【ねこまたぎ通信】

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 イラクに「非戦闘地域」などない

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イラク居残り 空自の役割は 地元民近寄らず タクシーも命がけ

http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20060719/mng_____tokuho__000.shtml


 イラクから陸上自衛隊は完全撤収した。戦闘による犠牲者は一人も出さず、人道復興支援任務を終えた。一方、継続して派遣され、しかも活動が拡大されるのが、クウェートを拠点に輸送任務を担当する航空自衛隊だ。武装勢力による攻撃が続くバグダッド空港にも飛ぶことになる。同空港も「非戦闘地域」と政府は強弁するが、そこまでして居残る空自の役割とは−。

 「非戦闘地域という言い方は当てはまらない」

 イラクで取材を続けるジャパンプレスのジャーナリスト・山本美香氏は、苦笑する。
 「半年ほど前、バグダッド空港にいたら、敷地内にロケット弾が七、八発、連射で撃ち込まれ、すごいごう音と揺れだった。空港職員たちは『しょっちゅうだよ』という反応だったし、現地特派員たちも、ちょっとした着弾では記事を書かないぐらい日常化している。C130輸送機に着弾しない保証は、どこにもない」

 額賀福志郎防衛庁長官は先月の衆院イラク復興支援特別委員会で「バグダッド空港は非戦闘地域であり、自衛隊の活動対象になる」と説明したが、山本氏は現場の現実との開きに半ばあきれ顔だ。

 空自はC130輸送機で米軍などの輸送支援を継続するが、イラク北部やバグダッド空港にも離着陸することになる。これまでも輸送機に乗る隊員はヘルメットと防弾チョッキを着用してきた。さらに空自広報担当者は「現時点で考え得る最高レベルの技術で対策を取った」と話す。

■最高レベルの装備というが…

 具体的には▽ミサイルが飛んできたことを探知する装置▽輸送機からおとりの熱源を飛ばし、赤外線誘導ミサイルの照準を回避するフレア▽コックピットの上に首だけ出して外を監視するための半球形の窓バブルウインドー▽コックピットまわりの防弾板▽被弾しても燃料に引火しにくくする防弾フォーム−などを装備したという。

 だがバグダッド空港を行き来する航空機が、武装勢力から攻撃を受けてきたのも事実だ。一昨年一月、米軍の大型輸送機が、同空港離陸直後に地上から攻撃を受け、エンジン一基が爆発、緊急着陸した。昨年一月にもバグダッドから飛び立った英軍C130輸送機が攻撃を受け墜落、乗員十人が死亡した。一昨年十一月にはイラク北部で、米軍のC130輸送機が地上からミサイル攻撃を受けた。左翼エンジンに被弾し、着陸までの約十分間、火を噴き続けたという。

 イラク人もバグダッド空港を敬遠する。「空港入り口に自動車爆弾が突っ込んだこともあるし、周辺には多国籍軍に敵対的な人々が住んでおり、市民は空港に近寄りたがらない。空港とバグダッド市内はタクシーで三十分ぐらいだが、運転手も命がけだから十万円ぐらいの料金を取る。空港に出入りする時は、銃を携えたボディーガードを同乗させ、前後にも車を配置して時速百キロで突っ走る必要がある」と山本氏は言う。

 さらに「空港周辺はヤシの林もあれば、民家もあり、空港が丸見えのポイントが多数ある。空港警備が厳重になったことで、逆にむやみな狙い方になっている」と指摘する。

 軍事評論家の神浦元彰氏は「携帯型の対空ミサイルは(狙撃手の安全上)一〇−一五度、上向きで撃つが(狙撃手に)背中を向けて離陸する航空機は、それにちょうどよい。C130だったらエンジンが大破し、翼が折れる事態もあるのではないか」と心配する。

 イラクに派遣した自衛隊五千五百人のうち、帰国後六人が自殺している。原因は不明だが、派遣中は過度の緊張を強いられていたことは事実だ。空自も今後、危険が増す。早速今月、空自の交代要員約百人が現地に向かった。空自の活動拡大で自衛隊は「撤収」ではなくただの「配置換え」との印象を受ける。

 小泉首相陸自撤収について「一発の弾も撃たず、一人の死傷者も出さず終えることができたのは大変うれしい」と自画自賛した。だから残留する空自も同様に犠牲を出さず、任務を全うできるだろうと言いたいようだが、政治評論家の森田実氏は「残留する空自が担う役割は、陸自とは全く違う」と指摘する。

 「陸自の派遣はブッシュ政権を世界の中で孤立させないためという政治的な狙いを持っていた。これに対し、空自は実質的に米軍と一体化し、軍事行動を行おうとしている」

 保坂展人衆院議員(社民)は残留する空自の役割を「空飛ぶトラック」と形容する。「サマワ陸自は限られた地域で、人道復興支援という枠組みにとどまったが、空自の役割は限定されていない。水や薬品だけを運ぶわけではないはずだ。米兵を輸送する任務を与えられれば、米国の戦争に巻き込まれることになる」と危ぐする。

 その上、政府・与党内では、今年十二月にイラク特措法が期限切れを迎えるのに備え、国連などの決議なしに自衛隊の迅速な海外派遣を可能にする「恒久法」の制定に向けた議論が出始めている。

 安倍晋三官房長官は「自民党で検討が行われている」と言い、額賀長官も「何か起こったときに、新しい法律をつくるのではなく、その時の状況判断で自衛隊の活用ができる環境をつくっていくことがこれからの課題だ」と説く。恒久法問題が次期政権の課題の一つになるのは間違いない。

 これに国際教養大学の白鳥令特任教授(政治学)は「急激に変わる現在の国際情勢下では、むしろ恒久法ではなく時限を定め、そのたびに更新するかどうかを議論するサンセット法(時限立法)で対処するのが世界の趨勢(すうせい)だ」と反論する。

 恒久法制定は、自衛隊を派遣するか、しないかなどの重要な決定を内閣の判断に任せてしまうことになる。サンセット法は国民の間に議論がある事柄について、国民の目が届くという利点がある。「イラク特措法もサンセット法だったおかげで、この時期に陸自が撤収できた。これが恒久法だったらできなかっただろう」と白鳥氏は指摘する。

 恒久法制定は日本独自の判断で自衛隊を海外に派遣する「普通の国」に転換させるとされる。しかし森田氏は「現実には米国に追随することにしかならない」と喝破する。

 「自衛隊イラク派遣も国連決議に基づくものではなく、米国の要請に応じただけのこと。このままでは自衛隊は米軍の下請け軍隊になってしまう。その危険が目前に迫っているのに、どこからも反対の声は聞こえてこない。犬養毅首相が殺害された五・一五事件(一九三二年)のとき、あるジャーナリストは『誰も発言しないことこそが最も恐ろしい』と書いた。今、その状況と似てきている」

■「多国籍軍輸送力 十分のはずだが」

 神浦氏は空自隊員の気持ちをこう代弁する。「そもそも、多国籍軍の輸送力で足りているのに、ブッシュ大統領から言われたから(空自を残す)というのが本当のところ。自衛隊員は、おかしいと思っても、自分が拒否すれば別の隊員が行かされるから、黙って行くしかない。そんな彼らの安全を、本当に保証できるのか。空自としては、たまらない話だろう」

<デスクメモ>

 「陸自はおにぎり、海自はカレー、空自はハンバーガーを食べる」。気質の違いを表現した言葉だ。陸自は各部隊に地元出身が多く郷土愛が強い。海自は伝統を重んじる。空自はエリート意識高く、アメリカナイズされているという。空自は戦後出発した部隊で、兵器も訓練も米軍と二人三脚。一体化には適任? (鈴)