場では通例全会一致を目指すからだ。議論の的になったのは最終文書中の「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」(性と生殖に関する健康/権利)と「思春期のリプロダクティブ・ヘルス」という言葉づかいだった。
30カ国以上がこの表現に賛成し、反対は米国のみだった。ネパールとスリランカの2カ国が棄権した。アジア太平洋諸国側の勝利が鮮明になったのはこの瞬間だった。
米代表団は、HIVエイズジェンダー間の平等に関する域内方針など、その他の部分についても、会議終了前日の夕方まで反対を続けたが、最終的には支持に回った。
政治的な論争が会議中に続いたことを考えれば、最終的には素晴らしい成果が得られたと国連人口基金(UNFPA)のオベイド事務局長は話す。「とても満足している」と同氏。
また同様に域内のリプロダクティブ・ヘルスに関する政策をまとめた行動計画も「骨抜きにされなかった」とし、1994年の国際人口開発会議(ICPD、カイロ会議)で合意された政策に触れ、アジア諸国は「ICPDを支持している」と述べた。

▽米国の強硬姿勢に反発拡大

南アジアのある国の代表団は「とても意義深い。我々の地域の政策を作ろうとする米国の試みを一致して拒絶できたからだ。米国はこうなった理由を詳しく分析せざるを得ないだろう」と話した。
そして「交渉時の態度を見れば、米国側が我々に影響力を行使する気でいたことは明らかだ。アジア側の一致団結した姿勢にはね返されるとはおそらく思っていなかっただろう」と続けた。
NGO「人口計画管理に関する国際評議会」(本部クアラルンプール)の政策担当上級顧問のカビル氏は、ブッシュ政権がリプロダクティブ・ヘルス医療/ライツに関する世界的な合意事項を改変しているが、会議の結果はこうした米国の傾向に反対するアジア域外の動きへの刺激となると見る。
「今回の成果は反響を生む。アジア太平洋諸国政府は、他の地域に対し、米国に抵抗が可能なことを示した。米国には自国の主張が絶対に通るという思い上がりがあったが、実際にはアジアの現状を完全に見誤っていた」と話す。
域内のイスラム諸国は、リプロダクティブ・ヘルス政策では米国としばしば一致してきたが、米国は今回、こうした国々からの支持も得られなかった。
2002年初頭のアジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)年次総会でも米国はリプロダクティブ・ヘルス政策に異議を唱えたが、これに賛同したイランでさえ、今回はアジア諸国の側についた。

▽拠出金撤回の背景に反中絶政策

今回のバンコク会議は、カイロ会議で採択された行動計画の確認と実行を目指す一連の域内会合のスタートだった。
カイロ会議には米国を含む179カ国が参加し、ジェンダー間の平等とリプロダクティブ・ヘルス政策/ライツへの世界的な支援を保証する画期的な人口政策を採択した。
カイロ行動計画によって、女性には(1)母性保護の確保(2)自発的な家族計画の享受(4)ジェンダーに基づく暴力とHIVエイズを含む性感染症からの保護――といった様々なサービスが保証された。
94年当時、教会勢力など参加者の一部が、リプロダクティブ・ヘルスに関する医療を、性体験の低年齢化、乱交、中絶を助長するとみなしたため、議論は世界的な展開をみせた。
しかし現在、活動家側は国内の保守系支持層からの圧力を受けるブッシュ政権の巻き返しにより、カイロ会議で合意された原則が危機的状態にあると懸念している。
2001年1月、ブッシュ政権は国内の支持層を満足させるため、発展途上国の女性に中絶相談やカウンセリングなどの家族計画サービスを提供する組織への資金提供凍結を宣言した。
2002年7月には、提供した資金の一部が中絶に使われることを理由に、UNFPAへの3400万ドルの拠出を撤回した。

▽なりふり構わぬ米国の手法

今回のバンコク会議に臨むに当たって米国は、こうしたリプロダクティブ・ヘルス政策、特に中絶賛成派と疑われるあらゆる活動に対し強硬姿勢を貫き通すことを最重視していた。
米代表団の団長を務めた米国国務省人口難民移民問題担当のデューイ次官補は、「受胎から自然死を通した生命の尊厳を支持する」と語った。
女性ヘルスケア財団(本部マニラ)のグラディス・マラヤン氏は声明の中で、米国がアジア各国政府に圧力を掛け、バンコク会議で米国に同調するよう求めたことを明らかにした。
これによれば「フィリピン代表団は、米代表団を支持せよとのものすごい圧力を受けていた。圧力は会議場の中からだけではなく、本国からも押し寄せてきた」という。
一方、ポピュレーション・アクション・インターナショナル(本部ワシントンDC)のサリー・エセルストン氏は、今回の出来事があっても、リプロダクティブ・ヘルスに関する自国の方針を国際社会に支持させようとする米政府の威圧的な態度は変わらないとみる。「米政府は今回の敗北に懲りたりはしない。自分の意思を押し付けるか、ノーというかのどちらかだ」と話す。


【メモ】リプロダクティブ・ヘルス/ライツ 「性と生殖に関する健康/権利」と訳されることが多い。UNFPAによれば、安全で満ち足りた性生活を営むことができ、生殖能力を持ち、出産の有無、時期、人数を決定する自由を各人が持つことを意味する。具体的には中絶や避妊教育などの家族計画も含まれる。

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