【ねこまたぎ通信】

Σ(゜◇゜;)  たちぶく~~ Σ(゜◇゜;)

アメリカに選挙制度改革を!

「星川 淳@屋久島発インナーネットソース」#96から引用
http://innernetsource.hp.infoseek.co.jp/

お世話になっているみなさんへ(転送可)

「投票行った?」

 午後6時過ぎ、オフィスのある社会科学棟を出ようとすると、ケリー支持のワッペンを貼った若い見知らぬ学生から「投票行った?」と声をかけられました。私には選挙権がありませんから、I'm not a US citizen, I am a visiting professor from Japan. と答えると、一緒にいた女子学生とともに、「残念」との声がかえってきた。
 投票をすませた人たちの多くは、投票所でくれる I voted という赤いシールを胸などにつけている。投票していないと肩身が狭い雰囲気だ。

有権者数が事前に確定しない!! 当日でも有権者登録ができる!!

 いよいよ投票日です。現在11月2日(火)現地時間7時25分。ミネソタの投票所は8時に閉鎖します。キャンパス内の投票所をさきほど見てきましたが、6時22分から39分までの17分間に34人が投票しました。このうちの16人(48%)は、事前に有権者登録をしておらず、投票日の当日に有権者登録をしています。この投票所ではすでに2000人以上が投票したそうです。投票率が高いことは間違いありませんし、若者が熱心に投票している風景をまのあたりにしました。
 ミネソタはじめ6つの州では、投票日当日に有権者登録ができるのです。アメリカ国籍をもつ満18歳以上の人で、投票日の20日以上前からミネソタに住んでいる証明ができれば(公共料金の領収書などでもOK)、投票できるのです。
 日本では、住民基本台帳があり、住所を移すと、選挙人名簿に自動的に名前が登録され、居住地で投票することができます(最低3ヶ月の居住が必要)。日本では、被選挙権者の名前と数は、投票日前に確定しています。有効投票率はその日のうちに市町村の選挙管理委員会ごとに発表されます。
 そもそもアメリカには住民基本台帳という制度がありません。選挙権は18歳以上からもてますが、18歳以上人口の正確な統計や台帳はありません。有権者登録をしないと投票権をもつことができません。前回2000年の大統領選挙でのミネソタ州投票率は、州の選管によると、245万8303人が投票し、投票率69.40%という公式発表ですが、分母になる18歳以上の人口は、354万7000人という丸い数字です。連邦全体でも、18歳以上の人口2億581万5000人という丸い数字です。投票率の分母は、粗い推計値しかないのです。しかも投票した人のうちの18.8%は、当日の有権者登録でした。2000年の連邦全体の投票率は51.3%でしたから、ミネソタ州投票率は18%も高いのですが、その理由は、当日の有権者登録を認めていることにあるようです。
 メディアは、この2ヶ月間毎週世論調査結果を発表し、大騒ぎをしていますが、ちっとも前回選挙の詳しい投票率が報道されません。なぜだろうと不思議に思っていましたが、そもそもアメリカには正確な投票率がない!!のです。
 今回、Time 誌(11月1日号全米版)ほかで、選挙が公正になされたかをめぐって、投票日明けの3日から、多くの州で異議申し立ての訴訟がおき、前回同様に選挙結果の確定までしばらく時間がかかるのではないかと予想されています。アフリカ系の有権者などに対する共和党系の立会人からの嫌がらせ的な投票妨害の可能性が予想され、民主党系は選挙の監視にあたるなど警戒を強めています。ミネソタ大のキャンパス内の投票所でも、NGOの女性弁護士2人が選挙が公正に行われているかどうかウォッチしていました。
 問題の根本的な背景は、そもそも「正確な」選挙人名簿がないということにあるのです。

えっ教会が投票所?

 「歴史的な瞬間に立ち会っているという感覚を大事にしろ」というのは、先月23日に亡くなられた恩師の1人高橋徹先生の教えです。現場に出かけて、実際にわが目で観察することは社会学の基本です。
 私は昨夜、ミネソタ州の選管のサイトで、自分の居住地の投票所の場所を確認し、今朝11時4分から35分まで30分観察しました。まず驚いたのは、私の居住地の投票所がカトリックの教会だったことです。確認すると、人口約37万人のミネアポリス市内の合計58カ所の投票所のうち、11カ所は教会です。政教分離は近代国家の基本原則です。教会が投票所というのは日本人には理解しがたいことです。日本で寺院や神社が投票所になるようなことは考えたいことです。ディべートではどちらの候補者も、自分は敬虔なクリスチャンだということを強調し、最後に神は我が国を祝福していると付け加えました。アメリカは政教分離の徹底していない宗教国家なのです。

本人確認は住所とサインだけ

 事前に有権者登録をしていれば投票は簡単です。住所と名前を聞かれて、登録有権者名簿の所定欄にサインをして、投票用紙と引き替える緑色のカードをもらいます。日本では入場券と生年月日が必要ですが、本当に自分が登録有権者本人であるかどうかを、ミネソタ州では、住所と名前でしか確認していません。これだと意図的な替え玉投票は簡単のように思えます。州を超えた二重投票の可能性も否定できません。
 ミネソタのように混乱の少ない州の投票所をウォッチしてさえも、これだけの問題を感じます。
 アメリカは本当に公正な選挙をしているのだろうか。公正で透明な選挙制度をもっているのだろうか、というのは、今回の選挙戦のウォッチをつうじて、また最近の報道をつうじて私が痛感したところです。他国に、民主的な選挙制度を力づくで押しつける前に、まず自分の国で、公正で民主的な選挙で大統領を選んでくれ、と私はつぶやきたくなります。
 前回2000年の選挙のように、得票率で上回った候補者が負けるような選挙制度は根本的におかしいのです。
 大統領選の候補者は、ニューヨーク州カリフォルニア州のような、もう形勢がはっきりした州にはほとんど顔を出さず、終盤は、激戦区のウィスコンシンオハイオ、フロリダなどをもっぱら回っています。激戦区の1つ、ミネソタ州にも、両陣営から、10月に正副大統領の候補者が何度来たことでしょう。この代理人への投票という仕組みもかなり変です。
 選挙制度に関して、アメリカはこのように「後進国」です。このような「後進」的な仕組みのもとに、世界中が1年近くも振り回され、国政も外交もこの数ヶ月は完全にストップということを繰り返してきました。そもそもイラク戦争自体が、ブッシュの再選戦略と密接に関わっています。もし彼が1期目の大統領でなかったら、イラク開戦はなかった公算が大です。
 公正で、民主的な選挙で、大統領を選んでくれ、世界中の人びとがまずアメリカにそれを求めるべきです。「3年以内に選挙制度を抜本的に改正し、公正で、民主的な選挙で、大統領を選ぶことをアメリカ合衆国に求める国連決議」、私は、この提案を、国民の1人として日本国政府に求めたい。

 長谷川公一
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 はせがわ こういち(HASEGAWA Koichi)
 hasegawa3116@yahoo.co.jp
 (来年3月末まで海外出張中、詳しくは下のWebをご覧ください)
 http://www.sal.tohoku.ac.jp/~hasegawa/
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関連
http://hiddennews.cocolog-nifty.com/gloomynews/2004/11/by.html
米国の民主化・自由化こそ最優先課題じゃないか?(爆)

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ちなみに米国大統領選挙結果は,私の直感通りだった.(ワラ