【ねこまたぎ通信】

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 チェチェンニュースの気になる記事

■独立派・サドゥラーエフ大統領の殺害について

チェチェン独立派のサドゥラーエフ大統領が、6月17日の早朝に親ロシア派部隊によって殺害されたというニュースが入った。独立派のザカーエフ外相がこれを認めたので、おそらく確かなのだろう。

サドゥラーエフのあとは野戦司令官・副大統領のドック・ウマーロフが繰り上がるようだが、選挙を経ずに大統領が交代していくと、権威の低下は否めない。05年3月のマスハドフの暗殺の後、サドゥラーエフの1年3ヶ月の任期の中で目立った動きはなく、「独立派の実権は、モスクワの劇場占拠など数々のテロ事件に関与したとされるバサエフ野戦司令官らに移っており、チェチェン情勢に与える影響は少ないと見られる」[5/17 朝日]という指摘は大体正しいのではないだろうか。

●この事件の意味

ウマーロフの大統領就任が実現すれば、独立派の実権は、政治家から野戦司令官に移ることになり、チェチェン情勢の転換点の一つ(悪いほうへの)となる可能性がある。

事件が示す特徴を私なりに書くと、これは今までも見られた、ロシア側の拒否主義・暗殺主義の例の一つだと思う。ロシア側との交渉姿勢を多少でも持った人物から、順番に消されていき、残るのはロシア側との徹底対決を主張する野戦司令官だけになってきている。(ウマーロフについて私は不勉強だが、とりあえずインタビュー記事あたりを読んでみる)
●親ロシア派が殺害を実行したとすれば・・・

サドゥラーエフの殺害を、おそらくラムザン・カディロフが請け負ったのは、もしロシア政府が、交渉の相手としての独立派地下政府を認めた場合、自分たち親ロシア派政権の存在意義がなくなってしまうという計算もあるはずだ。またこの場合、ロシア側による暗殺攻撃というより、チェチェン人同士の内紛または内戦というイメージに近くなり、ロシア政府にとって好都合だ。今後はますます親ロシア派を手先に使った攻勢が強まるだろう。見かけ上の「内戦」は、現実のそれへと変化していく恐ろしい可能性があるのだが。

●ロシア政府と過激派の「合作」

チェチェンの権力は過激派に移った」とする見解は、拒否・暗殺主義を結果として補強、あるいは追認している。こういうのを、遂行的というのだろうか。「そんな連中と交渉など、できるわけがない」と言いたいのは、誰よりもプーチン政権だからだ。99年に第二次チェチェン戦争がはじまって以来のロシア政府の主張は、「和平交渉に値する相手はいない」というものだ。事実はそうでないにも関わらず、いないと言い続けるためには、交渉の可能性を持った人物を消し続けるしかない。私個人はバサーエフとでも誰とでも、平和のためなら交渉すべきだと思うのだが。

さらに、今回のサドゥラーエフ殺害のわずか2日前、バサーエフは2004年のアフメド・カディロフ(親ロシア派大統領)暗殺を「自分が5万ドルで某人物に依頼した」と、ビデオテープを使って公表し、各国のメディアに流れた。意味の読み取り方は何通りもあるとはいえ、事件はそういうタイミングで起こっている。

私は、戦争を続けたいプーチン政権と、同じく戦争を続けたいバサーエフたちの合作によってチェチェン戦争が続いているのだと考えている。こうした合作説、あるいは陰謀説には批判も多いのだが、実際の打ち合わせのあるなしには関係なく、結果として両者の意図と推移は一致している。イングーシほか、北カフカスを旅行してもバサーエフは殺されることがなく、チェチェンを出ないマスハドフや、マスハドフ系譜にある政治家は次々と潜伏地で殺されていく。そして戦争は終わらない。

●取り残される人々

想像してみると、カディロフ暗殺を得意に公表して再び「勇名」をはせたバサーエフは、その翌々日のサドゥラーエフ殺害のニュースを知り、ある種の孤独感を抱いたのではないだろうか。自分がこうして交渉の不可能性の象徴として利用されていることに気づくセンスが残っているとすれば。彼は、浜辺の引き潮の中の石ころのように取り残されようとしている。

けれど、本当の意味でこの殺人ゲームから取り残されているのは、ゲームとはまったく別のレベルにいる人々だ。たとえば、チェチェン内の10万人の難民や、5万人のイングーシの難民、数知れない、南コーカサスやヨーロッパにいる難民たち、それから、ロシア軍の空爆で家族を失い、掃討作戦で拉致され、消された人々にとってこそ、戦争は災厄なのだと思う。(大富亮)


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 Заявление МИД ЧРИ: http://chechenpress.net/events/2006/06/17/11.shtml
 サドゥラーエフの人物情報:http://chechennews.org/basic/biograph.htm#sadulaev
チェチェン独立派の後継大統領を殺害 ロシア治安当局」[6/17 朝日] :
 http://www.asahi.com/international/update/0617/012.html
「ロシアマスコミ、サドゥラーエフ大統領殺害を報道」[6/17 ChechenWatch]
 http://groups.msn.com/ChechenWatch/general.msnw?action=get_message&mview=0&ID_Message=1922
アフマド・カディーロフ抹殺には5万ドルを支払った」[6/15 ChechenWatch]
 http://groups.msn.com/ChechenWatch/general.msnw?action=get_message&mview=0&ID_Message=1919


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