【ねこまたぎ通信】

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 アメリカの侵略戦争を支える日本 共倒れ必至

ドル急落のウラを読む 基軸通貨『終わりの始まり』

http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20041120/mng_____tokuho__000.shtml

 米ドルが十九日、ニューヨーク外為市場で一〇二円台に突入し、前日東京での一〇三円六五銭を上回る独歩安となった。ドル安が進んだことで、ドル建て外貨預金には元本割れが生じている。一方、日本政府はこれまで、八千四百億ドルに上る外貨準備の大半を、ドル建ての外貨預金米国債購入によって、米国に資金として供給している。

 「置いておけば、ただ目減りするばかりだけど、それもしかたがない」

 米国がドル安容認との見方から、東京外為市場で一ドル=一〇三円台を付けた十八日、大阪市の元公務員の男性(81)は、ニュースを聞きながら苦笑いした。
 数年前、一ドル=一一七円だったころ、知り合いの銀行員に「買い時だ」と勧誘され、五十万円だけ、ドル定期預金にしてみた。一三〇円台になった後、ドルは下がり続けた。
 「どうしようかと相談したら、銀行員は『もう少し様子を見ましょう』と言うだけ。少しでも戻れば現金化するつもりだが、ユーロだとよかった」

■個人外貨預金 5年前の3倍
 日銀統計によれば、二〇〇三年度の個人の外貨預金は、前年比23%増の五兆七千七百二十億円と過去最高で、五年前に比べると約三倍。あるメガバンクの幹部社員は「日本の現行の金利は、預金者にとって事実上ゼロの状態。金利が高い外貨預金に顧客の目が向くのは当然の流れ」と言う。
 だが、フィナンシャル・プランニング会社ストックアンドフロー代表の浅井秀一氏は「日本経済がどん底だったころなら、米ドル預金は有利だった。日本が不況から復活しつつあり、相対的に米ドルが下落しそうな現状では、長期保有する魅力はない。ここ数年でドル預金をした人には厳しい状況だ」と話す。
 外貨預金は、為替相場の変動により元本割れを起こすこともある。預金保険機構による預金保護も受けられない。つまり「預金」といいながらも、普通に円で銀行に預金する場合の元本保証がない、リスクを含んだ商品だ。「だからこそ、ここまで告知する必要があるかというぐらい、リスクに関する説明は徹底させている」(東京三菱銀行広報部)という。
 浅井氏によれば、米ドルが下落しているとき、円と同様にユーロも買われるため、すでに円を保有している日本人にとって「現状のユーロの金利水準と為替手数料を考えれば、ユーロ投資の意義は少ない」。
 その点、オーストラリアドル(豪ドル)は年利4%以上で、五年間持てば外貨ベースで約二割の収益となり、為替が不利に動いてもリスクを軽減できる。「オーストラリアは資源国であり、テロのリスクが相対的に低い南半球に位置するなど、日本にはない特徴もある。長期保有が前提ならいいだろう」と言う。
 だが、豪ドルは米ドルほど世界的な通貨といえる存在ではなく、外貨預金の主流は米ドル預金だ。その米ドルは下落傾向がうかがえる。「為替差益を狙って短期に円と米ドルを取引するか、日本株を運用している人が日本株の下落に備え、一種の保険として外貨預金をする形なら」と浅井氏。
 にもかかわらず、日本政府は外貨準備の大部分を、米ドル建て外貨預金米国債の購入に充てており、米国債の購入は発行額の約40%に上るという。米ドル一本槍(やり)の上、買い増しても売却はしない以上、ドル安による損失は避けられない。
 それだけに、今回の米ドル独歩安には無関心ではおれない。ドル安の原因はどこにあるのか。
 UFJつばさ証券のチーフエコノミスト、斎藤満氏は「現在のドル安は、ユーロに対し〇一年から、全面的な下落は〇二年から始まっている」と説明する。

双子の赤字穴埋め困難
 「米国の経済は情報技術(IT)バブルの崩壊で相当厳しい状態にあった。しかし、対テロ戦争の中、経済分野でも、何が何でも負けるわけにはいかないと、この二年間、相当無理をして拡大しようとしてきた。その結果、財政収支、経常収支のいわゆる双子の赤字は歴史的水準まできた」
 米国が双子の赤字を抱えるのは、何も初めてのことではない。しかし、斎藤氏は「今回のドル安は大震災なみのマグニチュード」と表現する。
 事態を深刻にしているのは、赤字を穴埋めする資金が、海外から入りにくくなっているためだ。
 「9・11事件以降、米国の強硬な対外政策で、欧州や中東を敵に回してしまった。アラブ産油国は昔はブッシュ大統領とはうまくいっていたが、アフガニスタン攻撃以降、裏切られたという思いを持っている。原油価格が上がって得た資金も、中東の国の株とかに投資することで、米国に戻さなくなっている」
 和光大学の三宅輝幸教授(国際金融論)も「以前は米国からお金を引き揚げると、他に持っていくところがないという事情があったが、今はユーロという選択肢もある」と指摘する。
 海外からの資金調達が難しいとなれば“自助努力”の必要性が増す。「米国の赤字は端的に言えば、輸出より輸入が多い、つまり消費のしすぎで起こっていることなのだから、解消するには生活水準を下げていかなくてはならないが、米国内にいると、ドル下落とか赤字とかの感覚がない。至難の業だ」と三宅教授。
 斎藤氏も「赤字の解消には、ドル安により輸出を増やすという選択しかないと市場は見切っている」とする。実際、十七日にはスノー米財務長官が「為替市場への人為的な介入は報われたためしがない」と発言、ドル安を容認したとの見方が広がった。
 同志社大学マネジメントスクールの浜矩子教授は「通貨という面で無頓着な政権が続くと市場は見て、投機筋はもとより、投機筋でない投資家も、ドル建ての資産を売りに出た。今のドル安は、基軸通貨としてのドルの終わりの始まりだと思う」と言い切る。
 かくして「大暴落の可能性もはらみ、ドルというのは危険な通貨じゃないかということになった」(三宅教授)。その結果、世界ではドル離れとも見える動きがさらに進行する。
 昨年十月、ロシアのプーチン大統領は原油取引の決済をドル建てからユーロ建てに変更する可能性を示唆した。国民保有のドル資産は減少しており、通貨を米ドルに連動させる為替制度は廃止する方向だという。
 「半分ドル、半分ユーロでというような原油の取引が少しずつ増えていく可能性は大きい。中国などでも外貨準備を少しずつユーロに替えていこうという動きがある」(三宅教授)
 イラク情勢の混迷を背景に、金の価格も上昇している。「中東や欧州などの戦争や民族紛争の歴史を持つ国は、いざとなったら金という意識が潜在的、本能的に強い。金価格の上昇はドル安と同じく二年前に始まっている」(斎藤氏)
 今年前半に、ドル安円高を防ごうと二十兆円を超える為替市場への介入を実施した日本は、「ドル」という船から下りようとする気配はない。いや、下りることはできないようだ。
 三宅教授は「日本の外貨準備のほとんどがドル。これをユーロ債に替えようとかそういう動きをすれば、さらなるドル安の進行に手を貸すことになり、自分の首をしめてしまう。ドル離れというアクションのとれない状態だ」と指摘する。

■『米は最大の 不良債権に』
 前出の浜教授も言う。
 「日本にとっては米国は最大の不良債権となりつつある。良き管財人として意見を言える立場にあると思うのだが、そういう姿勢はないのではないか」