【ねこまたぎ通信】

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 TUP速報

カメラを手渡さないなら、逮捕する! アメリカ人から命令を受けているのだ!
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 4月、米軍包囲下のファルージャに、人道救援活動のために入り、その帰路、地元のレジスタンスによる拘束を経験したオーストラリア人女性ドナ・マルハーンが、11月24日に再びバグダッド入りし、そこから送っている現地報告をお送りします。今回は、実際にバグダッドの検問所で誰何される様子を報告し、米軍と新生イラク軍の関係を思い起こさせます。
                          (翻訳:福永克紀/TUP)
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今日の事件 ドナ・マルハーン

2004年12月3日 

すべては、私たちの車が角を曲がったとたん、あっと言う間に起こった。
その米国製の多目的装甲車は、どこからともなく現れたように思えた。こちらに近寄ってきて、機関銃で狙いを定め、強制的に車を道脇に停めさせた。
すぐ目の前には、おおぜいのイラク兵の詰めている検問所があった。速度を落とし、停車するほかない。私たちが車を止めると、黒のバラクラバ帽で顔を覆った兵士たちは、車を取り囲み、銃口を私たちに向けた。
いつでも楽天家のハーディーが窓越しに装甲車の兵士に呼びかけた。「ちょっと動いてもらえると、車を回して、皆さんの邪魔にならないところに消えちゃえるんですけどね?」
この罪のない頼みで、ことが解決するのを期待して、私は後部座席で、にんまりした。
装甲車の上に乗った米兵が、手で怒りのしぐさを見せ、係のイラク人士官に大声で何かを命じた。これでは、どこにも消えちゃうわけにはいかなかった。
私たちがいたのは、バグダッド近郊の埃っぽくて悪臭漂うアル・サイディアである。同僚のイラク人ハーディーとレイスと3人で、今後の子どもたちのためのプロジェクト用の用地を探しにまわっていたである。
人口密度の高い住宅地で、施設の少ない貧しい地区、反占領攻勢の激しい地区、つまり要注意地域である。
数日前に大通りの政府のビルが、大音響のミサイル攻撃で爆破され大打撃を受けたところである。その日以来、米軍の監督下、気の高ぶったイラク兵が24時間体制の検問所で、通りのむこうからそのビルを警護しているのだった。
検問所のことに私たちはまだ気づいていなかったので、レイスが被害にあったビルの写真を取ろうと言ったとき、私もそれはいい考えだと思った。マスメディアからは報道されないバグダッド郊外の写真は、どうしてもほしいと思った。
レイスが写真を撮るのを見つけた装甲車の米兵は、どうやらそれがお気に召さなかったしい。彼は、私たちに路肩停車をさせて、命令を出したあと、私たちのことはイラク士官に任せ、そのまま行ってしまった。
この士官は命令の遂行に熱心で、デジタルカメラを今すぐよこせとレイスにアラビア語で怒鳴った。
彼が怒鳴っているあいだ、私は車の中で身を縮めながら、バグダッドの貧しい地区で撮ってきたばかりの貴重な映像のことを考えていた。士官はさらにわめきながら、後部座席のビデオカメラを指差した。
私はカメラを取り上げ、足元に置いて丁寧に返答した。「いいえ、このカメラをお渡しすることはできません。失礼します、私たちはもう行かなければなりません」
彼はしばらくポカンとしていた。ハーディーとレイスは青くなった。
しかし、私がなぜそう言うのか、二人にはわかっていることが、二人の目に見てとれた。
肩に大きな「イラクの自由作戦」のバッジをつけたこの士官は、この二人の男の子に向かってさらにわめいた。その前の日にライドとその友人たちが、新イラク軍には多くの人が憤慨していると話してくれたことを、私は思い出していた。彼らは新設の権力を、同国人に屈辱を与えるために使っていると。
私はたじろぐことなく、しかし穏やかに、「すみませんが、だめです」と答えた。
実際、有志連合軍が何か価値あるものを押収すればどうなるかは、わかっている。
二度とそれにお目にかかることはないのだ。
米軍の家宅捜索があると、家中の現金を持っていかれることがしょっちゅうある。銀行がもう役に立たないので数千ドルもの現金が自宅にあるからだ。なにか高価な電化製品や嫁入りのときの宝石類や家宝の銀器などがあれば、たいていは兵士やその通訳の手に載って、その家を出て行ってしまう。
このあからさまな窃盗にさえ、イラク人は報復を恐れて、口をはさむことができない。はさんだとしても、「返しますから心配なく」とでも言われるだけだ。
それは決して返ってこない。
アル・アディミヤのある家族は、一人の老人の老後の蓄えだった2万米ドルを失った。他の話も悲惨なものばかりだ。しかし、メディアはこの占領の醜悪な側面を取り上げたことがない。ちょうどアブグレイブの拷問を、写真によって暴露されるまで、無視していたのと同じようにだ。
米軍兵士がある家族に「これは、あなたに返すべきものではない、これは汚れた金だ」と言っているのは報道されたことがある。言外に、その金がイラク抵抗勢力から出たものか、彼らに使われるものだと言っているのだ。実際は、その一家の営む理髪店を売り払って作ったお金だったのに。今この一家は貧しい暮らしをしている。
この問題はひとつのスキャンダルだ。証拠の裏づけのあるたくさんの事件があるにもかかわらず、臆病なマスコミは報道しない。
だから、私には、有志連合に押収されたものは、すべて、ブラックホールに吸い込まれてしまうことがわかっていた。
このイラク人士官は、二つのカメラを持って行く必要があると言った。米軍基地に渡すから、返却してもらえるものか、私たちが数日以内に確かめろと言う。
ビデオカメラは私のものではない。もし、米軍兵士がカメラの中身を見ればおそらくフィルムを処分してしまうだろう。ほんの数分前に、ハーディーとレイスの、たいていのイラク人は米軍の占領よりサダム・フセインの統治のほうがよかったと思っている、なぜかというと、というような内容の、何気ないが、痛烈な会話を撮ったばかりだ。まさしく、米軍が外の世界のテレビで放映されたくないメッセージそのものだった。
だから私は、カメラを守らなければならなかったのだ。
「カメラをよこさないと、逮捕するぞ」と、士官が叫んだ。
「これはアメリカ人の命令なんだ!」
私は両手を差し出し、片方の手首にもう一方を載せ、抗うことなく手錠を受け入れると彼に言った。彼は部下に手錠を持ってくるように言った。
時として、不法な権力には、挑戦しなければならないときがあるのだ。

あなたの巡礼者

ドナより

追伸:つづく。

追追伸:ご心配なく! 大丈夫です! いま、アパートのヒーターの前に座っています。大丈夫だけど、電気が来ていないのでヒーターはついていないのです。でも、希望を持って生きています(少なくとも、私はアブグレイブにいるんじゃないもの)。

追追追伸:と〜〜〜っても疲れています、今すぐ寝なくっちゃ。でも、約束します、明日にはこの冒険物語を完結します。

追追追追伸:この話を、有害で、不正で、不適切で、とにかくまったく愚劣な法に服従するのを平和的な仕方で拒んだために、逮捕され、裁判に出廷し、罰金を科せられ、牢獄暮らしをさせられた私の多くの友人たちにささげます。ありがとう。

追追追追追伸:「コミュニティの不正に対して、その良心を喚起するために、自らの良心が不当だと告げている法に背き、進んで投獄の処罰を甘受する個人こそが、じつは、法に対して最高の敬意を表明しているのだと、私は申し上げたい」−−マーチン・ルーサー・キング・ジュニアー

                 (翻訳 福永克紀/TUP)

原文:[The Pilgrim] Today's adventure...
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