【ねこまたぎ通信】

Σ(゜◇゜;)  たちぶく~~ Σ(゜◇゜;)

ナブルス通信 2004.5.14号

こんにちわ。とても長く間があいてしまいました。すみません。
前半のガザのところだけでも、転送してもらえると嬉しいです。

     ****以下、転送を歓迎します****

     ○○○ナブルス通信 2004.5.14号○○○
       http://www.onweb.to/palestine/
         Information on Palestine


◇contents◇

◇ガザの状況が悪化の一途  編集部
◇「肉片になった友だち」 ラファのアネスより
◇「友人が殺されるとき」 編集部・ビー・カミムーラ

◇21世紀の新「バルフォア宣言」  編集部
◇離散したパレスチナ人たちから世界の人々への呼びかけ

(長らく間が空いてしまいました。この通信は「新バルフォア宣言」を巡る状況が中心になる予定でしたが、ガザの状況があまりに悪いため、最新の情報などを急遽まとめました。これを作っていて、頭に浮かんだのは次の俳句です。「万緑や死は一弾を以てたる」(上田五千石)

明日、パレスチナはナクバ(大災厄)から56年目を迎えます。)

◇ガザの状況が悪化の一途

2日に起こったイスラエル人入植者親子殺害以来、侵攻と家屋破壊が絶えなかったガザで、11日に侵攻してきたイスラエル軍の車輌をパレスチナの武装グループが爆破、イスラエル兵6人が殺された。それにより、攻撃はさらに激化。ガザ市南部のゼイトゥーン地区では、2日間に銃撃、砲撃、ミサイルによる空爆で15人が殺され、180人以上が負傷し、重体も多数という状況になっている。犠牲者には子どもも多く含まれているというレポートが出ている。

さらに12日夕刻にもガザのラファで、イスラエルの軍用車輌が爆破され、イスラエル兵が5人死亡。攻撃ヘリや戦闘機もラファ上空に集まっているという情報が入ってきた。

その後、13日未明にラファの街にアパッチヘリからのミサイル攻撃が行われて、現在わかっているだけで12人が殺されている(1名は銃撃で死亡)。ミサイルで殺されたのは通りにいた若者たちだった(→ラファのアネスからのレポートを参照)。負傷者は最低でも20名。そのうちの多くが重体だと現地の病院は発表している。さらにラファでは家屋破壊も8軒まで報告されている(現在も「作戦」は進行中 日本時間14日午前1時)。

5月は最初の10日間だけで、131軒の家が破壊され、1100人が家を失ったとUNRWA(国連パレスチナ救済事業機関)が発表した。これは2000年9月以来、もっとも激しい家屋破壊がこの10日間に行われたことを意味している。


◇「肉片になった友だち」 ラファのアネスより

 すごい爆発音がして目が覚めた。母が気を失っていたので、病院に連 れていく。帰ってくると、友人たちが荷物をまとめて、家から離れたほうがいいというので、友人たちを僕の兄弟のところへ連れていこう とした。そのとき、ラファの送電が止まり、発砲が始まった。いたるところに戦車とアパッチヘリ。友人たちと50分、一緒にいて、みんなはでかけていった。また、戻ってくると言って。僕は「オッケー」と答えた。
 
 35分経って、友人たちがスーパーマーケットのところにいるのを見た。そのとき、アパッチ・ヘリが爆弾を落とした。衝撃を受けたけれど、友人たちがどうなっているか、すぐに見に行こうとした。でも、そこにみんなの姿はなかった。見えたのは、あちらに手、こちらに頭部という光景。僕は今までこういうものを見たことがなかった。なんとか、肉片になった友だちを運び出そうとした。なんとか踏ん張ってやってみようとした。でも、僕は強くなかった。さっきまで一緒にいた友人たちが死ぬのを見たことが信じられない。何も見えなくなって、僕は病院にいることに気づいた[アネスは気を失っていたようだ]。
 
 今、僕は普通に体が動かない。怖くって、不安で。今日は友だち、明日は僕かもしれない。どこに正義があるのか?これを終わらせてくれる人たちはどこにいるのか?僕はすべての人に、死んでシャヒード[大義に殉じて死んだ者]になった人たちのことを知らせたい。
 
 1  Mohammed Elbogy  21歳
 2  Ehab Yosif  19歳
 3  Hassan Awaja 18歳 (クラスメート)
 4 Fou'ad Abu Hashem  18歳
 5 Hany Elmgayar  23歳
 6  Ramzy Salah  22歳
 7 Hany Abu Elenen  18歳
 8  名前も身の上も知らない
 (5月13日 ロンドン時刻10:45 AMに投稿された)
 
http://www.rafahkid.net/blog.html
『Rafah Kid Rambles』より「Rafah Today (from Anees)」

**
翻訳:ビー・カミムーラ

以上は5月13日のラファへのミサイル攻撃によって、目の前で友人が殺されたアネスさん(高校生)がロンドンのマークさんのブログに投稿したものです。


◇「友人が殺されるとき」 編集部・ビー・カミムーラ
2004年5月14日

 (これはこの通信を作っている最後に編集部のビーが個人的に体験した出来事です)
 
 アネスの記事を訳していて、気になったことがあった。殺された若者たちのなかに、『Rafah Today』を書いているムハンマドと同じ苗字があった。でも、歳が違う。名前も違う。「この苗字はこの辺に多いに違いない」。
 
 そのあと、ラファの状況をチェックするために、PCHR(パレスチナ人権センター)が出した緊急プレスリリースを見ていて、体が凍りついた。ミサイルで殺された若者たちの名前のリスト。そこにあったムハンマドと同じ苗字には、「ムハンマド」の文字が付け加わっていた。年齢も20歳とある。膝が震えだす。
 
 ガザに住むムハンマドとの共通の友人に確認をしてもらおうと電話をかける。職場も、自宅も出ない。携帯は一度だけ通じたが、私の声が相手には聞こえないようだった。さらに携帯にかけたが、通じなくなっていた。
 
 呆然として、通信を作る作業が止まった。「まだ、何も分かった訳じゃない」と自分に言い聞かせるが、頭のなかは真っ白になっている。胸が鼓動を打つのが聞こえるような時間が続いた。
 
 ふと、ムハンマドの『Rafah Today』をチェックしてみようと思い、ウェブにアクセスしてみると、更新されていた。ムハンマドの無事が確認できた。だが、そこにはこのようなことが書かれていた。
 
 「僕にはこれが虐殺でたった今、殺された、僕の近い親類、ハニ(21)の遺体の一部なのかどうかもわからない。アン・ナジャール病院の医師は遺体のすべてを回収できないかもしれないと言っている。救急車はあちこちに散らばった犠牲者たちの骨や肉を毛布3枚分拾い集めたのだが。」
 
http://rafahtoday.org/news/todaymain.htm
 (*大変、無惨な写真が掲載されています。肉片になった人間が毛布の下に覗いていますので、苦手な方は避けた方がいいかと思います)
 
 ムハンマドは無事だった。けれど、泣き出しそうな気持ちは変わらない。今回、殺された若者たち、ひとり、ひとりの友人たち、家族たちの悲しみの声が私のなかに聞こえているから。
 
 圧倒的な武力で抑えつけている側が、行うことは「報復」だろうか。たった一撃でいくらでも殺すことができる力によって殺されたのは、何もしていない若者たち。「いたぶり」「虐殺」という言葉なら理解できる。
 

※ラファについての総合情報:
「特集:絶え間ない攻撃にさらされる街、ラファ」 
http://palestine-heiwa.org/tmp/rafah/031015.html

ガザ地区の地図
http: //www.palestinercs.org/images/Maps/gazamaplg.jpg

イスラエルに声を届けて下さい

抗議・要請文サンプルの改訂バージョンも含めて、以下のサイトに呼びかけがあります。「益岡賢のページ」
http://www.jca.apc.org/~kmasuoka/places/palestina0403.html
(地名のガザやラファのところを除くと、そのまま、パレスチナ全土のこととして使えるような文面になっています)


◇21世紀の新「バルフォア宣言」 ナブルス通信・編集部

この5月15日はイスラエル建国記念日。しかし、パレスチナにとっては離散と受難が始まった「ナクバ(大災厄)」の日として誰の胸にも刻まれている日だ。風薫る5月。小麦が実り、罌粟の花が咲き乱れる美しい季節はパレスチナ人にとって、住み慣れた土地を追われ、歴史を刻んできた町や村を破壊され *1、生きる権利が奪われた忌まわしい季節である。

パレスチナの詩人、マフムード・ダルウィーシュはこのように書いた。「今日は私たちの思い出の日。犯罪が行われた年代記を思い起こす必要もない。今、このとき、私たちは大破局─ナクバ─を生きている。悲劇的な出来事はいまだ終わっていない。今、ここで私たちは悲劇の分子にいまだに切り分けられている。」
(「ナクバの日」より 2001年5月)

だが、事態はさらに深刻だとも言える。ナクバが続いているだけではなく、新たなナクバが始まっているとも言えるから。

この2004年4月14日、ワシントンを訪れたシャロン首相に対して、当事者抜きにパレスチナの未来を決定する形で、米国・ブッシュ大統領が与えた数々の承認は、世界に衝撃を与えた。

このシャロン=ブッシュ会談の合意内容は以下に要約できる。

シャロン首相が一方的に決めたガザからのユダヤ人入植地(7500人)の撤退と引き替えに

1. ほとんどすべてに近い西岸地区入植地(23万人)の永久存続
2. 1948年のイスラエル建国にともなうパレスチナ難民(国連統計で414万人)の帰還権の放棄
3. 西岸に建てている隔離壁の建設黙認
4. 暗殺攻撃を含めた、パレスチナ抵抗勢力への攻撃容認

隔離壁が建てられ、入植地がそのままになると、そこに残るのは、切れ切れになって、一つ一つが監獄の房のように閉じられたパレスチナの地域の寄せ集めにしか過ぎない。それは元々の歴史的パレスチナの約10%の土地でしかなく、また、ひとつのつながりを持った経済的、文化的活動さえできない場所である。

このブッシュの承認を、アラブ世界はすぐさま、「21世紀の新バルフォア宣言」とか、「ブッシュフォア宣言」と名付けた。

イスラエル建国とパレスチナ人の離散に至るひとつの導火線として、世界史でも教えられるのが「英国の2枚舌外交」だが、1917年、第1次大戦の戦費をまかなうためにユダヤ系大財閥のロスチャイルド家に英国の外相パレスチナの地におけるユダヤ民族の国家樹立を約束したのがバルフォア宣言だった(そして、かたやメッカの太守フセインにアラブ民族の自治・独立を約束して、オスマン・トルコとの闘いに協力を求めた=サイクス・ピコ協定)。

そこに生きる当事者が一切関与していないところで、このような取り決めを行うこと自体がバルフォア宣言の生き写しであるが、この合意内容はこれまでの米国の外交政策──イスラエルの入植地を容認しない──という立場を転換した点で米国内にさえ衝撃を与えた。

米国の元外交官ら77人はこのブッシュ承認に反対して、大統領に書簡を送っている。パレスチナ難民の帰還権を否定し、イスラエルの入植地を存続させるシャロン首相の一方的なプランを支持することをこの書簡ははっきりと批判し、ロードマップの枠組みさえ壊すことで、米国の中東政策を変えたと言っている。

シャロンによる超法規的な暗殺攻撃、イスラエルベルリンの壁といえるフェンス、占領地での軍隊による過酷な手法に対するあなたの無条件の支持、そして今回のシャロンの一方的撤退プランへの賛同は、我が国の信頼性、名声、そして友人たちを損なうものです」全文は以下に。
http://www4.alternativenews.org/opinion/display.php?id=3734

国連総会でも、このブッシュの「バルフォア宣言」を念頭において、パレスチナ人の自決権、東エルサレムを含む領土におけるパレスチナ人の統治権を確認する採択が採られた。(賛成140カ国で成立。反対は米国、イスラエル、他4カ国。棄権はオーストラリア、コスタリカ、ペルー、ニカラグアなど11カ国。5月5日)

アラブ諸国からは、親米派のエジプト・ムバラク大統領さえも、「この絶望感と不公平感は中東のみならず、米国とイスラエルの世界中の利権を脅かすだろう」(『ル・モンド』による)と憤りを明言し、ヨルダンのアブドッラー国王は渡米を延期した。

その後、5月初旬に米国を訪問したヨルダン国王に対して、ブッシュは「パレスチナ国家樹立に向けた境界線画定や難民の問題はイスラエルパレスチナの当事者同士の交渉で解決すべきだ」という原則論を述べたとされている。

しかし、入植地の存続容認や難民の帰還権の否定が取り消されたわけではない。バルフォア宣言の前に、サイクス・ピコ協定も交わされていたという歴史を私たちは知っている。

ガザでは民間人に向けて、アパッチヘリコプターからミサイルが連日発射されている。世界のほとんどが非難をしても、米国が容認する限り、このような攻撃は終わらない。世界はいったい誰のものなのか?


[*1]……破壊されたパレスチナの村の地図
http://www.prc.org.uk/prc/prcmap/MapMain.asp?&t=Palestine%20Map
PALESTINE 1948 50YEARS AFTER AL NAKBA

◇離散したパレスチナ人たちから世界の人々への呼びかけ

北米のパレスチナ難民帰還権会議が、難民の帰還権を否定するブッシュの新しい宣言に抗議して、声明を発表し、賛同を集めています。

「ブッシュの「バルフォア宣言」に対する国際社会からの応答」
http://www.ror-congress.org/
全文訳は以下に。
http://www1.jca.apc.org/aml/200404/39339.html

この賛同署名は5月15日(ナクバの日)に、国連総会の構成メンバー及びそれに相当する団体すべてに送られるということです。賛同の表明はメールにて。
宛先: responsetobush@yahoo.com

◇この文章は以下に掲載予定
http://www.onweb.to/palestine/siryo/nakba14may04.html

◇P-navi info  http://nekokabu.blogtribe.org/
[ほぼ毎日更新中。編集者ビーの速報、ミニ・インフォ、コラムなど]

(個人的なブログですが、あまりにパレスチナでいろいろ起こるので、速報的なことはこちらに随時、書いています)

◇ナブルス通信の配信お申し込み、バックナンバーは以下に。
http://www.melma.com/mag/84/m00109484/

掲載内容の印刷物・ウェブ上での無断複製・転載はご遠慮ください(ご相談下さい。連絡先は下記サイトに)。お知り合いやMLへのメールでの転送は歓迎です。(編集責任:ナブルス通信 )

パレスチナ・ナビ』 http://www.onweb.to/palestine/

メールマガジンの退会・解除はこちら↓ by melma!◆
            http://www.melma.com/taikai/