【ねこまたぎ通信】

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議会制民主主義を真っ向から否定するポチ

多国籍軍参加 そんなに軽い問題か

'04/6/10

 この国の首相の顔はいったいどちらを向いているのだろう。

 米国での主要国首脳会議(シーアイランド・サミット)に先立つ日米首脳会談で、小泉純一郎首相は、新たな国連決議に基づき主権移譲後のイラクで編成される多国籍軍に、自衛隊を参加させることをブッシュ米大統領に事実上表明した。憲法上の問題からこれまで避けてきた自衛隊多国籍軍への参加という重大な問題を、国民に説明することなく、十分な国会論議も経ず、真っ先にブッシュ大統領に報告する姿勢には首をかしげざるを得ない。
 従来の憲法解釈は、多国籍軍の指揮下に入ると憲法の禁じる自衛隊の海外での武力行使の可能性を排除できない、とするものだった。ところが今月一日、秋山収内閣法制局長官が「武力行使を伴う任務と伴わない任務の両方が与えられる多国籍軍に参加することは、憲法上問題ない」との新見解を示し、日米首脳会談での首相の表明への地ならしが始まっていたと思われる。

 国連の新たな決議は、イラクへの主権移譲のプロセスと多国籍軍の編成を明記、その駐留を二〇〇五年末のイラク新政権発足までと期限を設けたうえ、それ以前でもイラク政権が要求すれば終了すると定めるなど、米英両国の原案にフランスなどの要求をかなり取り入れた。安保理では全会一致で採択された。ただ、国連主導は名ばかりで「米国が主導権を握る現実は変わらない」との見方は根強い。治安回復についてもイラク人虐待や誤爆など、米軍の不手際もあって依然不透明である。

 日本政府は、新決議に多国籍軍の任務として「治安維持と安定」とともに「人道・復興支援」が明記されていることで、この支援活動に限定して参加すれば憲法上の問題は生じない、と判断している。現在の自衛隊派遣を可能にしたイラク復興支援特別措置法は、各国に復興への参加を要請した安保理決議一四八三を根拠にしている。政府は新決議を政令で追加して多国籍軍参加の根拠とする考えで、国会承認を得ることなく月内の閣議で正式決定する意向だ。

 現在のサマワでの自衛隊の活動を主権移譲と同時にやめることが困難なのは確かである。しかし、真っ先に米大統領に「自衛隊派遣を継続する」と表明することで、多国籍軍への参加を鮮明にする必要があったのか。しかも、新決議の採択を「(米国の)大義の中での勝利だ」とまで持ち上げることはなかろう。平和憲法の下での独自の道を探る日本のイメージを、もっと押し出すべきではなかったか。

 自衛隊の海外での活動は、国連平和維持活動(PKO)から、イラク特措法による「戦時」派遣へと、段階的に広がっている。今回の多国籍軍参加で制約の枠が「なし崩し」的に壊れる危険性は否定できない。

 多国籍軍に参加しながら、日本独自の指揮権が保てるとは思えない。もし「非戦闘地域」でなくなったとき、自衛隊だけ撤退できるのか、懸念も残る。政府は新決議の内容を精査して米国などと調整する意向のようだが、そうした手続きさえ抜きで、首相が参加表明するのは順序が違うのではないか。

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