『イラク占領軍に加担できぬ』 アラブ諸国派兵を拒否
【カイロ=秦融】イラクへの多国籍軍派遣問題でアラブ主要国は「自国軍は派遣しない」との方針を相次いで明らかにした。「イラク占領軍」への加担とみられて各国内の反発が高まる恐れに加え、イラクの統治評議会が「新たな外国軍派遣は内政干渉」との姿勢を示していることが大きい。
エジプトのエルバズ大統領顧問は九月三十日、ムバラク大統領に同行したアラブ首長国連邦で「派遣しない」と明言。「どこからも要請されていない」ことに加え、「外国軍の派遣をイラク国民がどう受け止めるかが重要だ」とイラク側が歓迎していない状況を理由とした。
サウジアラビアは、九月二十八日付で各紙が「たとえ国連指揮下の平和維持軍としても、派遣はしない」とするハリド国防航空相補佐官の発言を掲載した。
ヨルダンのアブドラ国王は二十九日、「軍を派遣すればイラクの人々は(混乱に乗じた)アンフェアな行動と受け止めるだろう」との見解を表明。外務省も「イラク人民はアラブ国家が派遣する軍隊との交戦を望んでいない」との声明を出す一方で、三万人規模のイラク警察・軍の訓練を受け入れる計画を発表した。
シリアは建前上、「平和維持軍派遣の用意がある」とするが、「イラクの統治を国連の管理下に置き、米軍撤退の時期を明示すること」と米国が受け入れがたい条件を示しており、派遣の意思が本音とは考えにくい。
サウジ、クウェート、カタール、バーレーン、アラブ首長国連邦、オマーンが加盟する湾岸協力会議は九月五日、「派遣しない」とし、アラブ連盟外相会議は同九日に「占領軍に加担したり、その一部としてアラブ諸国の軍隊を派遣することは受け入れ難い」とするなど、いずれも事務局長談話の形で方針を確認。ここにきて、各国一斉に「派遣しない」との方針を表明したのは、その流れを踏襲した形だ。
イラクの暫定統治機関「統治評議会」のチャラビ議長は九月十日、「評議会が望んでいるのは外国軍の撤収で、新たな派遣ではない」と明言。ゼバリ外相も「軍隊派遣は内政干渉」としている。
イスラム諸国で派遣の可能性があるトルコに対し九月末、米国は八十五億ドルの経済援助計画を公表。しかし、イラク戦争前、米軍の出撃拠点となることを議会が拒否した経緯があり、派遣問題に決着がつくまでには、まだ時間がかかりそうだ。
(東京新聞)