【ねこまたぎ通信】

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 ヒロシマ発経世済民――小泉政権の何が誤っているか(2)成長無くして再建なし

仮置き

2005/05/03
http://www.janjan.jp/government/0505/0505016511/1.php


 小泉政権の公約だった財政再建に焦点を絞って、政策の誤りを検証します。小泉政権は、公債発行を30兆円に抑制するとして発足しましたが、結局達成できないまま今日に至っています。ここに、小泉政権の政策の主要な問題点が凝縮されています。

 ご覧のグラフは名目成長率を折れ線に、税収・公債年間発行額を棒グラフに表したものです。名目成長率がマイナスの年度には決まって税収が減っていることがわかります(内閣府HPおよび財務省HPより筆者作成)

 1995、1996年度は、名目成長率もプラスで税収も50兆円を超えていました。このころ、財政再建を急ぐべし、という声がマスコミなどでも高まりました。いわゆる六大改革を橋本総理(当時)はスタートしました。1997年度に、消費税の引き上げ、健保負担増などが行われました。

 この年度は税収は増えました。しかし、負担増は経済にデフレ圧力を加えました。そうした状況で、景気を良くしないままの金融「改革」を進めたため、金融不安も高まりました。かくて、翌年度には日本経済は大不況に陥りました。税収も大きく落ち込みました。経済を立て直すために公債も多く発行せざるをえなくなりました。

 その後、2000年度には名目成長率がプラスに転じ、税収は増え、公債年間発行額は減りました。

 しかし、2001年度、緊縮財政とともに、森総理(当時)へのブッシュ大統領の要求に従い、不良債権処理加速化を同時にスタートさせました。すると、同年度の経済成長率は再びマイナスに転じ、税収は再び落ち込み始めました。2002年度にはさらに税収は落ち込み、公債発行は増えました。

 2003年度には外需の好調さなどに支えられてかろうじて名目成長率はプラスに転じ、財政の悪化にも「歯止め」は掛かりました。しかし、歯止めが掛かったと言う程度であって、改善とは程遠い状況で、現在に至っています。

 財政を改善する(税収を増やし公債発行を減らす)には、名目成長率をまずアップさせるしかないことが、歴史の教訓として見て取れます。増税しても、成長率が大崩しては、却って財政再建にもマイナスであることは1997―1998年度の経過を見れば明らかです。

 名目成長率をアップさせるにはどうすれば良いか。小泉政権は「構造改革無くして成長無し」として、供給側で資源をシフトさせることに主眼を置いた対策を取りました。不良債権処理加速化(非効率な企業から効率的な企業へお金を移動させるという大義名分)しかり、規制緩和しかり、民営化しかりです(これらは一方で「年次改革要望書」など、アメリカの要求も背景に行われたことは見てのとおりです)。

 しかし、そもそも需要が低迷していることが、日本経済低迷の原因です。不良債権処理加速化は企業の倒産・失業の増大を招きました。当然税収にもマイナスの影響を与えました。むしろ景気を良くして、企業の状態を改善し、借金を返せるようにしたほうが今としてみればよかった(景気が良ければ不良債権も減る)のですが、後の祭です。

 今は、外需好調(中国経由での対米輸出の増加など)で一息ついています。しかし今度は、増税の圧力がのしかかろうとしています。年金保険料アップ、配偶者特別控除・老年者控除廃止、年金控除縮小、定率減税縮小・廃止などが既に実施されたり実施が予定されています。97―98年度の悪夢が再びよみがえります。

 むろん、同じ額の政府の支出を行うなら、より効率的に行うべきことは私も当然だと思います。しかし、今の状況で緊縮財政を行うことは自殺行為です。くどいようですが、今は反対に名目成長率を引き上げるために、積極財政を行うべきです。お金も余り、失業者も多くいる状況では需要拡大は雇用の増大、経済活動の拡大へとつながり、結果として財政再建につながるのです。いまこそ、憲法25条や27条を活かすような経済政策=経世済民を進めるべきです。人権無くして成長無し、成長無くして再建なしです。

 名目成長率をアップさせなければ財政再建すら成し遂げられない。歴史の教訓を活かせなければ、同じ轍を踏むことになるでしょう。

 敢えて言えば、ブッシュ政権は、アメリカにとって国益とはならない日本の積極財政による経済回復を要求することは無い(不良債権処理加速化などは国益になるので要求した)ので、「ブッシュ従属」の経済政策を続ける小泉政権もそれをしないでしょう。しかし、同じこと(緊縮財政による景気後退)を繰り返させるのは愚挙です。幸い、政局次第で政策転換の可能性が無いとは言いきれません。「ブッシュ従属」ではなく、日本の庶民のためになる経済政策を求め、運動を強めたいものです。


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(さとうしゅういち)

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特集「国会ウオッチ!」
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