【ねこまたぎ通信】

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ベイルート通信

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ガザ撤退はパレスチナ国家樹立を阻止するため(10月7日)

 シャロン首相顧問のドヴ・ワイスグラスは9日発売予定のハ・アレツ紙週間版のインタビューに応じ、発言内容の一部はハ・アレツ紙上で紹介された。注目されるのは、「ガザから一方的に撤退する目的は、和平交渉を凍結させ、パレスチナ国家樹立を阻止することにある」と明確に述べている点である。これではパレスチナ国家樹立を求める米国のロード・マップ案を真っ向から否定することになる。

 軍人宰相のシャロン首相の政治手法は、一握りの側近にしか重大事を諮問しない、ある種の密室政治だ(やはりエリート軍人だった前任者エフド・バラクも、そう批判された)。
 ワイスグラスはそのシャロンが最も信頼を寄せる懐刀的存在だ。それだけに今回の発言には大変な重みがある。ついにシャロンの本音が出たか、というところだ。
 冷静にシャロンの対パレスチナ政策や、西岸での入植活動を見ると、シャロンが和平交渉を少しでも遅延させたがっていることは明らかである。また、ガザからの撤退と引き換えに、西岸の支配を強化しようとする意図も見え見えで、既に多くの人がそれを指摘してきた。

 今回のワイスグラス発言は、これらの指摘をほぼ全面的に裏付ける内容だ。
「『和平プロセス』というのは様々な考えやコミットメントの総体だ。その中には、パレスチナ国家樹立、それがもたらすあらゆる治安上のリスク、入植地撤去、難民帰還、エルサレム分割も含まれる。それが今や全部凍結された。入植地については交渉の対象にしないこと、残りの問題についてはパレスチナ人フィンランド人になってから(注:どの国とも軍事同盟を結ばない、平和愛好国民の意味であろう)考えるというニ点を、米国との間で実質的に合意した。」
シャロンも率直に言うだろう。分離政策のおかげで、24万人の入植者(注:東エルサレムの入植者も含めていると思われる)のうち、19万人は撤去・移動せずに済む、と。」

 当然のことながら、ロード・マップのスポンサーたる米国はこの発言に当惑している。国務省報道官のアダム・エレリは6日、
「ワイスグラス発言はイスラエル政府から聞いている公式立場と矛盾しているとイスラエルに伝えた」
と発言した。しかしエレリは同時に、既にイスラエル首相府から
「ロード・マップと二国家案に対するイスラエル政府の支持には変更ない」
と釈明があったことも認めた。

米国は、例によって形だけの批判をして、後は聞かなかったふりを決めこむのだろうが 既にアラビア語紙にもワイスグラス発言の要旨は掲載されており、パレスチナ自治政府からも反発が起きている。
 さらに、イスラエルの左派からも轟々たる非難の嵐が巻き起こっている。労働党のペレス党首は
「中途半端な和平を望むものは、中途半端に戦争をもたらす」
と、本質をついた批判を展開している。