「パレスチナ農民が語る・・・「隔離壁」が奪ったもの」
昨日の小田切 拓さん(ジャーナリスト)の講演「パレスチナ農民が語る・・・「隔離壁」が奪ったもの」を聞きに行きました.
パレスチナを取り囲んで建設中の分離壁のことは,みなさんよくご存じのことと思います.
http://palestine-heiwa.org/wall/wall.html
セキュリティの名目でイスラエルによって立てられている分離壁は,パレスチナの人びとの生活を破壊する人種隔離政策であるとともに,国防大国イスラエルにとって,戦争と並ぶ公共事業という側面を持っています.
その隔離壁に囲まれつつある町からファエズさんという農民の方をゲストとしてお迎えする予定でしたが,いろんなことがあって出国に手間取り,当日の講演には間に合いませんでした.(おそらく今日関空に到着しているはずです.)
小田切さんのお話は,この隔離壁の内側で暮らす人びとの様子を中心にパレスチナの「日常」について多くを語っておられました.
講演中に現地との電話でリアルタイムに様子を伝えてもらい,とても臨場感あふれる内容でした.小田切さんの話しぶりもユーモアたっぷりで,内容がスイスイ頭の中に入ってきました.
小田切さんが撮影した映像を交えながらのいろんなお話があった中で,私は人びとの暮らしの中に浸透する「日常化した狂気」というものを感じないではいられませんでした.
たとえば,
空爆や砲撃の時に無傷で病院に運ばれてくる子供たちが,たくさんいるというお話がありました.これは,つまり,PTSDで発作を起こした子供たちのことです.空中の一点を凝視したまま,発作に身体を震わせている子供たちの映像は,とても痛々しいものでした.
また,丘の上から戦車に向かって石を投げる子供たちの映像がありました,イスラエル兵は子供たちに向かって散発的に発砲しています.当たれば,命を落とすか,大けがをするのですが,半ば遊び半分で石を投げる子供たち.
「大人でも子供でも動くものはみんな狙撃される.100メートル先で撃たれて倒れている人がいても,助けることも出来ないんだ,彼は5時間後に死んだよ」と語る電話の声は,興奮した様子もなく,意外とたんたんと語っていました.
ごく普通の町の様子を映し出しながらも,常にどこかで発砲している音が聞こえます.実は,砲撃や空爆をすれば,世界中に大々的に報道されるが,日常的に小銃で撃たれ傷つく人たちのことは決して報道されることがない.それに誰が撃ったか判らない.
小田切さんの話も映像も,決してショッキングなものではありません,あからさまに手や足を吹き飛ばされたり,ミサイルが爆発するシーンを映し出したりするものではありませんでした.でも確実に「狂気に一歩踏み込んだパレスチナの日常」が,はっきりとそこに映し出され,語られていました.
長年パレスチナを撮影し続けているうちに,はじめは発砲の音が聞こえるたびにカメラがぶれていたのが,音がしてもカメラがぶれなくなった自分に気付いて,このままでは僕は撃たれる,と思ってその場を立ち去った,といった小田切さんの言葉は,とても「リアリティ」のあるものでした.
いい話を聞くと,しばらく放心状態が続くので,落ち着いて,また,パレスチナの件については書いてみたいと思います.