【ねこまたぎ通信】

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 NHKは自滅です

NHK特番問題:政治家に配慮、認定−−東京高裁判決

http://www.mainichi-msn.co.jp/entertainment/tv/news/20070130ddn001040003000c.html


戦時下の性暴力に関するNHKの番組を巡り、取材協力した市民団体が「政治的圧力で事前説明と異なる内容で放映された」として、番組を改変(判決では改編)したNHKと制作会社2社に4000万円の賠償を求めた訴訟の控訴審判決が29日、東京高裁であった。南敏文裁判長は、NHK幹部が放映前に安倍晋三首相(当時は官房副長官)らに面談し「相手の発言を必要以上に重く受け止め、その意図をそんたくして改編した」と初めて認定し、NHKなど3社に200万円の支払いを命じた。NHKは即日上告した。

1審・東京地裁判決(04年3月)は、取材を担当した制作会社ドキュメンタリー・ジャパンのみに100万円の賠償を命じ、NHKとNHKエンタープライズの責任は認めていなかった。

問題とされたのは01年1月30日に教育テレビで放映された「ETV2001 問われる戦時性暴力」。「戦争と女性への暴力」日本ネットワークバウネット)が00年12月に開いた「女性国際戦犯法廷」を取り上げたが、「ありのまま伝える」との事前説明と異なり旧日本軍の性暴力被害者の証言や判決がカットされたとして同ネットが訴えた。

判決はまず、放送事業者の編集権は憲法上尊重されるとしながら、ニュース番組と異なり本件のようなドキュメンタリー番組などでは「特段の事情」がある場合、編集権より取材対象者の番組への期待と信頼が法的に保護されると1審と同様の判断を示した。今回は取材の経緯から「特段の事情がある」とし、その上で、番組改変は「期待と信頼を侵害した3社の共同不法行為」と認定。内容変更を原告側に伝えなかったことも「説明義務違反」と指摘した。

改変の理由について判決は「NHK予算の国会審議に影響を与えないように、松尾武放送総局長(当時)らが安倍官房副長官(同)らと接触した際『公正中立な立場で報道すべきだ』と指摘された。発言を必要以上に重く受け止め、当たり障りのない番組にすることを考え、現場の方針を離れて編集された」と認定。一方で「政治家が番組に具体的な話や示唆をしたとまでは認められない」と直接的な圧力は否定した。

NHKは「編集の自由」を主張したが、判決は「改編は自由の乱用で、編集権の放棄に等しい」と退けた。【高倉友彰】


 ◇「不当」と上告−−NHKの話

判決は不当で極めて遺憾。直ちに上告手続きを取った。取材相手に期待権が生じるとしたが、番組編集の自由を極度に制約する。国会議員らの意図をそんたくして編集したと一方的に断じているが、公正な立場で編集した。


 ◇NHKエンタープライズの話

番組取材、編集、表現の自由を制約する判決で、到底認めることはできない。直ちに上告の手続きを取る。


 ◇ドキュメンタリー・ジャパンの話

判決は表現の自由の根幹を成す取材の自由を脅かすもので到底受け入れがたい。

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 ■ことば

 ◇NHK番組改変訴訟

 NHKの旧日本軍の従軍慰安婦問題を取り上げた特集番組をめぐり、取材に協力した市民団体が「説明した趣旨と異なる番組を放送された」などとしてNHKなどを相手に損害賠償を求めた。1審の東京地裁は孫請けの制作会社だけに100万円の支払いを命令。朝日新聞は05年1月、安倍晋三首相(01年当時は官房副長官)らが放送前に「偏った内容だ」などとNHKに指摘していたと報道。控訴審では、政治家の圧力により番組が改められたのかが新たな焦点となった。

毎日新聞 2007年1月30日 大阪朝刊

NHK番組改編訴訟の判決要旨 東京高裁

http://www.toonippo.co.jp/news_kyo/news/20070129010005051.asp


東京高裁で29日言い渡されたNHK番組改編訴訟の控訴審判決要旨は次の通り。

 【内容への期待権

「戦争と女性への暴力」日本ネットワークバウネット)側が開いた「日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷」を取り上げた番組の企画は、NHKから制作委託されたNHKエンタープライズ21(現NHKエンタープライズ、NEP)とNEPから制作を再委託されたドキュメンタリージャパン(DJ)の担当者が立案し、NHKの担当者が賛意を示し、教育テレビでの放送を前提に共同して練り上げた。DJが取材を行い、合同で繰り返し編集し、共同制作として放送された。

番組制作の編集の自由は、取材、報道の自由の帰結として憲法上も尊重され、保障されなければならず、取材対象者が何らかの期待を抱いても、それで編集、制作が不当に制限されることがあってはならない。

取材に応じるか否かは自由意思に委ねられ、どのように編集、使用されるかは意思決定の要因となる。特にドキュメンタリー番組などでは、どの範囲でどう取り上げられ意見や活動がどう反映されるかは重大関心事だ。

編集の自由と取材対象者の自己決定権との関係は、取材経過などを検討し、取材者と対象者の関係を全体的に考慮して、対象者が期待を抱くのもやむを得ない特段の事情が認められるときは、編集の自由も一定の制約を受け、番組内容への期待と信頼が法的に保護される。故意、過失での侵害は不法行為となる。

DJ担当者の説明やバウネット側の協力から、番組は法廷手続き冒頭から判決までの過程を被害者証言も含め客観的に概観できる形で取り上げるドキュメンタリー、またはそれに準ずるものになるとの期待と信頼を抱いたことが認められ、法的保護に値する。


 【侵害行為の有無】

放送された番組は起訴事実や判決内容が削除され、法廷自体のさまざまな争点や問題点を抱えているコメント部分が付加されるなどの改編がされ、バウネット側の認識とは相当乖離した内容になっており、期待と信頼に反し、これを侵害するものだったというべきだ。

2001年1月26日、普段は番組制作に立ち会うことが予定されていない松尾武・放送総局長(当時)、国会担当である野島直樹・総合企画室担当局長(同)が立ち会って試写が行われ、意見が反映された形で1回目の修正がされた。

同月29日に再び試写があり、両人と番組制作局長、教養番組部部長だけの協議で、指示が制作担当者に伝えられ修正された結果、ほぼ完成した番組になった。放送当日にさらに一部の削除が指示され番組が完成。26日以降、制作に携わった者の制作方針を離れた形で編集された。

理由を検討すると、(1)放送前なのに右翼団体からの抗議など多方面から関心が寄せられNHKとしては敏感になっていた(2)NHK予算の国会承認を得るための説明時期と重なり、番組が予算編成に影響を与えないようにしたいとの思惑から、説明のために松尾総局長と野島担当局長が国会議員らとの接触を図った際に、番組作りは公正・中立であるようにとの発言がされ、両人が必要以上に重く受け止め、意図を忖度してできるだけ当たり障りのない番組にすることを考えて試写に臨み、その結果直接指示、修正を繰り返して改編が行われた−と認められる。

バウネット側は、政治家らが番組に対し直接指示し、介入したと主張するが、面談の際に政治家が一般論として述べた以上に具体的な話や示唆をしたことまでは認めるに足りない。26日以降の改編は、当初の趣旨とはそぐわない意図からされた編集行為で、期待と信頼に対する侵害だ。


 【説明義務違反】

放送番組の制作者や取材者は、内容やその変更について説明する旨の約束があるなど、特段の事情があるときに限り、説明する法的な義務を負う。本件ではバウネットに期待と信頼が生じ、NHK側はそれを認識しており特段の事情がある。

説明を受けていれば番組離脱や善処を申し入れたり、他の報道機関に実情を説明して対抗的な報道を求めたりできた。説明義務が果たされなかったため、これらの手段が取れず、法的利益が侵害されたというべきだ。

NHK側は「報道の自由を維持できない」と反論するが、改編の経緯からすれば、NHKは憲法で尊重、保障された編集の権限を乱用、逸脱して変更を行ったもので、自主性、独立性を内容とする編集権を自ら放棄したものに等しい。


 【結論】

NHKの責任が重大であることは明らかだ。NEP、DJは下請けとして参加し、契約上は改編に原則として従うべき立場にあったことから、責任はより軽い。総合考慮すれば、バウネットへの賠償は、行為のかかわりの重大性、主導性を勘案してNHKが200万円、NEP、DJは連帯してうち100万円が相当だ。

共同通信社