【ねこまたぎ通信】

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強権体制強めるムガベ政権−ジンバブエ

言論封鎖と反白人主義、増加する近隣国への脱出者

 南部アフリカのジンバブエで二十年間、政権の座に居座るロバート・ムガベ大統領による強権体制維持の動きが強まっている。白人所有農地の強制収用に続き、政権に批判的なメディアを発禁処分にするなど、反白人主義を前面に出し、言論封鎖など国内の批判勢力を徹底的に弾圧。横行する人権侵害や貧困など国内情勢の悪化から国外脱出を図る者も多く、近隣諸国ではジンバブエ密入国者の増加が悩みの種となっている。
ヨハネスブルク・長野康彦)

経済困窮の中、大統領は豪邸建設
 国際通貨基金IMF)が今年三月に発表したところによると、ジンバブエ物価上昇率は600%に達し、失業率も70%と、国内の経済状況は深刻さを増している。人口の半数に当たる六百万人が食糧危機に直面しており、外貨不足で石油・電気などのエネルギー資源も恒常的に不足している状態。IMFムガベ政権による人権抑圧・非民主的統治が改善されないことを理由に、すでに九八年から資金援助を停止している。IMFへの負債総額は二億七千万ドル以上に上る。
 国民が困窮する中、ムガベ大統領が寝室二十五部屋もある豪邸を建設中であることが最近、内外のメディアで取り上げられた。建設費は米ドルにして二千五百万ドル(約二十七億五千万円)と言われ、同大統領は邸宅付近を立ち入り禁止区域に指定して、付近をうろついたり邸宅の写真を撮影する者は無条件に射殺すると公言している。

 政府による言論封鎖も度が増してきた。ムガベ大統領は内外から不正が指摘された〇二年三月の大統領選後、反政府の声を封じるため報道規制法を導入。政府に批判的なジャーナリストを次々に逮捕し、これまで数十人のジャーナリストが起訴されている。ジンバブエで唯一の民営日刊紙「デイリー・ニュース」や、週刊紙「トリビューン」など、政権に批判的論調を展開する民営系メディアを次々に発禁処分にするなど言論弾圧を強行。同法のもと、外国人ジャーナリストの常駐はできなくなった。短期滞在は可能だが報道ビザが必要で、ビザ取得にも情報省の厳しいチェックが入るため、政府に批判的な外国の報道機関は入国が相当に難しくなっている。

 体制維持に躍起となるムガベ政権下で、政府による反政府国民への監視も強化され、秘密警察による人権弾圧も日常化。悪化する経済状況と相まって、近隣国へ脱出を図る国民も増えている。主な行き先は国境を接し、経済的にも比較的豊かな南アフリカボツワナ。しかし両国内でも不法滞在者がそう簡単に仕事にありつけるわけでもなく、生活苦から犯罪に走る者も多い。南アフリカの場合、外国人犯罪を国籍別に見るとジンバブエ人が一番多く、続いてナイジェリア人、次がモザンビーク人という順番だ。犯罪内容としては銀行強盗や詐欺、麻薬関連など幅広い。不法滞在者が犯罪の温床となり、治安悪化の主要因となることから、近隣諸国では対応に手を焼いている。

 ジンバブエでは白人農地の強制収用がもとで、主要産業のタバコなど農業生産が不振に陥り、経済は一段と悪化しているが、加えて昨年暮れ、英連邦脱退を表明し西側諸国との関係を断ち切ったため、経済援助も得られない状態だ。農地を取り上げられた白人農場主らは、ジンバブエ白人の受け入れを歓迎している近隣のザンビアモザンビークなどに移住している。農業技術者を受け入れることで、国内の経済活性化につながるからだ。

 ジンバブエ政府は今月、私立学校四十五校を「政府の許可無しに学費を値上げした」との理由で、強制的に閉鎖した。対象となったのはいずれも前白人政権時代の白人系学校。政府によるこうした「白人いじめ」が過激さを増していることから、白人系国民の国外移住も急増しており、そうした動きもジンバブエ経済悪化に拍車を掛けている。