【ねこまたぎ通信】

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国境なき医師団 撤退

〜殺害事件、脅迫、および治安の悪化を受け、24年にわたる独立した援助活動の末の苦渋の決断〜


国境なき医師団(MSF)は、28日、アフガニスタンにおけるすべての医療援助プログラムを閉鎖することを、深い悲しみと憤りとともに発表した。この決定は、6月2日、北西部バドギス州で「国境なき医師団」と明示された車が待ち伏せ攻撃を受け、MSFの援助従事者5人の命が失われた事件に続くものである。この計画的な襲撃で、5人の同僚は無慈悲にも撃ち殺された。MSFは、これまで30年以上にわたって、もっとも紛争の激しい地域を含む世界各地で人道医療援助を提供してきたが、5人のスタッフが標的となり一度に殺害されるような事件は過去に例がない。
アフガニスタン政府高官はMSFに対し、攻撃を行ったのは地方軍閥の指導者であると、信頼できる証拠とともに伝えているが、彼らの拘束もなされていなければ、逮捕状も出されていない。この事件に対する政府の対応の欠如は、自国領土内で援助活動に従事する人々の安全確保への取り組みが不十分で、責任も果たされていないことの現れである。

さらに、殺害事件の後、タリバンのスポークスマンが犯行声明を出し、MSFのように米国の利益のために活動する団体は標的となり、さらなる攻撃の危険にさらされることになるだろうと述べた。この筋違いの非難は、MSFが基本理念として政治的動機から切り離された援助活動を掲げている点からも、全く正当性を欠いたものである。MSFの唯一の目的は、医療倫理の名のもとに、援助の必要性のみに基づいて、苦境にある人々に対し援助を提供することである。この脅迫はまぎれもなくタリバンが、独立・中立性をもった人道援助活動を拒絶していることを意味している。

MSFはこの24年以上にわたりアフガニスタンで、政権を握る政党、武装グループ如何にかかわらずこの国の歴史の困難な時期を通して保健医療を提供し続けてきた。「1980年以来ほとんど中断することなくアフガニスタンの最も援助を必要としている人々の傍らで活動してきた私たちは今、彼らを見捨てるという決断を、激しい憤りと苦しみをもって下さなければなりません。しかし、紛争当事者が人道援助従事者を標的にして殺害しようとしているときに、我々のボランティアの安全を犠牲にすることはとてもできません。最終的に苦しむのは、病人や貧しい人々なのです。」とMSFのマリーン・ビュイソニエール事務局長は話す。

米国を中心とする同盟国がその軍事的・政治的意図への支持を得る目的で、人道援助を利用しようとする流れの中、暴力の矛先は人道援助従事者に向けられるようになった。MSFは、人心をつかむために人道援助を取り込み、利用するという同盟国の試みを強く非難する。このことによって、援助活動は公平で中立の行為とはみなされなくなり、活動に従事するボランティアの命は危険にさらされ、助けを必要としている人々への援助が阻害されている。今年5月にも同盟国軍は「援助物資の配給を継続を望むならば、タリバンアルカイダに関する情報提供が必要である」という趣旨のビラをアフガニスタン南部の住民に配布し、MSFはこれを公に糾弾した。

人道援助は、武装勢力が活動従事者の安全を尊重する場合にのみ実施可能である。しかしアフガニスタンでは、2003年初頭以降30人以上の活動従事者が殺害されている。同僚が殺害され、政府はその容疑者を逮捕できず、またタリバンが誤った主張をしたことによって、MSFがアフガニスタンの人々への援助をこれ以上続けることは不可能になってしまった。

今回の殺害事件が起るまで、MSFの医療援助活動はアフガニスタンの13州で、80人の外国人派遣ボランティアと1,400人の現地スタッフにより行われていた。基礎的レベルおよび病院レベルの保健・医療を提供し、結核治療や、妊産婦死亡率を低下させるプログラムも実施していた。これらのプログラムは、今後数週間のうちにアフガニスタン保健省や他の組織に完全に引継がれる。MSFはこの地で失われた5人の同僚の命を悼むとともに、今後支援することの出来なくなる人々への深い悲しみをもって、アフガニスタンを離れる決断を下す。

●彼らが撤退するのですから,情勢の悪化は推して知るべしです.