【ねこまたぎ通信】

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得意技 なし崩し

政府職員、イラク戦後ORHA派遣

合憲の枠また拡大

『国際機関』望み薄で決断

 イラク戦争後の占領行政を担当する米国の復興人道援助室(ORHA)への職員派遣で、これまで占領行政への参加は、憲法違反との解釈を取ってきた政府が方針を変え、自衛隊の海外派遣を可能にした「武力行使と一体化しない活動は合憲」という新見解を当てはめた。十分な議論を欠いたまま、まるで魔法のつえのように、合憲の枠内がまたも拡大する。(政治部・渡辺隆治)
■迷 走

 政府は海外での武力行使について、自衛のための最小限度の武力行使を除き、できないとの解釈を取ってきた。

 占領行政への参加についても、「自衛のための必要最小限度を超えるもの」(一九八〇年五月の政府答弁書)として、違憲と説明してきた。外務省の竹内行夫事務次官も条約局長だった九七年十一月の参院内閣委員会で、自衛権の範囲を超えるものとして「相手国の領土の占領、そこにおける占領行政などを行うことを含む」と答弁している。

 米国の構想では、ORHAは米英軍の占領下でインフラ整備などの民政を担当する。米国から職員派遣の打診を受けた日本政府内では、従来の解釈通りなら、文民であっても派遣は不可能だとする意見が強かった。その一方で、対米貢献をアピールするとともに、復興権益にあずかるためには、派遣に踏み切るべきだとの声も上がっていた。

 福田康夫官房長官が十日から十一日の記者会見で示した見解が「派遣は困難」「可能」「検討中」と迷走したのも、政府内で考え方が割れていたためだ。特に、首相官邸内では「占領行政では(派遣は)できない」との空気だった。

■カジ切り

 政府にとっては、国連安保理決議などを得て、ORHAが米国の機関から国際機関に格上げされれば、米英軍の占領ではない「国際社会の共同統治」との解釈が成り立ち、堂々と文民を派遣できる。

 だが、米国とフランス、ドイツの対立が解ける兆しはなく、格上げは望み薄。フセイン政権が崩壊し、米国が復興準備を加速する中、国際協調の復活を待つだけでは、「入りたくても入れない国があるのに、米国から入ってくださいと頼まれている」(政府関係者)絶好の機会を取り逃がすことになりかねない。結局、ORHAが国際機関にならなくても、職員を派遣する方向にカジを切った。

 そのためには、憲法解釈のくびきを断ち切ることが必要。そのテコとして目を付けたのが、武力行使と一体とならない協力は合憲とするとの論理だ。

■対米追随

 政府は九二年に成立した国連平和維持活動(PKO)協力法で、この論理を打ち出し、自衛隊の海外派遣に道を開いた。

 九九年成立の周辺事態法、二〇〇一年成立のテロ対策特別措置法でも踏襲し、自衛隊の海外活動の範囲と内容を拡大してきた。

 政府は、占領下の自衛隊派遣は国民世論や隊員の安全を考えても無理と判断。文民派遣にこの論理を持ち出すことで、違憲ではないとの結論を導き出した。

 ただ、この合憲論は「武力行使と、そうでない活動を明確に線引きすることは不可能」との批判を浴びてきた。

 政府はこうした批判をかわすため、軍事と民政のすみ分けを明確にするよう米国に求めていく方針だ。

 しかし、ORHAが軍政を担う米中央軍の指揮下にある以上、軍事的要素を完全に取り除くのは困難が予想される。

 一方、国際協調の再構築は、日本政府にとって最優先の課題。米国の機関のまま派遣することになれば、ますます対米追随の色が濃くなってしまうことは確かだ。

 (メモ)占領行政の政府見解 

 「自衛権の行使としての実力の行使の態様がいかなるものになるかについては、具体的な状況に応じて異なると考えられるから、一概に述べることは困難であるが、例えば、相手国の領土、そこにおける占領行政などは、自衛のための必要最小限度を超えるものと考えている」(1980年5月15日、質問主意書に対する政府答弁書