TUP速報
バグダッド入りをはたしたドナがハワード首相につきつける命がけの糾弾
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4月、米軍包囲下のファルージャに、人道救援活動のために入り、その帰路、地元のレジスタンスによる拘束を経験したオーストラリア人女性ドナ・マルハーンが、24日に再びバグダッド入りし、そこから送っている現地報告を継続してお送りします。この第2信は、マーガレット・ハッサン [注:「TUP速報409号 殺害された人質からの家族の手紙」参照] でさえ殺害される現地から、対米追従路線を改めないジョン・ハワード首相に送った命懸けの糾弾の書簡です。
(翻訳:萩谷 良/TUP)
======================================ドナ・マルハーン
オーストラリア首相ジョン・ハワード氏への手紙
2004年11月25日親愛なる友人の皆さん
きょう首相に送るつもりの手紙です。皆さんにもCCでお見せしたいと思います。オーストラリアを発った日に200人くらいでやった平和集会で、読み上げました。みんなに、私の首相に対する要請の証人になってもらいたかったのです。このメールを読む皆さんも証人になってください。
親愛なるハワード首相殿(CC ダウナー外相殿)
私がバグダッド帰還の途につきましたことをお知らせしたく思います。イラクのたくさんの家庭の苦難を軽減するための人道的援助の仕事を続け、あの国の人々に状況を報告し、平和のメッセージを送るためです。
過去20カ月で、イラクに行くのは、これで3度目になります。
最初に行ったときは、有志連合諸国が侵略する前でした。私は、驚くほど暖かく迎えられ、絶大なもてなしと友情を受けるばかりでした。
あの頃は、イラクの人々はオーストラリアを愛し、賛えていたのです。
2度目にイラクに行ったのは、占領されてすでに半年ほどになったイラクでした。それでもなお人々は大いに私を尊重して、受け入れてくれたものでした。人々は、私のようなオーストラリア人からの援助に感謝の気持をもっていましたが、あなたが与える「援助」に対しては同じ気持をもたなかったわけです。
滞在の終わり頃には、イラクの人たちは私に「なぜオーストラリアが我々に危害を加えようとするのか」とか「あなたの国の政府はアメリカにくっついていくのか」などと尋ねるようになっていました。
あの人たちとの友好的な関係が変質するのを、私は感じました。暖かさが消えてしまったのです。
今回のイラク訪問では、私は通りを歩くことができないでしょう。あけっぴろげの歓迎も受けないでしょう。その代わりに不安と疑いに迎えられるでしょう。
ハワード首相、私はオーストラリア人であるために、大変な命の危険にさらされているのです。
私たちにとってまったく脅威ではない国を侵略するという、あなたの決定が、一国民全体の怒りを招き、その人たちを大変な混乱に突き落としてしまったことが、おわかりですか。
ここでひとつ、あなたにお願いをしなければなりません。私は2004年12月の間じゅうイラクにいますが、謹んでお願いいたします、どうぞ、その間、あなたの口を閉じ、この侵略について熱意をこめて語ったり、占領を賛えたりなさらないでください。
あなたやダウナー氏の発言がイラクはじめアラブ全体のマスコミで大々的に流されていることに、あなたはお気づきでないかもしれません。
わたしはイラクで無事でいるつもりですが、反乱グループのどれかに捕虜として捕まえられても、そのとき私の命を救ってくれるものがあるとすれば、それはあなたとあなたの政策に反対してきた私のこれまでの経歴でしょう。それが私の唯一の希望です。
もしそのようなことになったならば、うわべだけ私の身を気遣うような言葉は一切慎んでください。イラク国内のどんな集団とも連絡を取ろうなどとはしないでください。私を「救出」しようなどとはなさらないでください。
それよりも、前回のときのあなたの、私を愚かで無責任だという、誤った情報にもとづく侮辱的発言を変えずに繰り返していただきたいと思います。たぶん、あなたが私を批判するのを聞けば、抵抗勢力の人たちは、私が何か正しいことをしているのだと思ってくれることでしょう。
これは本気でお願いしているのですから、どうか、これは守ってください。私のこのお願いの件は、バグダッドのオーストラリア大使館のほか、私の家族や友人の広範囲におよぶネットワークにも伝えます。
私はこのような状況のなかに、何の準備もなしに入っていくのではありません。自分の身の安全には徹底的に注意を払っており、必要な場合には オーストラリアその他の国のイスラム教徒たちが私のために擁護の動きをしてくださる手はずは整えてあります。
私の引き受けようとしている危険は重大なものです。そのことはよくわかっていますが、私はそれが必要だと考えます。
イラクという素晴らしい国全体に言うに尽くせぬ苦難を引き起こした占領にあなたが言語道断にも参加して、私たちの国にひどい恥をかかせたと私が言うとき、私は何百万ものオーストラリア人の叫びを繰り返しているのです。
私はこの恥を打ち消す何かをしなければなりません。
あなたの政策とその帰結を拒否すると私が言うとき、私は何百万ものオーストラリア人の声を代弁しているのです。
私はイラクに赴き、このことを伝えなければなりません。
あなたの軍事的関与に匹敵する友情と共感の人道的関与を必要とするということを、私は心から語っているのです。
この思いを届けるために、私は行かなければなりません。
ハワード首相、あなたのおかげで私は、この大切な任務をもってイラクに戻るよりほかなくなったのです。
イラクの状況をよりよく知るため、私が現地から差し上げる生情報は強い関心を持ってお読みになると信じています。(あなたの政府の役人はバグダッドでは自分達の家からほとんど出られないのですから、私は喜んで詳しい情報を無料で差し上げるつもりです)
イラクの人々のこの占領とオーストラリアの関与についての思いを、あなたが虚心に受け止めてくださることを願っています。
あなたに、この人たちの叫びが聞こえることを祈ります。草々
ドナ・マルハーン
追伸 どうか、いつもいつもサダム・フセインのことばかり言うのはやめてください。サダムなど問題でないことは、私たちみなが知っていることです。イラク人は、あなたが彼のことを言うたびに笑っています。どうか、誠実になり、イラク人の知性を侮辱するようなまねはお慎みください。
追追伸 「幸いなるかな、平和をつくる者ら、その人らは神の子と呼ばれん」マタイ福音書5-9
この手紙をお読みいただき、ありがとうございます。上書きをつけて議員諸先生にお送りいただいてかまいません。
あなたの巡礼者
ドナ追伸 どうぞご心配なく、私は元気です。じきにまたお便りを送ります。
追追伸 Eメールを下さった方たちにお礼申し上げます。全部にご返辞を差し上げる時間はないと思いますが、ちゃんと読ませていただきますし、メールをいただけてありがたいと思っています。
追追追伸 ラーイドが、オーストラリアのみんなによろしくと言っています
追追追追伸 「急進的な変革は、政府間の交渉ではなく、民衆の強制によってのみ行われる」(アルンダティ・ロイ)
(全訳 萩谷 良/TUP)