【ねこまたぎ通信】

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人質家族にエール嵐…湾岸、ペルー経験者から

3人が犯人集団に連帯感抱く「ストックホルム症候群」懸念

 人質家族は長期化も覚悟−。解放の見通しが立たないイラクの3邦人誘拐事件で、日本で肉親の無事の報を待つ家族らは、心身とも疲労がピークのなか、長期戦の覚悟も固めた。事件発生から7日目を迎え、心配されるのは拘束長期化で、3人が犯人側に連帯感を抱く「ストックホルム症候群」。湾岸戦争やペルーの大使公邸占拠事件など海外での拘束経験を持つ人からは、3人や家族にエールも送られている。
 「長期戦を踏まえ、全力で頑張りたい」
 拘束されている高遠菜穂子さん(34)の弟、修一さん(33)は13日夜の会見で、こう話した。
 同日朝のラジオ出演中に気分が悪くなって倒れ、近くの病院で点滴を受けた修一さんだが、「まだまだ気力や体力は充実しています」と3人奪還まで全力を尽くすことを改めて明言した。
 修一さんは、バグダッドの友人から、「いい情報も悪い情報もない」という電話連絡を受けたことを明かした。
 これから心配されるのは、心痛を抱え、体力的にもむしばまれつつある家族よりも、過酷な条件のもと、現地で拘束され続ける姉と郡山総一郎さん(32)、今井紀明さん(18)の3人だ。
 1990年の湾岸危機の際、約4カ月にわたり、在イラク日本人会会長として一部日本人が解放された後も拘束され続けた元丸紅バグダッド支店長、東福寺正弘さん(68)は、3人の健康状態を不安視する。
 「4月末から5月は気温が50度を超える。暑さに加え、虫攻めもつらい。刺されると皮膚病に苦しめられる」
 「いま、何を食べているかは分からないが、よくて羊肉。ただ日本と違って、においが強く、しりごみする」
 東福寺さんは、3人の精神状態についても言及する。「言葉が通じないと、相手の考えがわからず、そのプレッシャーは計り知れない。3人一緒ならともかく、隔離されるとダメージは大きくなる」と指摘した。
 自身の体験から、「最初の3日間は緊張するが、それを過ぎると持続できなくなり、悲観的な考えが支配するようになった。3日目から10日目が精神的に一番厳しいはず」と振り返る。
 3人はまさに、その厳しい最中になる。
 3人の拘束長期化で懸念されていることがもう1つある。誘拐や監禁など、犯行側と接触する時間が長期化する場合に起こりやすいとされる「ストックホルム症候群」に3人が陥りはしないか、ということだ。
 3人が生殺与奪を握る武装集団に対し、必要以上の同情や連帯感、好意などを芽生えさせてしまうのがこの症候群の特徴だが、この症状に詳しい香川大学教育学部岩月謙司教授は指摘する。
 「すでに症候群に陥った可能性もある。長くなればなるほど、人格を取りもどせない恐れもある」
 実際、世界では、この症候群にかかり、犯行グループに対する愛情はおろか、自身もその後、犯行グループに加わった例などもみられる。
 96年のペルー日本大使館公邸占拠事件で人質になった元大使館員からは12日朝、「人質を経験した者として3人や家族の苦痛は思い余る。一刻も早い解放を念じています」と激励のファクスが家族に届けられた。
 危険を承知でイラク入りした「自己責任」の立場から、家族や3人への風当たりが強くなる一方で、心身の痛みを知る人たちからの熱いエールの輪も広がっている。
ZAKZAK 2004/04/14