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No.1005(2004/09/05/日)
「PUBLICITY」(パブリシティー) 編集人:竹山 徹朗
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◆◇今号の目次◇◆
【めでぃあ・オフノート】
▼慣れている状態【転載】
▼神浦元彰(軍事アナリスト)の「J−RCOM」
「大惨事を起こす」のが目的だった・ロシアの情報操作
【めでぃあ・オフノート】
見かけは団結しているようだが、残酷な分断があり、いたるところに密告がある。その唯一の目的は、ほかの誰がどうなろうと自分が生き延びることだ。これが顕著になる時、その民族は自らを葬ることになる。
アンナ・ポリトコフスカヤ『チェチェン やめられない戦争』
p62▼ダメだ、前号で引用した『チェチェン やめられない戦争』を読んで、書く意欲のようなものが激しく損なわれている。
名著である。チェチェンについて、ぼくは何も知らなかった。申し訳ないが、何度も体験しているはずなのだが、こういう本を読んで、ぼくは冷静でいられない。
末尾に神浦氏の分析を2つ引用しておく。別のテーマでいくつか投稿をいただいているが、今はちょっと編集する意欲がない。
脱社会的な――どうでもいいや、どうせ世界はこのまままわっていく――といった感情に流される傾向が人並み以上にあると自覚しているのだが、そのような傾向自体は、善悪・正誤といった価値観、科学的な視点に当てはめられるものではなく、「そのようになっているもの」であり、「生きて、死ぬ」ことと同様の、自然の摂理としてとらえている。
そうした意識と感情のあり方に五体が支配されて、にっちもさっちもいかなくなったときは、普段の歩き方まで変わっていることを最近自覚するようになった。
からだ全体を使って、各部位を連動させて歩くのではなく、足を投げ出すように、心なしかぎくしゃくと歩くようになっているのだ。膝に悪いなと思いながら、歩き方を変えようとしても、心が拒否する。体は正直なもんである。
個人的な精神の落ち込みの波に、本の内容が被って、立ち上がらねば、と思いながら這い蹲(つくば)っている。這いながら、立ち上がるタイミングを図っている状態。
まあ、慣れている。こうやって書けているだけマシだ。どうも、世の中とうまくリンクできない感覚。その傾向が一時的に強まった。『チェチェン やめられない戦争』は、それだけ衝撃の大きい一冊だった。ちょっと待っててね。
世界には確かに、賛辞に値するジャーナリストがいる。それも、たくさんいる。そのことを知れるだけ、幸いなのだ。
【転載】
神浦元彰(軍事アナリスト)の「J−RCOM」
〜激動する世界の最新軍事情報を発信〜
http://www.kamiura.com/new.html■タイトル
銃撃戦、子供らに犠牲 露部隊突入 死者150人超
500人負傷 武装勢力ほぼ制圧
(読売 9月4日 朝刊)■概要
チェチェンの武装勢力と思われるグループが、北オセチア共和国の学校に人質をとって立てこもった事件で、ロシアの特殊部隊が午後1時頃、学校に突入した。そのときの爆発や銃撃戦で150人の死者と500人を越える負傷者が出たも模様。人質は350人程度と報じられていたが1200人程度とわかった。
また人質には水や食事を与えてられておらず、救出後に水を飲む光景が見られた。犯人は20名以上が殺されたり自爆したが、学校内に逃亡したものもいるとロシア軍が包囲網を固め捜索している。
■コメント
死者の数はすでに200人を越えたという報道がある。まだまだ犠牲者が増えそうな様子である。午後1時に突入したのは、犯人が夜の暗闇に紛れて逃亡するのを防ぐ意味があったようだ。射殺された20人のうち10人がアラブ人だったという報道があるが、これはロシアの治安当局が、この事件が国際テロ・グループによって引き起こされたというイメージを作るための情報操作と疑える。
犯人側はチェチェンからロシア軍の撤退や、仲間29人の解放を要求したが、その後の交渉は一切行わなかった。さらに人質に水や食糧を与えなかったことから、今回の人質事件の政治的な目的は、まさに大惨事を起こすことを考えていたようだ。このような大惨事を起こして、プーチン大統領の強硬姿勢にダメージを与える作戦だ。
劇場、病院、航空機、繁華街、地下鉄、学校、大惨事テロはどこでも起こせると証明した。プーチン大統領の支持率は80パーセントあったものが、最近は40パーセントに落ちていると情報がある。
強い指導者のイメージで支持を回復させる。そのために犯人側に妥協は出来なかった。また犯人側もロシア政府に妥協を求めておらず、大惨事だけを考えていたようだ。
この突入は計画的に行われ、死体を回収する機会に突入作戦を開始したと思われる。突入した同時刻に学校上空に軍用ヘリが飛来し、学校内から逃げ出すゲリラを見張っていたという情報がある。
偶発的に銃撃戦が始まり、ゲリラが爆薬を爆発させ、人質がパニックになって逃げ出したというシナリオはない。
とにかく航空機爆破テロのように、大惨事を起こすだけのテロは最悪の結果をもたらす。
最後に気になるのはゲリラ側が指定した交渉役の小児科医である。彼の役割は何であったのか。小児科医は人質には水が与えられ、待遇は良かったと証言している。しかし人質には水も食糧も与えられず、大勢が狭い場所に詰め込まれ、暑さのために下着になっていた。どうしてそのようなウソを語ったのか。
■タイトル
ロシア 犠牲者323人、半数子供
まだ、がれきの下に80人
事前に床下に武器 修理作業にまぎれ、隠す
(朝日 9月5日 朝刊)■概要
ロシアの北オセチア共和国で起きた学校占領事件で、死者の人数が323人に達したことがわかった。またその半数に近い150人が子供だという。
しかし遺体の損傷が激しく、身元確認作業は難航している。また内務省関係者の崩れ落ちや屋根のがれきの下に、まだ80人もの遺体が残っていると報じている。
また現場で使われた爆弾には、殺傷力を増すためにボルトや金属片が混ぜられていたという。武装勢力はそのような武器(弾薬、地雷など)を、事前に学校の修理作業にまぎれて持ち込んでいた。
■コメント
今回の学校占領事件でもう一つ注目されるのは、ロシア側の情報操作の凄まじさである。早々と犯人側にアラブ系の10人がいたなど公表したのは、爆発テロなど遺体の損傷が激しい現場では簡単にできることではない。この事件を国際テロ組織とロシアの戦いに結びつけるための情報操作であった。
また多くの人が気が付いていないが、犠牲者の数を段々と増やしていくのも情報操作のテクニックである。
最初は犠牲者が150人、それから200人超、次に250人と増えていき、今日の朝刊では323人となっている。
このように段々と人数を増やすことで、死者全体の被害の大きさより、段々と数が増えていくことに関心が強まる。
現場の状況を見ると、おそらく最終的には犠牲者が500人を越える可能性が高い。
本来なら,人質の総数(名簿)から生存者の数を引けば、簡単に犠牲者の予想数をカウントできる。
それをしないで死者の数を段々と増やす心理操作テクニックを知って欲しい。
2年前にモスクワ劇場事件の犠牲者の数128人だった。もし今回の犠牲者数を初期の段階から500人程度と公表すれば、人々が受ける衝撃は大きい。
それから日本のメディアで気になったは、ロシアの特殊部隊「アルファ」が、20分遅れて現場に入ったことで、これは事前の準備なしで銃撃戦が始まったと書いた記事があった。
それは違う、違う、大きな勘違い。テロを熟知しているアルファだから、現場突入を20分ぐらい遅らしたのである。
このような場合、重要なのは人質に紛れて犯人が現場から逃亡するのを防ぐことである。
そのためには治安部隊はまず学校周辺の包囲網を固め、空から不審な動きをする者を監視するためのヘリを飛ばす。
それから爆発が起きた体育館には、まだまだ仕掛け爆弾や地雷の脅威が残っている。そのような安全を確認しないで突入すれば、飛んで火にいる夏の虫である。そのような対テロ戦の戦術を知れば、アルファの突入が20分遅れたのは正常なのである。
とにかく嵐のような昨日は乗り切った。しかしまだまだロシアの情報操作が続いている。この事件を正確に把握できるようにするため、気が抜けない時間が続いている。
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