【ねこまたぎ通信】

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 ワシントン会議

 アフリカのケニアで獣医として,環境保護の活動をされている神戸俊平先生から,チリで開催されたワシントン条約会議のレポートが届きましたので,ご紹介しておきます.


第十二回ワシントン条約会議

 2002年11月、第十二回ワシントン条約会議がチリのサンチャゴで開催され、野生動植物保護について協議されました。その主な内容は、象牙取引問題、捕鯨問題、Whale Shark、数種の亀、マホガニーを始めとする各種動植物についてなどで、多く、日本が取引を望むものでした。会場でも、また、チリの学生からも、日本は「Eating up World」世界を食い尽くす国か?!と評され恥ずかしい思いをしました。


 象牙取引については、ケニヤ・インドの国際商取引の禁止続行(議定書 I)提案と、かたや南アフリカナミビアボツワナザンビアジンバブエの南部アフリカ5カ国から、象牙についての取引再開の提案が出されていました。買いたい側の日本政府代表・奥田さんは「象牙モニタリング・システムは機能し、取引を再開しても、密猟密輸を心配する恐れはない。」と再開の支持発言。しかし象牙の密輸は頻繁に発覚するし、日本人は、バンコック」や香港など、東南アジアを旅行し、知らずにか、象牙のハンコを買って帰国するなど、流通方式のずさんさは、私たちもよくご存知のはず!でも会議に参加する約160ヶ国の締約国には、象や象牙の事情を理解し得ない国も多く、禁止続行提案のケニヤ政府代表・カフンブ(若いハーフの婦人)さんは、「このシステムは稼動していない。象牙取引を再開すれば、密猟密輸の引き金になり、象は再び絶滅の危機に」と強く反対し、論争は加熱していきました。

 奥田さんはナイロビの日本大使館に3年間駐在され、カフンブさんはケニヤ野生動物公社で、両者ともよく知った方です。会議の合間にそれぞれ胸の内を聞いてみましたが、論争も中盤の頃、アメリカから調停案が出されました。それは、「象牙年間取引の割り当ては認めないものの、貯蔵象牙の取引は認めよう」というもので、結果的に取引を認めるものです。大国の発言は大きく影響し、秘密投票の結果、南アフリカナミビアボツワナの3カ国に対して、一回限りの取引が認められてしまいました(取引の再開が認められたのは、これで2回目になります)。会議場入口では、チリの学生達が、「アメリカは象牙を密猟者に渡した。出て行け。」という垂れ幕を掲げていました。しかしザンビア象牙の売上を保護に利用するから、と主張するも、これまでの汚職まみれの政府が信用されず!)と、ジンバブエ(黒人が白人の占領する土地の返還を求めて血なまぐさい争いが続いているため、白人支持の欧米諸国が賛成票を入れなかった?!)については否決されました。

 勿論、この決定は、野生生物保護より多分に政治的、経済的意図を含んだものです。案の定、ケニヤでは「象牙は売れる」と受け取った密猟者が、象牙をナイロビのインド人地区パークランドに運ぶところを押収される、という事件が発生しました。このように、象牙取引の再開は野生象の密猟、象牙の密輸の再燃を煽る事となり、野生象に対して深刻な打撃を与えることになります。私達は、象牙取引の一切の禁止、すなわち、全ての野生象の議定書Iへの再登録を強く望んでいます。

 さて、日本政府から出されていた捕鯨再開は否決されました。会議場では「Wasting Time(時間の無駄だ)」とうんざりする気運が充満していました。でも、数種の亀、Whale Shark、Basking Shark(残酷に鱶鰭だけとって残りは海に捨てるだけ!サメについては最終日の本会議で再討議され、投票の結果逆転するという、劇的な決定でした。)、マホガニー(建材・家具などのために乱獲されて減少しました)は、議定書II に登録され、これらは喜ぶべき決定
です。

 経済産業省ら関係省庁の日本政府代表が、地球サミットワシントン条約などの国際会議でどのような発言を繰り返しているか、驚きです。また、カリブ海諸国NGOから、日本のODAが票集めのために利用されている、との声が上がりました。鈴木宗男」代議士とODAの薄汚い癒着を説明すると、詳しく知りたい、とのことでした。今後、ワシントン条約会議が、政治的、経済的駆け引きの場ではなく、本来の野生生物保護を第一に考える条約であることを願って止みません。

余談1;会議終了後はどの飛行機も満席で、ケニヤ帰国までに2日間の時間ができて、どう過ごそうかと思案していました。NGOのさよなら会でイスラエル政府代表のサイモン氏を紹介され、「アンデスを越えてコンドルを見に行こう。アルゼンチン・メンドーサで一泊し、レンタカーを割り勘にすれば、安くいけるから。」と誘われ、一緒に出かけることにしました。

 さて、この会議場では、一列目にケニヤ政府代表団、その真後ろの二列目が日本政府代表団という席順で、イスラエル政府代表団は三列目に座っていたのです。アンデス越えの車内で、サイモン氏は、「前後のケニヤ政府代表と日本政府代表の発言やその反応を真後ろで見ていたけど、なかなかの見物だったよ。」と笑っていました。ところで、コンドルは残念ながら一羽も飛んでいませんでした。

余談2;チリに向かう途中、ナイロビからの時差が南ア・ヨハネスバーグで1時間あり、ブラジル・サオパウロで4時間、チリ・サンチャゴで6時間(日本からだと地球の真裏で12時間)あり、中継地でいちいち飛行時間を合わせるのに苦労していました。そこで、前々から欲しいと思っていた、一つの時計に二つの文字盤がついた時計(南ア航空製35$)を機内販売で購入したところ、この機内販売にはラッフル券がついており、景品が当たりました。それは、ジバンシー
の「口紅」でした(時計より高価!)。日本に帰国の折、どなたか御所望の方がいらっしゃれば、差し上げます。

 最後に、次回のワシントン条約会議は、タイで行われる予定です。

神戸俊平

http://www10.ocn.ne.jp/~vken/index.html