【ねこまたぎ通信】

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 アフリカは世界の光となりうる

紛争続く04年のアフリカ一部で内戦終結の動きも

問われるAUの能力、南部では民主的政権交代

 紛争、HIVエイズ、貧困などの深刻な問題を抱え、世界で最も発展が遅れた地域のアフリカ。内戦や悪政で国家は疲弊し、独立以後も人々の暮らし向きは一向に改善されていない。国際支援に頼る国が多い中、昨年は南部アフリカ各国で平穏に政権交代が成され、スーダンやアフリカ中部などの紛争地域では内戦終結に向けた動きが出るなど、アフリカ各国の自助努力も垣間見えるようになってきた。紛争をめぐる動きを中心に二〇〇四年のアフリカを振り返ってみる。
ヨハネスブルク・長野康彦)
 昨年、アフリカにおける希望的ニュースと言えば、各国で内戦終結の動きが出てきたことだろう。スーダンでは北部のイスラム政府と南部のキリスト教徒を主体とした反政府勢力が歩み寄り、年明けの九日にはケニアで包括和平協定に調印、二十一年間で二百万人の犠牲者を出したアフリカ最長の内戦が終結した。西アフリカのコートジボワールでは昨年、政府と反政府勢力の武力衝突が再発し、内戦への発展が懸念されたが、旧宗主国フランスが迅速に武力介入し、アフリカ連合(AU)から調停役に任命されたムベキ南アフリカ大統領が和平交渉を主導。政府と反政府各勢力が武装解除憲法改正などを含めた和平案合意に達成し、全面戦争は避けられた。ソマリアでは武装各派からなる連邦議会が発足し、十五年続いた内戦による無政府状態から脱出、民主化への貴重な一歩を踏み出した。
 アフリカ中部ウガンダでは政府と反政府勢力「神の抵抗軍」(LRA)の内戦開始から十八年目に突入したが、双方が十二月、十年ぶりに和平会合を行い、内戦の早期終結に向け努力することで一致した。しかし、政府に対する不信感から反政府側が和平協定調印には慎重な姿勢を見せ最終合意にはいたらず。隣国のブルンジ内戦をめぐっては、AUや南アフリカが調停を重ねてきたもののらちが明かないため、六月、和平交渉の権限を国連に移譲。アフリカで最も解決困難な民族紛争とされる同内戦の和平プロセスは新たな局面を迎えた。
 紛争国として名高いアフリカ中部のコンゴ(旧ザイール)は昨年、クーデター未遂などの不穏な事件が起き、〇二年の停戦合意後も各地で部族間紛争はやまず、〇三年七月に発足した暫定政権も薄氷を踏むような状況が続いている。AUを主体とした和平努力が続けられているが、近隣のウガンダブルンジなどとも関係した部族間の対立感情が複雑に絡み合い、些細(ささい)なことが武力衝突に発展しかねず、和平プロセスもいつ崩壊するか分からない緊迫した情勢が続いている。
 昨年のアフリカにおけるもう一つの希望的出来事と言えば、南部アフリカ各国で平和裏に政権交代がなされたことだろう。南アフリカではアパルトヘイト終焉(しゅうえん)から十周年を迎え、総選挙では与党アフリカ民族会議(ANC)が圧勝、ムベキ政権は二期目に入った。ナミビアモザンビークで行われた総選挙も平穏無事に終了し、「終身大統領」と揶揄(やゆ)されたヌジョマ、シサノ両大統領が後継に席を譲るなど、健全な民主化への動きが見られた。アフリカで政権交代と言えば流血の事態が付きものだったが、今回、アフリカに好ましい変化が起きていることを内外に予感させる結果となった。同地域各国が加盟する南部アフリカ開発共同体(SADC)では、こうした民主化への流れを今後も維持していきたいとしている。
 ただ、同地域で問題なのがジンバブエスワジランドジンバブエは最近、米国のライス次期国務長官北朝鮮やイランなどと並ぶ「圧政国家」と名指しした国だ。暴君ロバート・ムガベ大統領の十八年に及ぶ独裁政治で、人権抑圧・言論弾圧が日常茶飯事に行われ、経済も危機的状況に陥っている。スワジランドはアフリカ最後の専制君主国家で、貧困とHIVエイズにあえぐ小国だが、国民が困窮する中、国王ムスワティ三世の豪奢(ごうしゃ)な生活が国際的非難を浴びている。アフリカの優等生と呼ばれるボツワナ地域大国南アフリカの近隣両国が、安定した経済政治力で地域の復興にどれだけ貢献できるかが重要になってこよう。
 アフリカで現在、喫緊の問題は、国連が「史上最悪の人道危機」と呼ぶスーダン西部ダルフール地方の民族紛争だろう。国連をはじめとする国際社会の調停や圧力にもかかわらずスーダン政府の対応は鈍く、解決の糸口は見えていない。世界のHIVエイズ感染者の七割がサハラ砂漠以南に集中しているのもアフリカの抱える深刻な問題である。
 〇五年のアフリカは、まずもってこうした紛争を終結させることが最重要課題といえ、各国が国家再生のスタート地点に着くことができて初めて、貧困やHIVエイズなどの問題にも本格的に取り組んでいけるようになる。欧州連合(EU)を手本として〇二年創設され、紛争や独裁政治の根絶を重要目的に掲げるAUの紛争解決能力が問われることになろう。

【2004年アフリカの主な出来事】
2月 スワジランド、貧困とHIV/エ
   イズで国家非常事態を宣言
3月 赤道ギニアでクーデター未遂、サ
   ッチャー元英首相の息子はじめ80
   人以上逮捕
   アフリカ連合、「アフリカ議会」創
   設。紛争などアフリカ諸問題解決
   の意志決定機関に
   コートジボワールで警察が反政府
   デモ隊に発砲、25人死亡
   コンゴ民主共和国(旧ザイール)で
   クーデター未遂、15人逮捕
4月 ルワンダ大虐殺から10周年
   南アフリカ民主化10周年、ムベキ
   政権2期目に
6月 コンゴ民主共和国各地で市民が暴
   徒化、国連事務所など襲撃
   コンゴ民主共和国でまたクーデタ
   ー未遂
7月 スーダンダルフール問題、和平
   交渉決裂
   ブルンジ和平交渉難航、年内総選
   挙の予定延期
8月 モーリタニアでクーデター未遂、
   兵士30人拘束
11月 コートジボワールで紛争再発、政
   府軍が反政府支配地域を空爆
   コンゴ民主共和国国連職員・兵
   士らによる難民女性への性的虐待
   問題が表面化
   ナミビアで総選挙、与党圧勝、新
   大統領選出
12月 モザンビークで総選挙、与党勝利
   で新大統領選出
   コートジボワール、政府・反政府
   が和平合意
   ウガンダ、政府・反政府勢力が内
   戦終結で基本合意
   スーダン政府と反政府勢力が和平
   合意、21年の内戦に終止符

参考 http://www.unhcr.or.jp/ref_unhcr/world/africa/index.html