【ねこまたぎ通信】

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The Age of Pandora 008 by Natsuki IKEZAWA 09/04/2004

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 パンドラの時代 008
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 3人の誘拐について大急ぎで


 3人の日本の民間人がイラクで誘拐されました。
 これについて大急ぎで考えをまとめました。

 深刻な事態です。事実がどんどん先行して、どう考えればよいのか、論の方が追いつかない。
 なんとか整理してみたいと思います。
 誘拐は卑怯だという意見があります。
 そのとおり、弱い者をねらう誘拐は卑怯千万です。
 けれども、卑怯はぜったいの尺度ではない。
 敵と味方を分けて、こちらは正義と言い張るのでないかぎり、卑怯の度合いは相対的です。
 卑怯と言って非難すれば、彼らはその通りと答えた上で、では民間人がいるところにロケット弾を撃ち込むのは卑怯ではないのか、劣化ウラン弾を使うのは、遠くから巡航ミサイルで首都を破壊するのは卑怯ではないのか、と問い返す。

 郡山さんと高遠さん、それに今井さんは会社や官庁の命令ではなく、自発的にイラクに行きました。
 危険なのに行った。警告はしてあった、と外務省などは言っています。
 たしかに彼らは危険を承知で行った。
 イラクの現状を見て報道し、子供たちに手を貸し、平和の実現を早めるために行った。
 残念ながらこの目的は彼らを守ることになりませんでした。平和のための活動家であることより、イラクに軍を送り込んだ日本という国の国民であることの方を相手は重視した。
 彼らは行くべきでなかった、と言う資格はぼくにはありません。
行くか行かないか、アンマンでそれを判断できたのは彼らだけです。
危険は大きい。しかし自分たちが行ってしなければならないことの意義も大きい。
 ぼくは彼らの判断に敬意を表し、無事を祈ります。

 では、今、日本はどうすべきか?
 自衛隊を撤退させればいい。それ以外に取るべき道はありません。

 ただし、3人が誘拐されたから、その生命を救うために撤退するのではない。
 それでは取引になってしまう。
 今後、日本に対して何か強い要求を持つ者に対して、日本の民間人を誘拐すれば目的はかなうという前例を与えることになる。
 それこそテロに屈することになる。

 そうではなくて、自衛隊を復興支援という名目のもとに派遣したことが間違いであったことを公式に認め、今のイラクを平和に導くために必要なのは武力ではないことを認め、その上で撤退を速やかに実行する。
 言い換えれば、誘拐とは無関係に、政策の転換を内外にはっきり表明する。

 政治というのは日々変わっていきますから、過去に遡って責任を追及するばかりでは今の現実を見失いかねない。去年の3月20日にアメリカ軍がイラクに対する戦争を始めたのは明らか誤りでした。
大量破壊兵器などなかった。
 アメリカを支持した日本政府の姿勢も誤りだった。
 しかし、それはしばらく措きましょう。

 たった今、問題なのは、戦闘終結をブッシュ大統領が宣言したあとでアメリカが取ってきた政策がことごとく間違っていたことです。
その結果、事態はますます悪くなっている。ブッシュ政権が正しいという前提に立った日本政府の自衛隊派遣にも根拠はなかった。

 自衛隊が復興支援のために行っている、という論法は相手が認めないかぎり意味がありません。
 NGOに任せれば年間1億円以下の予算で10万人分の水が供給できる。自衛隊は年間300億を超える予算で、1万6000人分を供給しているにすぎない。その一方で自衛隊は武装したアメリカ兵を運んでいる。

 彼らの駐屯の主たる目的が給水でないことはイラクの人々の目にも明らかです。
 何よりも自衛隊は軍隊です。威圧と恫喝のための組織です。イラク国民の目には星条旗に縫いつけられた小さな日章旗しか見えていないでしょう。

 自衛隊を引き上げましょう。

 日々の現実はいつも「今日」から始まります。過去の誤りの積み重ねの上に今日の苦境があるわけだけれど、新しい今日はリセットが可能です。

             (池澤夏樹 2004−04−09)


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